ダイレクトリクルーティングにAIは活用できる？プロンプト事例や効率化のポイントを徹底解説！

近年、ダイレクトリクルーティングにAIを活用する企業が増えています。従来の採用活動では、候補者の選定やスカウト送信に多くの時間と手間がかかりましたが、AIを使えばこれらの作業を効率よく進められます。

この記事では、AIを使ったダイレクトリクルーティングの活用方法や、メリット・デメリット、具体的なプロンプト事例、効率化のポイントについて解説します。

• スカウト文章を作成する手間を減らしたい
• ダイレクトリクルーティングで狙ったターゲットにアプローチしたい
• AIでダイレクトリクルーティング業務をどれくらい効率化できるか知りたい

といったお悩みを抱える方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

採用市場におけるAI技術の活用状況

近年、AI技術の精度向上により、採用活動へのAI活用が急速に進んでいます。

実際、Thinkings株式会社が実施した「2023年度の採用活動におけるAI活用の効果調査」によると、すでに採用担当者の43％が採用活動でAIを活用した経験があると回答しています。 ​さらに、AIツールを活用している企業は、目標採用数や採用の質に対する満足度が高いことが同調査で明らかになっています。​

また、別の調査では、ダイレクトリクルーティングの分野において55％の企業が生成AIを積極的に取り入れる姿勢を示しています。

​具体的な用途としては、「スカウト文の作成」や「求人にマッチする求職者の選定」「応募後の日程調整対応」などが挙げられ、これらの業務の効率化が行われています。 ​AI技術の進化とともに、採用市場でのAI活用はますます広がりを見せており、「採用×AI」市場の今後の動向が注目されます。

AIで自動化できるダイレクトリクルーティングの業務

ここでは、AIを活用して自動化できるダイレクトリクルーティングの業務について整理しています。

AIは多くの業務において活用可能ですが、導入に際しては「どのAIツールを利用すべきか」を見極めることが重要です。詳しくは後述しますが、無料のChatGPTで対応可能な場合もあれば、有料版や求人媒体と連携した外部のAIツールが必要となるケースもあります。

以下は、ダイレクトリクルーティングの一連の業務とAIツールの対応可否についてをまとめています。ぜひ参考にしてください。

業務内容/GPT対応可否	ChatGPTの無料版で対応できる	ChatGPTの有料版が必要	専用AIツールが必要
ターゲット分析	〇	〇	〇
競合・自社分析	〇	〇	△
候補者の選定・スクリーニング	×	△（条件付き）	〇
スカウトメールの作成	〇	〇	〇
スカウトメールの送信	×	×	〇
選考日程の調整	×	×	〇
選考後のフォロー・リマインド連絡	×	×	〇

① ターゲット分析

ターゲット分析は、ChatGPTなどの無料ツールで十分に効率化できる業務です。 たとえば、「JTC勤めの30代で、キャリアチェンジを考えている現在課長レベルの企画職の女性」といったペルソナをもとに、以下のようなステップで、ニーズや関心のあるポイントを整理することが可能です。

• 自社の採用目的や魅力を明確にする
• 自社が採用したいターゲットの要件を洗い出す
• ターゲットの心理や競合との比較からブラッシュアップする

【1】自社の採用目的や魅力を明確にする
まずは、事業やポジションにおける仕事内容、自社の文化、提供できる待遇や働く環境など、自社の強みや特徴を洗い出すところから始めます。ChatGPTに「自社の魅力をわかりやすく整理したい」と投げかけることで、整理や要約も可能です。

【2】自社が採用したいターゲットの要件を洗い出す
次に、求める人物像を具体化します。候補者の現在の所属企業や転職希望の条件、スキルセット（MUST要件、WANT要件）などを踏まえて、採用ペルソナを設計します。ChatGPTを活用すれば、「〇〇の仕事に興味を持ちそうな30代女性のペルソナを作って」といった形で候補を広げたり、要件の整理をサポートしてもらえます。

【3】ターゲットの心理や競合との比較からブラッシュアップする
最後に、想定したターゲットが何を重視して転職を考えるのか、他社はどんな打ち出し方をしているのかを比較・検討します。ChatGPTには、「30代女性がキャリアチェンジで重視する条件は？」「競合他社の求人サイトの特徴は？」といった問いかけをすることで、外部視点を取り入れながら分析を深めることができます。

