近年、求職者の多様化と市場の変化に伴い、企業の採用活動にも変革が求められています。
一昔前までは企業が求職者を選ぶ「買い手市場」の時代でしたが、現在では求職者が求人数に対して少なく、日に日に「売り手市場」になっています。そのため、企業が自社に合った人材を効果的に獲得するためには、“採用ターゲット”をきちんと決めることが必須です。
本記事では、そんな採用ターゲットの決め方や、最新の人材獲得手法について多角的に解説していきます。新たな人材獲得の基盤となる採用ターゲットの設定と、最新の採用市場において有効な人材獲得手法を理解し、自社の採用活動に活かしていただければ幸いです。
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採用ターゲット設定の重要性
求職者のニーズを把握できるようになる
採用ターゲットを設定するメリットとして一番大きいのが、求職者のニーズの把握を把握しやすくなることです。
具体的には、求職者が探している職種、業種、働き方、キャリアアップの機会、給与水準、転職の動機などを理解することができるため、ターゲットの視点に立ってより効率の良い採用手法や反応率の高い訴求を考えることができるのです。
例えば、採用ターゲットが「働き方の自由度」を重視していることが分かった場合、そのニーズに合った職場環境や制度をアピールすることで、求職者の関心を引くことが可能となります。これにより、求職者と企業のミスマッチを減らし、効率的な採用活動ができるようになります。
選考基準のバラつきを低減
次に、採用ターゲットを設定することで選考基準のバラつきを低減することができます。
具体的には、全ての選考担当者が共通の理解と目標を持つことにより、個々の基準による不均一な選考を避けることができます。
例えば、以下のような表を作成し、選考担当者全員が参照することで、共通した選考基準を設けることが可能です。
選考ポイント | 評価基準 |
---|---|
コミュニケーション能力 | 他者との意見交換がスムーズに行えるか |
専門知識 | 必要な知識・スキルを持っているか |
チームワーク | チームで協働して仕事を進められるか |
このように明確な選考基準を共有することで、どの候補者が採用ターゲットに最も近いか客観的に評価することが可能となり、結果的に選考基準のバラつきが低減します。
採用ミスマッチを軽減
採用ターゲットを適切に設定することで、採用ミスマッチを軽減することが期待できます。採用ミスマッチとは、求職者と企業の間で期待値や理解が合致せず、結果として離職などの問題を引き起こす状況を指します。
例えば、企業側が求める人材像と、実際に入社した新卒者のスキルや志向が合致しない場合、お互いの満足度が低下し、早期退職に繋がることがあります。
それを防ぐためにも、採用ターゲットを明確に設定し、その基準に従って選考を行い、最終的にはオンボーディングまで考慮することが重要です。
例えば、次の表のように採用ターゲットを明記し、それぞれの項目に対する評価基準を設けるといいでしょう。
採用ターゲット | 評価基準 |
---|---|
技術力 | 認定試験の有無、実務経験年数 |
コミュニケーション能力 | チームでのプロジェクト経験、プレゼンテーションスキル |
マネジメント能力 | 人員管理の経験、リーダーシップの実証 |
効果的な採用ターゲットの設定方法
求めるスキルを洗い出し、採用要件を決める
採用要件の策定は、採用ターゲットを設定する上で最初の一歩となります。まずは、組織がどのような人材を必要としているのかを明確にすることが求められます。
ここで考慮すべき要素は、技術スキルや業務経験はもちろん、社風に合う性格や価値観、成長意欲なども含まれます。
例えば、以下のように表にまとめると見やすいです。
人材要件 | 例 |
---|---|
技術スキル | プログラミング能力、語学力など |
業務経験 | 営業経験、マネジメント経験など |
性格・価値観 | コミュニケーション能力、柔軟性、チームワークなど |
成長意欲 | 業界への興味・関心、自己啓発の意欲など |
このように具体的な「人」のイメージを設計することで、求人票の作成や面接時の評価基準に活かすことができます。
採用ペルソナを設計する
