DX化の推進やITの成長といった背景から、エンジニアを採用したいと考える企業は多いでしょう。しかし「エンジニアの平均年収」を理解しなければ、採用活動はなかなかうまく行きません。
そこで今回は、若手層と呼ばれる20代、30代のエンジニアの平均年収から、中堅、ハイレイヤー人材など年代別の年収相場を解説していきます。
筆者視点で、今後の年収推移の展望や職種別の年収の違いも合わせて解説しますので、ぜひ自社の採用要件と見比べてみてください。
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エンジニア全体の平均年収は452万円
結論、ITエンジニア全体の平均年収は、452万円で、他の職種と比較してもかなり高い水準であることがわかります。また、エンジニアは「スキルが物を言う職種」なので、年代問わず成果を上げれば昇給しやすいことも特徴です。
転職サービスdodaの調査によると、エンジニア全体の平均年収は452万円ですが、年代別や職種別で見ていくと平均年収大きく差が出てきますので、同じくdodaが行った調査を参考に以下で詳しく解説していきます。
エンジニアの年代別年収相場:20代
まず、20代エンジニアの平均年収は380万円となっています。
エンジニア全体の平均年収と比較するとやはり少し低いですが、それでも職種全体の平均年収が352万円であることを考えると、高い部類と言えるでしょう。
20代は新卒や未経験の方も含まれるため300万円台にとどまっていますが、スキルを磨くことで、年収が上がる余地は十分にあります。
エンジニアの年代別年収相場:30代
30代のエンジニアの平均年収は512万円と大きく跳ね上がります。
市場でも即戦力として動ける30代のエンジニアは取り合いになるケースが非常に多く、ある程度経験を積みスキルを身につけた人材であることから、平均年収が500万円を超えていることも納得できるでしょう。
キャリアアップが早い人はPM・PLを担当していることもあるので、それも平均年収が高くなっている要因の一つです。
エンジニアの年代別年収相場:40代
40代エンジニアの平均年収は642万円とさらに上がっています。
40代になるとPM・PL以外にも、部下の育成やチーム・組織の構築など、ITスキル以外にもビジネススキルを身につけた人材も多いです。
現場での開発にとどまらず、会社の経営に携わる部分で活躍できる人材が多いことから、40代のエンジニアの年収はより一層高くなっています。
職種別エンジニアの平均年収
年代別の年収相場以外に、エンジニアの職種別平均年収を知っておくことも重要です。
一言でエンジニアと言っても、職種が細分化されているため、これから採用したい職種の平均年収を把握しておくとよいでしょう。
ここからは、厚生労働省が公開している職業情報提供サイト「jobtag」の情報と、私が実際に採用媒体やお客様をご支援する中で調査した数値をもとに、市場感なども含めてご紹介していきます。
プログラマー
まずはじめに、プログラマーの平均年収は550.2万円です。
他職種の平均年収と比較すると、おおよそ中間に位置しています。
プログラマーは開発スキルが求められるポジションですが、設計や要件定義などの上流工程は担当しません。そのため転職希望者も20代が多く、比較的若手層が多いことも特徴です。
Webエンジニア
次にWebエンジニアですが、平均年収はプログラマー同様550.2万円です。
昨今のビジネス情勢においては、Webサイトの設立やプロダクトの開発など、Webエンジニアが必要とされるシーンは様々あります。
Webエンジニアの需要が高まっていることもあり、市場ではWeb開発のスキルを身につけようとする人も少なくありません。結果的にWebエンジニアの全体数が少しずつ増え、未経験から挑戦する人も多くなってきています。
アプリケーションエンジニア
アプリケーションエンジニアの平均年収も550.2万円で、エンジニアの全職種と比較すると中間に位置しています。
最近ではスマホアプリの開発に力を入れる企業も多く、一定の需要があるポジションと言えるでしょう。しかし未経験からエンジニアを目指す人材が、その需要に合わせてアプリ開発のスキルを学ぶ人も多い傾向にあり、徐々にアプリケーション開発ができる人材も増えつつあります。
今後もアプリケーションエンジニアは人気の職種として、人口が増えていくでしょう。
インフラエンジニア