この手順により、「どんなスカウト文が刺さりそうか」などのヒントを得ることができます。また、ターゲット分析の結果は、後述する求人票の作成にも活かせます。 

なお、上記のステップで活用できる「自社分析シート」「ターゲット設計シート」をご用意していますので、必要に応じてダウンロードいただき、ChatGPTと併用しながら分析を進めてみてください。

② 競合・自社分析

競合や自社の分析に関しても、ChatGPTなどの無料ツールを活用できます。次のような流れで進めていくとスムーズです。

【1】ターゲットが就職に求めるニーズを理解する
まずは、候補者が何を重視して転職を考えるのかを把握します。たとえば、「最近の転職者は、どんな働き方や条件を求めている？」「2024年卒の新卒が就職先を選ぶときに重視しているポイントは？」とChatGPTに聞くことで、全体的な価値観の傾向をつかむことができます。

【2】ターゲットのニーズを前提に、項目に沿って企業の魅力をまとめる
理解したニーズをもとに、「働きがい」「成長機会」「働きやすさ」などの観点で自社の魅力を整理します。この際、採用における4P分析（Philosophy／People／Profession／Privilege）を応用するのも有効です。ChatGPTに「4P分析を使って企業の魅力をまとめたい」と伝えることで、視点の漏れなく整理できます。

この分析をもとに、他社と比べて自社の魅力を引き立てる求人票を作成することもできます。

③ 候補者の選定・スクリーニング

候補者の選定やスクリーニングにおいては、無料のAIツールでは対応が難しく、有料版であっても条件設定や採用という観点における独特なフィルタリング機能に限界があります。

そのため、求人媒体と連携できるような専用AIツールの導入や、もしくはスプレッドシートにGoogle Apps Script(GAS)や関数を組み込んで対応すると一定スクリーニングがしやすくなります。ただし、後者はある程度のIT知識が求められることを念頭に置きましょう。

また、候補者の個人情報を含むやりとりを外部ツールに入力する場合、個人情報漏洩のリスクがあるため、名前や細かい職歴は載せないなど細心の注意が必要です。 

④ スカウトメールの作成と送信

スカウト文の作成には、ChatGPTの無料版・有料版ともに活用できます。ベースとなる文章はもちろん、個別にパーソナライズした文章も作成できるため文面に悩む時間を削減できます。

しかし、プロンプト(依頼文)の精度によっても生成される文章の質が変わってくるため、後述するようにAIに伝わりやすい構成でターゲットの職種や属性に合わせた文章の叩き台を作成し、それを最終人間がチェックして手直しをするというフローがおすすめです。

一方で、スカウトメッセージの送信業務については、採用媒体と連携しているAIツールが必要です。大量の候補者に一括で送るような作業は手動では限界があるため、自動化ツールの導入をおすすめします。

⑤ 選考日程の調整

 選考日程の調整など、候補者との連絡やカレンダー管理などを含む業務は、AIツールとの連携が前提になります。

とくに応募数が多い場合や面接などで複数の担当者が関わる場合は、スケジューリング機能が整っているツールを活用することで、対応ミスの防止にもつながります。

⑥ 選考後のフォロー・リマインド連絡

選考後のフォローやリマインド連絡に関しても、基本的にはAIツールの導入が必要です。選考結果の案内や次のステップへのリマインド連絡などをタイミングよく行うためには、ワークフロー自動化機能があるツールの使用が現実的です。

一度設定すれば、手間なく丁寧な対応を維持できるため、候補者の選考満足度(採用CX)向上にもつながります。

ダイレクトリクルーティングでAIを活用するメリット

ここでは、ダイレクトリクルーティングにおけるAI活用のメリットを5点ご紹介します。

① 業務の負担を軽減できる

AIツールを導入することで、採用担当者がこれまで手作業で行っていた業務を一部自動化することができ、負担を大幅に軽減できます。

​たとえば、履歴書のスクリーニングや面接日程の調整、スカウト文章の作成などは、逐一個別対応をしていると毎日かなりの時間がかかってしまいますが、AIを活用することで7-8割は効率化できます。​その結果、担当者はより検討難易度の高い戦略設計や予算設計の業務や、重要度の高い面接業務や内定者フォローなど、採用活動におけるコア業務により多くの時間を割くことができるようになります。