採用ペルソナとは、企業が採用したいと考える“理想的な人物像”を具体的に設計したものです。このペルソナ設計をもとに、求職者へのメッセージングや採用活動が的確になります。以下に、採用ペルソナ設計の手順を示します。
- 基本情報の設定:まずは、年齢、性別、経歴、志向性など、採用したい人物の基本的な属性を設定します。
- 必要スキルの洗い出し:次に、その人物に求める技術的なスキルや課題解決能力、コミュニケーション能力などを明確にします。
- 価値観・性格の設定:最後に、企業文化に合致した価値観や性格を設定します。これは、新人が既存のチームにスムーズに溶け込めるようにするためです。
ペルソナ情報 | |
---|---|
基本情報 | 〇〇歳、男性、IT業界経験者、リーダーシップ志向 |
必要スキル | プログラミングスキル(Java、Python)、プロジェクトマネージメント |
価値観 | チームワーク重視、挑戦意欲、自己成長志向 |
以上のように、具体的な採用ペルソナを設計することで、企業の採用活動はより戦略的に進められます。
経営計画・事業計画を活用する
経営計画や事業計画を採用ターゲットの設定に活用することは非常に重要です。
これらの計画は、企業が今後どのような方向性を持ち、何を目指し、どのような人材を求めているのかを示しています。そのため、これらの事業戦略を理解し、それに基づく人材像を描くことが求められます。
例えば、新しい市場に進出する計画がある場合、その市場を理解し、ビジネスを展開できる人材が必要です。また、新製品の開発を予定しているなら、その製品作りに深く関われるスキルを持つ人材が求められます。経営計画・事業計画は、採用ターゲット設定の基盤となります。
優秀な社員を分析する
優秀な社員の分析は、採用のターゲット設定において非常に重要です。これは、優秀な社員が持っているスキルや性格、価値観などを探り、新しく採用する人材にも求める特性を明確にするためのものです。
具体的には、以下にリサーチの一例を示します。
調査項目 | 具体的な内容 |
---|---|
スキル | 具体的な業務スキル、ITスキル |
性格 | コミュニケーション能力、リーダーシップ、論理的思考力 |
価値観 | 組織のビジョン・ミッションに対する理解、業務への熱意 |
このリサーチにより、求める人材像が明確化され、より適切な採用ターゲット設定が可能となります。それが採用活動の効率化やミスマッチの防止につながります。
コンピテンシーモデルを作成する
採用ターゲット設定には、求める人材の具体的な能力や特性を明確にする「コンピテンシーモデル」の作成が有効です。コンピテンシーモデルとは、業績を上げるために必要なスキルや知識、態度等を組織独自に定義したものです。
まず、必要なコンピテンシー(能力や特性)をリストアップします。例えば、「リーダーシップ」「コミュニケーション力」「問題解決能力」などが該当します。
次に、それぞれのコンピテンシーがどの程度必要かを等級化し「1.初級」「2.中級」「3.上級」のような形で設定すると分かりやすいです。
コンピテンシー | 等級 |
---|---|
リーダーシップ | 3.上級 |
コミュニケーション力 | 2.中級 |
問題解決能力 | 1.初級 |
STP法を用いる
STP法とは、「Segmentation(セグメンテーション)」、「Targeting(ターゲティング)」、「Positioning(ポジショニング)」の頭文字を取ったマーケティング手法です。
まず、Segmentationでは、求職者市場を細分化し、異なるニーズや要求を持つ複数のセグメントに分けます。具体的には、業界経験、スキルセット、求める条件(勤務地、給与、福利厚生など)等を基準にします。
次に、Targetingでは、分けられたセグメントの中から、企業が必要とする人材像に最も合致するセグメントをターゲットと定めます。
最後に、Positioningでは、ターゲットとなるセグメントに対して、企業がどのような価値を提供できるか、その魅力を最大限に伝えるための戦略を立てます。
これらを採用活動に取り入れることで、必要な人材をより効率的に採用することが可能となります。
採用ターゲットに向けた最新の人材獲得手法
