労働人口の減少や、採用手法が多岐に渡って適切な方法が選択しづらいことから、人材採用はますます困難になっています。特に、募集者を集める段階である「母集団形成」において、課題を抱える企業は多いのではないでしょうか。この課題は、採用プロセスの基本段階なので極めて重要である一方「具体的にどのように対策をするべきか」というのはなかなか不明瞭です。この記事では、採用における「母集団形成」の特徴やメリット、手法別の特徴や新卒採用と中途採用での違いについて網羅的にご紹介します。母集団形成とは?「母集団形成」とは、企業が求める人材像に合う候補者のグループ(集団)を作り上げるプロセスを指します。この用語は、もともと統計学の概念で、全体の対象集団を表す言葉です。採用活動の中では「応募者プール」とも言われることもあります。しかし、ただ単に候補者数を増やすだけでなく、企業に興味を持っており、かつ求める人物像とマッチする候補者を集めることが重要です。つまり、「母集団形成」は量と質の両面で考えるべき項目なのです。母集団形成はなぜ重要なのか母集団形成の重要性は、大きく2つに分けることができます。1つ目は、少子高齢化に伴う労働人口の減少です。この状況により、企業間で候補者を取り合う採用競争が激しくなり、求職者の確保がますます難しくなっています。この状況を打破するために、より母集団形成が必要とされています。2つ目は、企業間で採用ターゲットが重複していることです。これには、大手企業が新卒採用だけでなく中途採用も増やしているという背景があります。優秀な候補者は、より知名度や待遇の良い大手企業に引かれる傾向があるため、中小企業やベンチャー企業が採用市場において人材獲得に苦労しているのです。上記2点から、企業が人材を確保することが難しくなっているため、企業は常に自社に興味のある人材を集め(=母集団形成)、採用活動を行う必要があるのです。母集団形成のメリット次に、母集団形成のメリットをご紹介します。■計画的に採用活動ができる母集団形成を意識することで、計画的に採用活動を行うことができます。実際、最終的に目標とする採用人数をもとに、過去の選考通過率などを利用しながら必要な母集団の人数を見積もります。すると、母集団形成の時点で目標値に達していない場合に目目標を見直すか、採用戦略/戦術を見直すなどのアクションをとることができます。このように、早い段階で課題に対応できるため、計画的に採用活動が行えるのです。■採用コスト最小限に抑えられる母集団形成には、採用予算を抑えられるというメリットもあります。例えば、ターゲットを確定せずに内定を発行してしまうと、想像を超える社員が入社し、採用コスト/人件費が当初の予算を超えてしまう可能性があります。逆に、母集団形成の時点で目標人数より少なく、採用人数に達しない場合、追加の採用プロセス(二次募集、三次募集など)が必要となり、採用コストを増加させてしまう場合があります。母集団形成を行うことで、目標の採用人数に基づいて適切な採用手法を検討しやすくなり、それに合った最も効率の良い採用戦略を立てることができるのです。■入社後のミスマッチと離職率を下げることができる母集団形成を実施することで、採用後のミスマッチを防ぎ、社員の定着率を向上させることも期待できます。理由は、自社が求める人材像にマッチする母集団を事前に形成し、その中から採用を行うことで、入社後のギャップがある程度是正されるからです。ミスマッチを防ぐことができると、必然的に社員の定着率も向上します。一方で、母集団形成を行わずに採用活動を進めると、企業の文化や価値観に合わない人材を採用してしまう可能性があります。すると、早期離職の多発や、育成にかかるコストの増加などの問題が発生する恐れがあります。■自社の生産性向上や事業の成長につながる自社にマッチしている人材は、将来的に自社で活躍(=成功)する可能性の高い人材です。そのため、意識的に母集団形成を行うことは、業務の生産性向上につながり、結果的に企業の成長を促進するでしょう。現在、人的資本の価値はますます高まっているため、母集団形成に注力し、採用ターゲットのスキルを積極的に発展させていくことは非常に重要です。母集団形成の手法7選それでは、実際にどのような母集団形成の方法があるのか、特徴などを合わせてご紹介します。1.求人媒体(求人広告)採用媒体の主な特徴は以下の通りです。ターゲット層の幅が広い。(媒体によって異なる)費用はおおよそ10~100万円程度で、自社の予算に合わせて選ぶことができる複数のプランから選択可能。これは、求人媒体やハローワークなどの情報誌などを利用する方法で、幅広いターゲット層にリーチすることができるのが特徴です。費用には成果課金制と前払い制、従量課金制の3つの方法があり、プランや媒体、掲載期間によって相場が異なります。