ポテンシャル採用とは?メリットとデメリットや実際の導入事例を解説

昨今、即戦力を求める中途採用が多くの企業で重視される一方で、将来の成長可能性を重視した新卒や第二新卒の「ポテンシャル採用」にも熱い視線が注がれています。このポテンシャル採用が注目を集めている理由、そのメリットとデメリット、成功させるための要点、実際にポテンシャル採用を積極的に行っている企業の具体例を見ていきましょう。

目次

ポテンシャル採用とは?

ポテンシャル採用は、応募者の現在のスキルや経験よりも、その人が持つ潜在的な能力や将来的な成長性を重視する採用アプローチです。この採用戦略は、特に新卒者や第二新卒を対象としており、彼らが未来において企業にどのような価値をもたらすかを見極めることに焦点を当てています。つまり、ポテンシャル採用は、即戦力ではなく、将来的に企業に貢献できる能力や適応性、学習意欲などを備えた若手人材を見いだす手法と言えます。

この採用方法は、応募者の過去の実績や経験よりも、彼らがどれだけ成長し、新しい環境に適応できるか、そして組織のカルチャーにフィットするかなど、将来のポテンシャルを重視しています。中途採用がその人の既存のスキルや経験を基に採用するのに対し、ポテンシャル採用ではより長期的な視点で人材の価値を判断します。このアプローチは、新卒者や第二新卒を中心に、将来企業の成長を支える核となる人材を発掘するために多くの企業で採用されています。

新卒採用や中途採用との違いとは?

中途採用とポテンシャル採用の主な違いは、応募者が持つ経験やスキルセットにあります。中途採用は、企業が求める特定のポジションに適合する実務経験や具体的なスキルを有する人材を対象としています。これに対して、ポテンシャル採用では、特定の職務経験や技術スキルが不足している可能性があるものの、将来的な成長や貢献が期待される人材を対象にしています。つまり、中途採用は「即戦力」に焦点を当てているのに対し、ポテンシャル採用は「将来性」を重視しています。

一方で、新卒採用は主に大学や高等教育機関の卒業生を対象としていますが、ポテンシャル採用はこれに加えて、例えばキャリアの早い段階で転職を考えている第二新卒など、より広範な対象者を包括します。新卒採用が学生のステータスに特化しているのに対し、ポテンシャル採用は未来の可能性を秘めた若手人材全般に目を向けている点で、両者は異なっています。

ポテンシャル採用が注目されている背景

採用市場の激化して採用難になっているため

現在、日本の労働市場は出生率の低下と労働力人口の減少により、ますます競争が激化しています。この状況は求人倍率の上昇につながり、特に即戦力とされる経験豊かな人材の獲得競争は非常に厳しいものとなっています。多くの企業が即戦力人材を求めているものの、売り手市場の現状では、容易に採用を実現することが難しい状況が続いています。

このような背景から、若手の未経験者や経験が浅い人材に目を向け、それらのポテンシャルを見極め、自社で長期的に育て上げる「ポテンシャル採用」が重要な戦略として注目されています。ポテンシャル採用を通じて、企業は初期のスキルや経験よりも、候補者の学習意欲や将来性に焦点を当て、長期的に企業に貢献できる人材を自社で育成することが可能になります。この方法は、即戦力人材の獲得が困難な現在の市場環境において、特に有効な戦略とされています。

潜在能力(ポテンシャル)の高い人材を効率良く採用できるため

ポテンシャル採用では、標準的な採用ルートでは見過ごされがちな、多様な視点やスキルを持つ候補者を発掘するチャンスを得ます。ポテンシャル採用は、企業がより広範な才能プールから選択できるようにし、新しい視点やイノベーションをもたらす可能性を高めています。

ポテンシャル採用のメリット

①企業に新鮮な流れを作ることができる

かつての新卒採用抑制の影響で、現在の多くの企業は組織の高齢化に直面しています。この状況は、組織のダイナミズムの低下や革新的なアイデアの不足につながりかねません。

ポテンシャル採用によって若手人材を積極的に取り入れることで、この問題に対処できます。若手社員の新鮮な視点や最新の知識は、組織内の活性化に貢献し、新しいビジネスチャンスを生み出す可能性があります。

さらに、ポテンシャル採用は企業の長期的な存続にも重要です。若手社員に早期からリーダーシップを経験させることで、将来の経営層や主要なポジションを担う準備をさせることができます。特に技術重視の産業では、若手への技術継承が企業の競争力を維持する上で不可欠です。このように、ポテンシャル採用は組織の活力を高め、持続的な成長を促進する戦略として有効なのです。

