現在、多くの企業では人手不足が悪化しており、採用活動の重要性が高まっています。しかし、最近の採用市場では優秀な人材の獲得がどんどん難しくなっており、採用担当者の負担は増加する一方です。
この状況で注目されているのが、「採用代行(RPO)」や「人材紹介」といったサービスです。
しかし、採用担当や経営者の中には「採用代行と人材紹介の違いがわからない」「自社の採用活動において、採用代行と人材紹介のどちらを利用すべきか迷っている」といった方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、採用代行と人材紹介のそれぞれのサービスの内容や2つの違い、メリット・デメリット、そして選び方について解説します。
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採用代行サービスと人材紹介(エージェント)の違い
採用代行とは、企業が抱える採用業務の一部または全部を外部に委託するサービスで、RPO(Recruitment Process Outsourcing)や採用アウトソーシングとも呼ばれることがあります。
採用代行のサービス内容や契約条件は幅広く、通常は自社と採用代行業社で内容、目的、目標、ゴール、費用などを十分に確認した上でプランを決定し、支援が行われます。
一方で、人材紹介(エージェント)は「人材の採用」のみを目的としたサービスで、具体的には候補者の選定、推薦、応募者と企業の間での対応など求職者と企業のマッチングに重きを置いて、「採用決定」までをサポートしてもらえます。
また、報酬形態は成果報酬型が多く、内定承諾が取れた時点で想定年収の15〜35%の費用が発生するのが一般的な相場です。
採用代行と人材紹介のサービス内容の違い
以下では、採用代行サービスと人材紹介サービスそれぞれにおける「サービス内容(委託できる内容)」の違いについて具体的にご紹介していきます。
採用代行のサービス内容
採用代行サービスには、スカウト代行に特化した業者や応募者管理に特化した業者など、対応できる業務の範囲を限定している企業も多く存在します。一般的には、採用代行のサービスでは、依頼企業のニーズや予算にもとづいて、どの業務を代行するかを調整するため、提供されるサービス内容は多岐にわたります。
たとえば、自社の採用担当者のリソースが不足している場合は、採用業務の全体を代行してもらうこともできます。一方で、母集団形成や求人広告やスカウト代行、採用説明会の企画など、一部の業務だけを代行委託することも可能です。
人材紹介(エージェント)のサービス内容
先述した通り、人材紹介サービスは、主に採用業務における「母集団形成から入社まで」のフェーズを支援します。
人材紹介では、候補者の選定、応募意向の確認、企業への紹介(推薦)、合否の連絡、入社までのサポートなど、応募者の対応業務を委託することができます。ただし、自社の紹介者以外からの応募者(企業へ直接応募した候補者や他の人材紹介会社を通じて応募した候補者など)に関する業務は行ってもらません。
あくまでも、エージェント側が抱えている求職者にベクトルが向いているサービスであることを前提として認識しておきましょう。
通常の人材紹介サービスでは、何回やりとりや打ち合わせを行っても、その業務自体には費用がかからず、紹介した応募者が実際に入社した場合のみ、成功報酬型で費用が発生します。ただし、一部のサービスでは前払いで初期費用が設定されていることもあります。
採用代行と人材紹介の企業におけるメリットの違い
採用代行サービスのメリット
■最新のノウハウを利用して採用できる
採用市場は近年大きく変動しており、同じ手法を年々繰り返すだけでは、採用数が低下してしまう可能性があります。
そこで、採用代行サービスを活用することにより、最新の採用市場動向に合った採用手法やノウハウを取り入れることができ、採用力の向上が期待できます。
採用を成功させるためには、求めるポジションや対象に適した手法を選択することが必要です。初めての採用や長期間にわたる採用で苦戦している際は、採用代行会社が持つ豊富な採用ノウハウを利用しながら進めることがおすすめです。