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、採用ターゲットとなる求職者に直接アプローチを行う採用手法です。従来の求人広告に頼らず、企業自身が積極的に求職者を見つけ出し、連絡を取ることで、より質の高い人材を獲得することができます。
特に、専門性やスキルが求められる職種の場合、自ら求職活動を行わない「パッシブ求職者」も多いため、ダイレクトリクルーティングは有効な方法と言えます。
具体的な手段としては、LinkedInや自社のネットワークを活用した人材リサーチ、各種イベントやセミナーでの人材発掘などがあります。これらのアクティビティは、採用ターゲットに対する理解を深め、より効果的な採用活動を行うための重要な一環となります。
自社採用サイト
自社の採用サイトは、採用ターゲットに直接的に訴求できる効果的な手法の一つです。これは、希望する候補者へ企業の魅力や求める人材像を直接伝えられるツールだからです。
まず、サイト内には企業のビジョンやミッション、働き方、職種別の仕事内容などを具体的に掲載し、ターゲットとなる人材が自己判断をしやすくします。また、社員インタビューや働く環境の写真などを用いて、具体的な職場の雰囲気を表現することも重要です。
次に、応募者に対するメリットを明確に示すことも重要です。福利厚生やキャリアパス、評価制度などを詳細に記載します。これにより、採用ターゲットが自社で働くメリットを具体的に理解し、応募につなげることができます。
また、適切なSEO対策を施すことで、求人情報を探すターゲット層に対して自社サイトを上位表示させることが可能になります。これにより、より多くの適合候補者にアクセスしてもらい、効果的な人材獲得を行うことができます。
広告
広告は、採用ターゲットに向けた幅広いアプローチにおいて非常に有効な手段です。特に、ターゲットとする求職者が頻繁に利用するウェブサイトやSNSに広告を出稿することで、効果的にリーチすることが可能となります。
具体的には、GoogleやFacebookなどの広告プラットフォームを活用すると良いでしょう。これらのプラットフォームでは、ユーザーの属性情報や検索履歴等を基にしたターゲティング広告を設定できます。
例えば、Google AdWordsでは「就職・転職」カテゴリーを選択することで、求職活動中のユーザーをピンポイントで狙うことが可能です。
また、企業のブランディングも重要な要素となります。求職者が広告を見たときに「この企業を知っている」「信頼できると感じる」という印象を持つことで、応募確率を高めることができます。
これらの活用により、採用ターゲットへ効果的にアプローチし、採用成功率を高めることが期待できます。
SNS
最近では、SNSを活用した採用活動に注力する会社が増えています。特に若年層の求職者からの視認性が高く、採用ターゲットに直接アプローチする手段として有効です。
具体的には、FacebookやLinkedIn、Twitter等のプラットフォームで企業の情報を発信することで、求職者に対して企業の魅力や働く環境を伝えることができます。
また、Instagramでは、実際に働いている社員の日常や職場の風景を投稿することで、リアルな企業像を描き出すことも可能です。
さらに、SNSは一方向的な情報発信だけでなく、コミュニケーションツールとしても活用できます。求職者からのコメントやメッセージに対して企業が直接回答することで、対話を通じた関係性構築が可能となります。
ただし、SNSを採用活動に活用する際は、投稿内容が企業のブランドイメージを左右するため、適切な情報管理と定期的な更新が重要です。
まとめ
採用ターゲットを設計することは、求職者のニーズ把握と適切なアプローチ、選考基準の一貫性の確保、ミスマッチ低減に繋がります。
具体的な設定方法として、人材要件定義や採用ペルソナの設計、経営・事業計画の参照、優秀な社員のリサーチ、コンピテンシーモデル作成、STP法利用が挙げられます。
また、具体的な手法として、活躍社員の参考や適性検査の活用が有効です。また、ダイレクトリクルーティングや自社採用サイト、広告、SNS活用など、新たな人材獲得手法を用いることで、採用ターゲットに対するアプローチ力が増します。
以上が会社にとって最適な採用ターゲット設定のための手法となります。効果的な採用は、戦略的な人材獲得と組織の成長に直結します。