インフラエンジニアの平均年収は534.6万円と、他の職種と比較するとやや低い相場となっています。
ネットワークの基盤を支えるインフラエンジニアは、多くのIT企業で募集が行われています。特にインフラエンジニアは未経験歓迎や、第二新卒OKといった募集も少なくありません。
転職時にITスキルが低くても挑戦でき、比較的未経験スタートの人材が多いことも、インフラエンジニアの平均年収がやや低いことに繋がっています。
サーバーサイドエンジニア
サーバーサイドエンジニアの平均年収も、インフラエンジニア同様平均年収は534.6万円です。サーバーサイドエンジニアは、インフラエンジニアの中の一つに分類されており、大きなくくりで見ていくとインフラエンジニアに属します。
インフラエンジニア同様、未経験から人材を育てる企業が多いことから、まだスキルが浅い人材が多く、他のエンジニアの平均年収も他職種と比べてやや低い傾向があります。
AIエンジニア
最先端のイメージが強いAIエンジニアですが、以外にも平均年収は534.6万円にとどまっています。
日本ではこれから伸びていくAI領域ですが、海外ではすでに注目が集まっており、アメリカのAIエンジニアの年収レンジは約1,852万円~2,839万円と高額です。
そのため、これから日本のAIがさらに発展し、よりAIエンジニアの需要が高まるとアメリカのようにAIエンジニアの年収推移は高騰することが予想されます。
フルスタックエンジニア
実際に複数の採用媒体で確認したところ、フルスタックエンジニアの平均年収は500万〜1,000万円でした。
フルスタックエンジニアは、プロジェクトの上流から下流までに携わることができるハイスキルなエンジニアを指しています。
フルスタックエンジニアは、個人のスキルにより大きく年収が変動するため、一概に平均年収では測れない部分もあります。いずれにしても高度なスキルが必要とされるため、他のエンジニアと比較すると平均年収が高くなっています。
また、フルスタックエンジニアは多くの企業が必要としているため、採用を行う際はある程度高い給与を提示することが大前提となるでしょう。
エンジニアの平均年収は今後も高まる
IT業界は慢性的な人手不足が続いているため、今後もエンジニアの平均年収は高くなっていくでしょう。2020年にコロナウィルスが流行した際、在宅ワークが可能なエンジニアは採用が縮小せず、企業によってはエンジニアの採用により力を入れていました。
さらにAIやメタバース、DX推進とITに関する話題は尽きず、多くの企業でエンジニアの争奪戦が続いています。スキルのあるエンジニアを採用するために高い年収を提示する企業も多く、今後エンジニアの年収は高騰が続いていくと予想されています。
エンジニアの年収の決め方
エンジニアを採用する際、提示する年収の決め方は採用を左右するかなり重要なポイントです。
そこで、具体的なエンジニアの年収の決め方を紹介していきます。
自社の給与テーブルを基準にする
最初の方法は、自社の給与テーブルを基準にする方法です。
既存社員の年収や、自社の規定をベースにエンジニアの年収を決めていく企業もあるでしょう。
特に従業員数が多い企業の場合、転職希望者ごとに年収を調整することもなかなか難しいと思います。そのためすでに完成している給与テーブルを基準に年収を決める方法がおすすめですが、エンジニアの平均年収の相場とかけ離れていると、採用が難航する可能性があるため注意が必要です。
平均相場を基準にする
自社の給与テーブルのみならず、業界全体のエンジニアの平均年収を基準にする方法もおすすめです。
特にエンジニアは職種が細分化されており、職種ごとに平均年収も変わります。転職希望者のスキルによっても給与が変わることも考えられるため、競合他社の求人や、自社の要件で検索して出てくるエンジニアの現年収などから提示する年収を決めていくとよいでしょう。
エンジニアの給与が低くても採用はできる
優秀なスキルを持つエンジニアを採用する際、どうしても年収を高くしなければいけないと思いがちですが、ポイントを抑えておけば相場より低い年収でもエンジニアを採用することができます。
採用活動において年収の低さがネックとなっている方は、ぜひ以下の方法を検討してみてください。
時給換算で高く見せる
一見年収が低い求人でも、時給換算で金額が高いと感じれば採用成功に近づけます。例えば年収400万円で月間残業時間が40時間の企業と、年収350万円で残業なしの企業の場合、どちらの時給が高いでしょうか?