■オペレーション工数を削減できる
採用業務は応募者の管理や応募者フォローなど、多くの細かい対応が必要です。
そのため、採用担当者は日々の選考管理や社内調整、合否連絡などのノンコア業務に追われがちで、採用企画や計画の策定、進捗の分析など、本質的なコア業務に時間を割くことができなくなってしまいます。
そこで採用代行サービスを活用し、煩雑なオペレーション業務の採用工程を削減し、採用の企画や課題の改善など、より本質的な業務に集中できる環境が整います
■業務を洗い出すことで効率化する
採用代行を採用する際、「どの業務をアウトソースするか」を決定するために、自社内で採用業務全体のフローを確認することが必要です。これにより、各工程の課題が明確になり、課題解決に向けたPDCAサイクルを効果的に回すことができ、採用プロセスの効率化が期待できます。
人材紹介のメリット
■応募者一人ひとりをフォローができる
人材紹介サービスは、企業担当者と応募者それぞれの代理人のような役割を果たし、人材紹介会社の担当者が企業と候補者の仲介役として動きます。これにより、企業の魅力のアピールや入社に対する懸念点の解消など、面接など企業との直接的なやり取り以外での応募者フォローが行われます。
■スクリーニングや母集団形成がほぼ不要
人材紹介では、人材紹介会社が自社の希望条件に合致する応募者を見つけ出し、応募に導いてくれるため、応募要件から大きく外れた候補者をスクリーニングする手間や、要件に沿った母集団形成のための媒体選びなどの手続きが削減できます。
また、応募者対応はすべて人材紹介会社が担当するため、応募者との日程調整などの連絡作業も人材紹介会社に委ねることができます。
■初期費用のリスクが低い
人材紹介は経済的な観点から見てもリスクが低いのが特長です。
一般的に初期費用は不要で、入社が確定した場合にのみ成果報酬で費用が発生するため、採用予算の管理がしやすく、他の施策に集中する余裕が生まれるなど、多くのメリットがあります。
■非公開求人を掲載できる
機密性の高いプロジェクトのメンバーや、経営陣の優れた人材を採用する際、人材紹介を活用すると、非公開求人として募集できる利点があります。
さらに、急な退職による欠員対応で通常の採用手続きに十分な時間がない場合でも、人材紹介を利用して優れた候補者を素早く見つけることができるかもしれません。
このように、競合他社に情報を知られたくない場合や、緊急で迅速な採用が求められる場合には、人材紹介を活用することがおすすめです。
採用代行と人材紹介の違い
採用代行のデメリット
■社内にノウハウが蓄積されない
採用代行を導入すると、業務を外部に委託することで、実際の業務の透明性が低くなり、採用ノウハウが自社にしっかりと根付きにくいというデメリットが生じる可能性があります。
採用代行会社に完全におまかせせず、協力して業務を構築していくスタンスが重要です。採用フェーズにおけるKPIを共同で設定し、状況の監視や改善策について頻繁に協議しながら進めることが望ましいでしょう。
■アウトソースするための工数がかかる
採用代行を導入すると、採用工数が削減される一方で、導入前の準備には一定の手間がかかることを理解しておくべきです。
自社の採用課題やアウトソースする業務の整理などは、採用代行会社と協力して進めることができます。しかし、ある程度事前にこれらの課題を整理しておくと、自社で取り組むべき部分と代行会社に委託するべき部分とを明確に切り分けることが容易になります。
■導入前に費用対効果を考えにくい
採用代行の費用は、業務範囲以外にも採用ボリュームや期間、求められるクオリティなどによって変動します。
初期費用の有無や、運用費も企業や採用代行サービス提供会社によって異なり、定額か従量課金かなども検討が必要です。自社で採用業務を担当する場合と比較して、費用対効果を見積もる際には、見積金額や請求金額だけでなく、人員の管理費や設備費など人件費以外のコストも考慮する必要があります。
そして、そのコストをかけた結果どのような採用結果が出るのかがあくまでも予想ベースでしか分からないため、確実な費用対効果の予想は立てづらいのが事実です。