一度の掲載で多くの応募を獲得できることがメリットですが、前払い制の場合、応募がない場合でも費用が発生してしまうというデメリットもあります。求人媒体には古典的な新聞やフリーペーパー、求人サイトなどが存在し、エリアや業種に特化したもの、年齢別にターゲットを絞るものなど、同じ媒体でも異なる特徴を持つツールがあるので、自社の採用ターゲットに合わせてうまく選定する必要があります。2.人材紹介サービス(エージェント)人材紹介サービスの主な特徴は以下の通りです。ターゲットの要件を詳細に設定することができる。成果報酬のケースが多く、リスクが少ない。非公開の求人でも採用できる。人材紹介サービスは、ピンポイントで欲しい人材を人材紹介会社が見つけるサービスです。主な特徴は、ターゲットの要件を詳細に設定できることと、人材紹介会社が人材の質を担保してくれることです。人材紹介会社のノウハウと信頼性により、通常の求人では見つけにくい人材に出会えることもあり、特に専門職やハイクラス人材の採用に役立ちます。また、非公開の求人で応募を集めることも可能です。一方で、仲介手数料として一般的に理論年収の30%〜40%を支払う必要があり、採用費用単価が他の方法よりも高いのがデメリットです。そのため、広く浅い母集団形成ではなく、特に狭く深い母集団形成に有効です。3.採用広報用のHP作成採用(広報)ホームページの主な特徴は以下の通りです。人材の定着に寄与しやすい。長期的に利用可能。成果が出るまでに時間がかかる。採用ホームページは、採用ターゲットに焦点を当てたウェブサイトで、候補者からの興味度を高め、応募を獲得する手法です。写真や映像などを駆使することにより、自社の魅力を最大限に伝えることができるという利点があります。社員インタビューなどで採用後の働き方やキャリア形成についてもアピールできるため、興味を引くことができれば、大きな母集団を形成することができます。また、他の方法とは異なり、ウェブサイトを慎重に構築すれば、長期間にわたって活用することが可能です。しかし、デメリットとして、応募などの目にみえる成果をが出るまでには時間がかかることがあります。十分な知名度がない場合、ホームページを制作してもそこに流入する数が少なく、応募が急激に増えることは難しいため、求人検索エンジンと連動させたり広告を回すなどの工夫が必要です。4.社外イベント採用関連イベントの主な特徴は以下の通りです。幅広い対象層にアプローチすることが可能。主に新卒採用において有効。成果にかかわらず様々なコストが発生する。採用説明会などのイベントでは、広範な人材に企業の魅力を伝える機会が提供されます。これは自社で開催できますが、公的機関や学校でのイベントに参加することで、同じ年齢層のターゲットに一括してアプローチできるというメリットがあり、主に新卒採用に活用されます。また、エンジニアにおいては「勉強会」を開催することで、定期的な接触回数を増やすことができるため、積極的な開催をおすすめします。5.スカウト採用(ダイレクトリクルーティング)スカウト採用(ダイレクトリクルーティング)の主な特徴は以下の通りです。ターゲットの要件を詳細に設定可能。求職者に直接接触できる。1人の採用者に対する労力が比較的多い。スカウト採用は、企業が直接求職者にアプローチできる採用方法です。通常の採用手法とは異なり、人材紹介会社や求人を介さずに、求職者が登録したデータベースを通じて直接スカウトを行います。企業は自発的にアクションを起こすことができ、的確な人材に自社の魅力を伝えるメリットがあります。ただし、採用にはデータベースの検索、スカウトメッセージの作成、応募対応など、多くのリソースが必要です。そのため、大量の採用を行う際には向いておらず、少数かつピンポイントでアプローチしたい場合に効果的です。6.リファラル採用リファラル採用の主な特徴は次の通りです。採用コストが低い自社にマッチする候補者を獲得しやすい大量採用には向いていないリファラル採用は、自社の社員が新たな候補者を推薦する手法です。この方法は、通常の採用方法に比べてコストがかからないという大きなメリットがあります。一部の企業では従業員に報酬を支払う場合もありますが、それでも他の採用方法に比べると非常に安価です。また、自社の事情をよく理解した従業員がスカウトを行うため、適切な候補者を採用しやすいことが特長です。ただし、大量の候補者を採用したい場合には向いていません。 そのため、他の採用方法と組み合わせて「運がよければ採用できる」という温度感で使用しましょう。7.SNSの運用SNSを活用した採用の主な特徴は以下の通りです。幅広いターゲット層にリーチできる広告出稿には費用がかかる運用には時間、スキル、リテラシーが必要SNS運用による採用活動は、コストを削減できるというメリットがあります。