年収400万円(月間残業15時間):時給約1600円(月20営業日計算)
年収350万円(残業なし):時給1800円(月20営業日計算)
上記の通り、表記上の年収が高いとしても、残業時間が多ければ時給換算した際に割に合わないケースも珍しくありません。
エンジニアの平均年収と比較して自社の年収が低い場合、残業が少ないのであれば時給換算で割高であることをアピールしてみてもよいでしょう。
福利厚生を充実させる
エンジニアの平均年収と比較して、年収が低いのであれば福利厚生など他の部分でカバーすることも一つの手段です。
エンジニアにとって収入はもちろん、自分の手元から出ていくお金が少ないことも判断のポイントとなります。そのため転職希望者が求人を見たときに、いかに出費を抑えられるかをアピールしていくことも効果的です。さらに最近ではリモートワークを希望するエンジニアも多いため、労働環境面においても一歩リードできれば、エンジニアの採用成功に繋がります。
【人気の高い福利厚生・制度】
- 残業代全額支給
- 交通費全額支給
- リモートワーク可
- リモートワーク手当
- 住宅手当
- 家族手当・子ども手当
- 引越補助
- 退職金
上記は特に人気の高い福利厚生や制度です。エンジニアの平均年収と比較して給与が少ない企業でも、人気の制度を取り入れることで、求職者からの興味を惹けるようになるでしょう。
昇給モデルを明確に記載する
求職者が求人を見た時に、将来的に稼げるというイメージを伝えるためにも、昇給モデルを記載することがおすすめです。入社時の年収が平均より低いとしても、将来的に平均年収を超えられるのであれば、候補者を説得できるケースも多いです。
昇給モデルを明記する際は、以下のポイントに注意してください。
【昇給モデルを記載する際のポイント】
- 昇給のタイミングを記載する
- 平均昇給金額を記載する
- 昇給の条件を明確にする
- 実際の昇給事例を記載する
ただ単に「昇給あり」や「昇給年2回」と記載するのではなく、具体性をもたせることが大切です。
資格手当を設定する
月給ベースで平均年収を下回る場合は、資格に応じた手当を設定するとよいでしょう。一律で年収を高く設定するのではなく、エンジニアのスキルに応じて資格手当を支給する企業も多くあります。
【エンジニア向けの資格(例)】
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- システムアーキテクト試験
- ITパスポート試験
- C言語プログラミング能力認定試験
- ITサービスマネージャ試験
- ネットワークスペシャリスト試験
- LPIC
- データベーススペシャリスト試験
- AWS認定資格
多くの企業では資格に応じて5000円~3万円の資格手当を設定しています。スキル次第で収入が上がることを伝えることで、候補者も興味を持ってくれるでしょう。
今後の見直し目安を伝える
ベンチャー企業でよくあるのが、給与改定やベース給UPなど、今後給料が上がる見込みがあるケースです。まだ確実ではなくても「今後改訂しようと思っている」ということを求人原稿や選考の段階で伝えていくことが効果的です。
一概に決まった給与テーブルを提示するのではなく、給与改定に柔軟な姿勢を見せることで、企業への信頼性にもつながります。
ビジョンマッチを狙う
転職希望者の多くが年収面を気にしますが、収入以外にもやりがいやビジョンマッチを大切にしているエンジニアもいます。
自社でしか開発できないプロダクトや、他社には無いビジネスモデルなど、ユニークで面白みのある仕事であれば、平均年収を下回っていても十分魅力を発信できます。なぜこのビジネスモデルを展開しているのか、プロダクトを展開した先にどんなことを実現したいのかなど、会社のビジョンとマッチする求職者に向けてアプローチすることも、一つの採用手段です。
まとめ:エンジニアの平均年収を把握すれば採用成功が近づく
スキルや職種、年代別に平均年収が大きく変わるエンジニアを採用する場合、年収の相場を理解したうえで採用戦略を計画することが大切です。
20代と30代では大きく平均年収が変わるため、一律の給与テーブルで採用を進めても、転職希望者から興味を引くことは難しいでしょう。今後エンジニアの年収推移は上がっていくことが予想されているため、エンジニアの平均年収を参考に、採用活動を進めていくことが採用成功の鍵を握ります。