人材紹介サービスのデメリット
■大人数の採用には活用しにくい
人材紹介は特定の要件を満たした人材をピンポイントで紹介することが前提であり、大規模な採用には適していません。
また、人材紹介会社との関係性や登録人材のボリュームによっては、応募者の紹介を全くされない場合もあります。そのため、人材紹介会社との良好な関係構築や、自社の業界や募集ポジションに精通した人材紹介会社の選定が重要です。
■人材紹介会社の管理工数がかさむ
複数の人材紹介会社に並行して依頼していると、同じ情報をそれぞれの会社に繰り返し提供する必要があり、人材紹介の管理や対応が複雑になり、結果として採用活動の手間が増える可能性があります。
エージェントコントロールと呼ばれる、複数の人材紹介会社との窓口を一本化するサービスを提供している採用代行会社も存在します。採用活動において複数の人材紹介会社を利用する際には、このサービスの導入を検討することも一つの方法です。
■高額になりやすい
人材紹介は一般的に成功報酬型の料金形態です。そのためランニング費用はかかりませんが、一人あたりの人材紹介手数料は、採用者の理論年収の30~40%が相場であるため、人材紹介会社を通して多くの採用を行うと、結果的に採用コストが高額になってしまう可能性があります。
ポジションを特定して人材紹介会社に依頼するなど、費用に関する戦略も検討する必要があります。
■フィーが高くないと紹介してもらえない
人材紹介会社は成果報酬が主な収入源であるため、「少しでもフィーが高い企業(理論年収におけるパーセンテージが大きい企業)」に求職者を受からせようとします。つまり、そもそもフィーを15%や20%にしてしまうと後回しにされてなかなかいい人を紹介してもらえなくなります。
人材紹介のサービスの特性を理解し、ある程度の費用感は押さえた上で利用しましょう。
採用代行と人材紹介の導入の流れにおける違い
採用代行の導入の流れ
①自社の採用課題の整理
採用における様々な業務を「採用計画・採用戦略立案フェーズ」「母集団形成フェーズ」「選考フェーズ」「内定フェーズ」「入社フェーズ」などの採用フェーズに分割し、それぞれのフェーズにおいて自社で解決可能な課題と採用代行を活用することで解決できる課題に分類します。そして、どの業務をアウトソースするかを判断します。この際、採用代行会社からの提案も活用し、一緒に整理していくことをおすすめします。
②採用代行に委託するフローや役割を分担する
採用代行に委託する業務のフローと担当役割などを、採用代行会社と協力して設計します。担当者の動向や業務フローの可視化をどのように行うかを考え、お互いの認識にずれが生じないようにします。
また、採用プロジェクトが何人体制になるのか、2社間でどのように役割分担をするのかは、予算が大きな前提条件となります。採用代行の依頼を検討する初期段階から、社内で予算感を把握しておくことが重要です。
③目標設定と改善
採用するポジションや要件と一緒に、採用目標(KGI、KPI)を確立した上で応募状況や選考状況の数値分析を定期的に行い、改善策を実施します。
定期的な打ち合わせを通じて、採用代行会社と連携し、オペレーションの見直しや改善のための施策を進めます。報告や情報連携、改善提案が円滑に行われるかどうかを確認するために、提案段階で定期報告のサンプルやひな型を提供してもらい、イメージをしておくと良いでしょう。
人材紹介の導入の流れ
①募集ポジション、要件などの整理
募集ポジションと求める人材の条件・要件などをクリアにし、人材紹介会社に提供する求人情報を整理します。
ここで重要なのが、条件を厳密に絞りすぎると、人材紹介会社のタレントプールだけでなく、転職市場全体で該当する人材が見つからない可能性があるため、市場の状況を考慮しながら現実的な条件を設定しましょう。
②人材紹介会社に求人を共有
募集ポジションの詳細を人材紹介会社と共有し、2社間で要件に関する理解を深めます。人材紹介会社がターゲットの要件を正確に理解できていない場合、的外れな紹介が生じる可能性があるため、依頼時にはできるだけ採用の背景や業務内容、求めるスキルや人間性などの詳細を十分に伝えることが重要です。