②若手から幹部候補として育成することができる

ポテンシャル採用は、新卒者だけでなく若手の社会人も対象としています。これは、未経験者やキャリアの浅い人材にも、企業成長への貴重な貢献が期待できるためです。

社会人経験を一定期間持つ人々は、基本的なビジネスマナーや職場でのコミュニケーション能力、問題解決スキルなど、職場での基礎能力を身につけています。これらの能力は、特定の専門スキルに比べ、どのような職種や業界にも適用可能であり、即戦力としての土台を形成します。

また、特定の業界や職種に縛られていないことは、新しいアイデアや手法の導入に対して開かれた姿勢を持っていることを意味します。このような柔軟性は、変化の激しいビジネス環境においては大きな利点となり、企業にとって新しい価値を創造する可能性があります。したがって、ポテンシャル採用は、新卒者だけでなく、若手社会人に対しても大きな機会を提供する重要な戦略となっています。

ポテンシャル採用のデメリット

キャリア採用ではないため教育コストがかかる

ポテンシャル採用を成功させるには、適切な教育プログラムと離職率の管理が鍵となります。未経験者や経験が浅い人材の場合、必要なスキルや知識を身につけさせるための綿密なトレーニングが求められます。

こうした人材に対しては、職業訓練やメンター制度などを通じて、段階的かつ体系的なスキルアップを支援することが大切です。また、実践的な仕事の経験を積ませることで、実務に必要な知識や技術を効果的に身につけさせることができます。

一方で、採用した人材が早期に離職するリスクを軽減するためには、応募者の過去の職歴や転職の頻度に注意を払うことが重要です。頻繁な転職履歴がある場合は、その背景や理由を理解することが求められます。さらに、前職での長期勤務がある応募者は、新しい職場環境や業務内容に柔軟に適応できるかどうかを慎重に評価する必要があります。ポテンシャル採用においては、これらの要素を十分に考慮することが、採用の成功につながるのです。

そもそもポテンシャル層の転職理由とは

仕事内容に関する理由

キャリアに関連する転職の動機としては、「新しいスキルを習得したい」「より挑戦的な職務を求めている」「自分の専門性を活かせる場所を探している」などが挙げられます。職場における実践を通じて、自分の強みや興味が変化し、それに合わせてキャリアの方向性を見直すこともあります。

また、特に若手の労働者においては、既存の職場での成長の限界を感じたり、自分の専門性をさらに深めたいと考えたりすることが、転職のきっかけになることがあります。これは、単にポジションの昇進を望むのではなく、自己実現や専門性の追求といった、より個人的な成長を目指す動機に基づいていることが多いです。

私生活に関する理由

キャリアの選択において、”ワークライフバランス”は重要な要素となっています。特に若い世代では、長時間労働やストレスの多い職場環境から離れ、より充実した個人生活を求める傾向が見られます。

最近の労働市場の動向を見ると、フレキシブルな勤務体制を求める声が高まっています。例えば、柔軟な勤務時間、リモートワークの選択肢、有給休暇の取得しやすさなどが、特に若い労働者にとって魅力的な条件となっています。

このような傾向は、単に仕事よりもプライベートを優先するというよりは、仕事とプライベートの両方を充実させたいという価値観の反映です。現代の働き手は、仕事と生活の両立を実現するために、よりフレキシブルな勤務条件を求めています。

ポテンシャル人材を採用をする際の注意点

最低限必要とする「ポテンシャル」の基準を明確にする

採用基準の明確化は、ポテンシャル採用において不可欠です。例えば、「困難な状況でも柔軟に対応し、問題解決に導いた経験」や「チームリーダーとしてプロジェクトを成功に導いた経験」など、具体的な能力や経験を指標として設定することが重要です。このような基準を設けることで、面接や評価プロセスを通じて、候補者が会社の価値観や目指す方向性に適合しているかを効果的に判断することが可能になります。

応募者が希望するキャリアパスを把握する

ポテンシャル採用においては、候補者の将来の職業目標や成長したい分野について深く理解することが重要です。面接過程で、彼らの長期的なキャリアビジョンや短期的な学習目標を探ることは不可欠です。同時に、会社側も候補者に対して、具体的な成長プランや期待する役割を明確に伝えるべきです。

このような透明なコミュニケーションを通じて、候補者と企業の将来の期待が一致することを確認することで、入社後の業務適応やキャリアの発展についての不一致を事前に減らすことができます。

社内の教育体制を整えておく

新入社員が迅速に企業の中核メンバーとして機能するためには、適切な育成とサポートが不可欠です。これには、彼らのスキルと能力を充実させ、職場での効果的なパフォーマンスを支援する体制の構築が含まれます。オンボーディングプログラムやメンターシップを通じて、新入社員が自社の文化や仕事の流れを理解し、速やかに業務に貢献できるよう導くことが求められます。このような取り組みは、彼らの早期の成長を促し、長期的な職場への定着をもたらすでしょう。