有料のSNS広告にはコストがかかることもありますが、ターゲットの特性に合わせて配信できるため、高い費用対効果が期待できます。また、自社のアカウントを介して柔軟に情報を発信できるため、求職者とフランクなコミュニケーションができ、ファン化にもつながりやすいです。また、最近ではSNSプラットフォームだけでなく、動画共有サイトに公式チャンネルを設ける企業も増えており、さまざまな発信方法があります。しかし、応募者を確保するには多くのフォロワーや登録者を獲得する必要があり、結果を出すためには時間と知識が必要です。また、SNSは企業の評判に直接的に影響を与える可能性があるため、1つ1つの発言に注意が必要です。新卒/中途採用における母集団形成のコツ次に、新卒採用と中途採用それぞれにおける母集団形成でのポイントをご紹介します。■新卒採用●学事日程に合わせて計画を策定する経団連が「就活ルール」を廃止した結果、新卒採用の競争状況は非常に変動的となりました。しかし、新卒採用はあくまでも学生をターゲットにしているため、基本的には学事日程を考慮してスケジュールを設定する必要があります。内定発表から逆算して、面接や応募の時期を計画的に設定しましょう。●幅広い学生と交流を深める新卒採用では、応募者の業務経験やスキルよりも、個人の魅力や意欲を評価する傾向が強いです。したがって、まずは多くの学生と接点を持つことが重要です。自社に適した候補者を見極めるために、幅広い学生と交流を深め、潜在的に自社にマッチする人材を見つけ出すことが求められます。■中途採用●求人要件に適したターゲット像を明確にする中途採用のプロセスでは、特定の職種やポジションに関連する具体的な要件を明確にし、候補者の経験、スキル、知識などを総合的に評価することが重要です。ただし、これだけに固執せず、より良い採用を実現するためには、自社が求める理想的な人物像を定義し、採用候補者がそれに合致するかどうかを評価することが必要です。中途採用の際には、求める人材像を明確にし、マッチする候補者を探す際の基準として活用しましょう。■共通●具体的なターゲットを設定する「求める人物像とのミスマッチを避けるために、事前に人事や関連部門と協力し、募集ポジションの具体的な採用ターゲットを設定しましょう。これによって、不適切な応募を減らすことができ、有効な母集団を形成できるだけでなく、社内でターゲット像を共有することで、より満足度の高い採用活動を実現できます。●ターゲットにとって魅力的な内容を発信するターゲットを具体化したら、その層を引きつけるための効果的な訴求を発信することに注力しましょう。採用担当者だけでなく、社内のスタッフからのフィードバックを収集し、自社の強みに関する共通の理解を得ることも重要です。●複数の手法を組み合わせて母集団を形成する母集団形成にはいくつかのアプローチ方法があり、それぞれに長所と短所が存在します。そのため、お互いに補完し合える方法を複数組み合わせることが重要です。採用ポジション、コスト、スケジュールなどに合わせて最適な組み合わせを考慮しましょう。●採用データの収集と分析採用においてデータ収集、整理、分析は非常に重要です。例えば、異なる手法ごとの成果を評価することも重要です。各応募チャネルごとの応募者数、各段階の進行状況、辞退者数、内定者数、コストなど、収集できるデータは多岐にわたります。これらの情報を収集し、数値を分析することで採用活動の効率を向上させることができます。●幅広い情報収集働き方や価値観の多様化に伴い、働き方のトレンドは常に変化しています。そのため、自社の領域の人材動向や、競合他社の状況など、広範な情報を収集する必要があります。外部の人材サービス企業などとも積極的に情報共有を行い、効率良く情報を集めましょう。まとめ今回は、母集団形成の重要性に焦点を当て、戦略的かつ計画的な採用活動について説明しました。有効な母集団を形成することができれば、優れた人材や自社のニーズに合致する人材を格段に獲得しやすくなります。特に中途採用の場合、今までのように経験やスキルに重点を置いて採用を進めることは、ますます大手企業や知名度の高い企業へ人材が流れてしまう原因になります。自社に適した母集団とは何か、どのような人材を求めているのか、どのような手法を使えば効率よく安定的に母集団を形成できるのかを明確にし採用活動に取り組みましょう。母集団形成なら「即戦力RPO」弊社が運営している「即戦力RPO」は採用支援サービスですが、媒体のアルゴリズムハックを行ってどんな企業でも募集記事を上位表示させることができるなど、あらゆるノウハウを保有しています。中途採用をしたいけど、知名度がなくて応募が集まらない母集団形成の方法がイマイチ良くわからない採用を強化させたいけどリソースが足りないなどのお悩みをお持ちのご担当者様は、是非ご相談ください。