③紹介が増えない際の対応
実際に人材紹介に依頼をしても応募が全くない可能性も考えられます。
そこで、定期的に稼働状況を確認し、紹介が得られない理由や現状など、人材紹介会社が紹介に際してボトルネックとなっている要因を確認し、解決に向けて企業内で要件の緩和など調整を進めていくことも重要です。
採用代行と人材紹介のどちらを導入するべきか
ここからは、「自社は結局採用代行と人材紹介どちらの導入に向いているのか」という見極め方を、実際の企業のケースを用いて解説します。
「採用代行」の導入が向いているケース
採用におけるノウハウがない企業
スタートアップ企業や中小企業を中心に、採用プロセスや媒体の種類など、人材採用に関する専門知識や経験が少ない企業が多いです。そこで採用代行を利用して、有効な採用戦略の策定や運用をすることができます。
大量採用する企業
採用代行を利用することで、自社での採用業務にかかる時間と手間を削減できます。そのため候補者の選定や面接の手配、書類審査などの業務をアウトソーシングすることで、企業は採用を効率化してより多くの人材を採用することができます。
採用活動の改善が必要な企業
採用代行の導入は、採用プロセスの効率化や品質向上を促進する手段としても効果的です。採用代行会社の幅広い専門知識により、採用プロセスの改善や最適化も期待できます。
「人材紹介サービス」の導入が向いているケース
高度な専門知識やスキルが必要な職種を採用する企業
技術職や専門職、あるいは特定の業界で専門知識が求められる職種を採用する企業にとって、人材紹介は非常に有効です。人材紹介会社は充実した候補者データベースや強力なネットワークを保有し、ふさわしい専門知識やスキルを備えた候補者を的確に提案することができます。
採用戦略が長期的な企業
人材紹介は、中長期的な採用戦略を展開する際の強力なパートナーとなります。人材紹介会社は企業のニーズや文化に深い理解を持ち、継続的な協力関係を築くことで、将来の採用ニーズにも柔軟かつ適切に対応できます。
人事情報を公開したくない企業
経営陣の採用など、競合や周囲の企業に知られたくない採用情報の場合、人材紹介を活用することで、非公開求人として募集できます。
採用代行と人材紹介の注意点
最後に、採用代行サービスと人材紹介サービスの注意点について、それぞれ説明します。
採用代行サービスの注意点
採用代行サービスを検討する場合、採用の計画段階から代行会社を巻き込むことで、課題解決のために取れる手段を広げることができます。
採用目標や方針、要件を共有し、採用のKGI・KPIを共に追いかけると、採用成功への道がより明確になります。
また、採用代行会社との綿密な連携が求められるため、応募や選考の進捗など、詳細な情報をミスなく共有しながら業務を進めることが必要です。
個人情報の取り扱いに慎重であると同時に、セキュリティ面にも安心感のある採用代行会社を選択しましょう。
人材紹介サービスの注意点
人材紹介サービスを検討する場合、自社との適切な連携ができるかどうかを重視し、紹介が途中で放棄されてしまわないかを重ねて確認しましょう。
また、自社を求職者にアピールしてもらうために必要な情報を共有しながら、社内における選考プロセスの遅さなどの課題にも対処し、せっかく紹介してもらった人材に離脱されないような迅速な改善を図ることが重要です。
求人を委託した時点で終わりではなく、人材紹介会社と協力して採用を進めていく意識が、採用成功に繋がります。
まとめ
採用代行と人材紹介の主な違いは、採用代行が企業の採用業務全体を代行することを目的としているのに対し、人材紹介はあくまでも企業と候補者の適正なマッチングを目指しているという点です。
ただし、どちらも採用のプロがノウハウを提供してくれるという共通点があり、特に採用難の時代においては有効な採用手法と言えます。
企業のニーズや状況に応じて、どちらのサービスの方がフィットするかは変わるため、正確な知識と理解を持った上で適切な選択を行うことが重要です。
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