ポテンシャル人材の採用を成功させるコツ

求人媒体をきちんと選定する

最近の労働市場では、経験豊富な中堅・シニア層への需要が高まっています。多くの企業が限られた人材を巡って競争を繰り広げており、求職者は多数のオファーに圧倒されることが増えています。このような状況では、自社の魅力を効果的に伝えることが難しいという課題があります。

これに対応するため、企業は従来の採用戦略を見直し、新しい方法を模索する必要があります。ここで2つのアプローチ例を挙げてみましょう。

採用要件の明確化

ポテンシャル採用では、事前に明確な採用要件を設定することが重要です。これにより、求職者の潜在能力や未来の成長可能性を的確に評価する基準が確立されます。曖昧な基準では、本質的な能力を見逃しやすく、採用後のミスマッチのリスクが高まります。具体的な要件を設けることで、企業と求職者双方の期待を一致させ、長期的な成功につながる採用を実現できます。

採用要件の設計方法については、下の記事で詳しくご紹介していますのでぜひあわせてご覧ください。

ミスマッチを防ぐためにビジョンや社内文化を発信する

採用後のミスマッチを防ぎ、自社の理念やカルチャーに適した人材を獲得するには、日頃から企業の雰囲気や働き方など、リアルな情報を伝えることが重要です。

SNSやHPなどでの採用広報を通じて、企業の実態やビジョン、実際のプロジェクト内容などをリアルに発信することで、エンジニアからより深い理解と共感を得ることができます。これにより、自社のカルチャーにマッチしたエンジニアが集まりやすくなり、入社後の定着や活躍をより期待することができます。

応募者の「ポテンシャル」を見極めるポイント

学習する習慣や姿勢があるか

自己成長に対する意欲がある人材は、変化するビジネス環境に対応し、新たなスキルや知識を迅速に習得することができます。

面接の際には、候補者がこれまでにどのように自己学習を行い、新しい挑戦をしてきたかに注目することが重要です。これにより、候補者が将来的にも自ら進んで学び、成長し続けるかどうかを判断できます。

当事者意識を持って仕事に取り組んでいるか

将来への明確なビジョンを持つ人材は、業務において主体的に行動し、成果を生み出す可能性が高いです。彼らは通常、状況に応じて柔軟に対応し、目標達成に向けて効率的な方法を模索します。採用過程では、候補者がどのように自己目標を設定し、それを達成するためにどんな努力をしてきたかを確認することが有効です。

自社のカルチャーにフィットするか

高いスキルを持つ人材でも、チームワークや協調性が欠けていると、組織内での効果的な働きが難しくなります。そのため、候補者がどのようにチームで協力し、共同作業を行ってきたかについて確認することは重要です。候補者の過去のチームワークの経験や、他者との協力に関する考え方を理解することで、組織との相性を見極めることができます。

ポテンシャル採用の導入事例

サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社は、異業種や異分野の経験を持つ人材を積極的に採用しています。特に、異なる業界や専門分野からの転職者に焦点を当て、新しい視点やアイデアを尊重しています。新卒採用は別枠で行いつつ、キャリア採用では経験年数に関わらず、幅広い年齢層の人材を対象にしています。

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社では、従来の新卒一括採用を見直し、年齢や経歴に捉われない多様な人材の採用を推進しています。具体的には、新卒や第二新卒、若手社会人まで幅広い層が応募可能で、年間を通じて柔軟な選考スケジュールを設けています。これにより、常に新鮮な視点と多様な才能の獲得を目指しています。

まとめ

労働市場の変化と人材確保の競争が激化する中、企業が持続的な成長を遂げるためには、賢明な採用戦略が必要です。特に中途採用における高い採用コストと限られた人材プールに対処するには、革新的な手法の採用が求められます。このような状況において、ポテンシャル採用は非常に有効です。

弊社の採用支援サービスでは、効率的採用を包括的におサポートしています。長期的な採用コストの削減と優秀な人材の獲得のために、採用に課題をお持ちの方はぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

井上愛海のアバター 井上愛海 株式会社ミギナナメウエ 執行役員

2022年9月東京大学大学院在籍中に株式会社ミギナナメウエの執行役員に就任。
即戦力RPO事業の事業責任者を担い、これまでに80社以上の採用支援に携わる。
【以下実績】
・シリーズBのスタートアップ企業の20名のエンジニア組織を40名まで拡大
・CTO、PM、メンバークラスを採用しゼロからのエンジニア組織を立ち上げに成功

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