② 採用コストを削減できる

先述のとおり、AIを導入することで採用活動全般の効率化が進むので、結果的に人材リソースなどのコストを削減できます。

さらに、より適切なターゲットに質のいいアプローチができるため、無駄な採用活動全体の費用を削減できたり、効率的に候補者をスクリーニングすることで採用媒体費用の削減にもつながります。

その結果、スピーディーな採用活動はもちろん、全体的なコスト削減もできます。

③ ヒューマンエラーを防げる

採用業務は、求人票の作成や応募者との連絡など、細かい作業が多く発生します。これらをすべて手作業で行う場合、データの入力ミスや見落としといったヒューマンエラーが起こってしまいがちです。

しかし、AIを導入することで、これらのエラーを最小限に抑えることが可能になります。採用活動では、少しのエラーが求職者との信頼関係に直結するため、正確性がとくに重要になります。AIをうまく活用して人的ミスを避けることで、求職者との関係性や企業の評判を守ることができます。

④ 客観的で公平な評価ができる

面接を人間だけで行うと、どうしても個々の主観が評価に影響を及ぼすことがあります。一方、AIは、事前に設定した評価基準に基づき、公平で客観的な評価を行ってくれます。

たとえば、候補者のスキルや経験を数値化し、定量的に比較することで、感情や先入観に左右されない評価が可能となります。面接官による評価のばらつきを防げるため、人材を評価する際の精度が向上します。

⑤ 採用プロセスを迅速に進められる

少子高齢化により採用市場の競争が激化している現代、採用活動を迅速に進めることは、採用成功の重要な要素の一つです。そこで、​AIを導入することで、書類選考や面接調整などのプロセスを自動化でき、全体のスピードアップが期待できます。

ダイレクトリクルーティングでAIを活用するデメリット・課題

AIをダイレクトリクルーティングに導入する際には、以下のようなデメリットや課題を考慮しましょう。

① 候補者の人間性や個性を見落とす恐れがある

AIは、応募者のスキルや経歴といった数値化しやすい情報を分析するのが得意です。​一方で、人間性や個性に関する情報は、十分に評価できない場合があります。

例えば、コミュニケーション能力やチームワーク、企業文化への適合性といった数値化が難しい項目に関しては、AIでは分析しにくいものの、入社後に自社のカルチャーやビジョンにマッチし、長期的に活躍してもらうためには欠かせません。そのため、AIの分析結果だけに頼らず、人間の判断も取り入れることが重要になります。

② AIによるバイアスの影響を受けるリスクがある

AIは大量のデータをもとに学習し、判断を下します。そのため、もし過去の採用データに偏りがあったり、採用基準が不明瞭であれば、AIの選考判断基準にも偏りが生じる可能性があります。たとえば、過去の採用実績が特定の性別や年齢層を優遇していた場合、AIもその偏った基準を反映してしまうことがあります。

そのため、バイアスを最小限に抑えるための対策や、AIが出すクオリティの定期的な見直しが重要になります。

③ プライバシーリスクが発生する可能性がある

採用活動では、履歴書、職歴など、多くの個人情報を取り扱います。万が一これらの情報が流出してしまうと、企業の信頼が失われるだけでなく、法的な問題にも発展する可能性があります。

とくにAIに伝えた情報が適切に保護されていない場合、情報漏洩のリスクが高まります。そのため、必要に応じてAIに学習させないようオプトアウト対策を実施したり、セキュリティの高い有料の法人向けサービスを利用することが必要です。

ダイレクトリクルーティングでAIをうまく活用するポイント

ダイレクトリクルーティングでAIを導入する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。

① 人間の判断と組み合わせる

AIは大量のデータをすばやく分析して候補者を絞り込むのが得意ですが、人間のようにその場その場で柔軟に判断することはできません。そのため、AIが行った選別結果をベースに、最終的な判断は採用担当者が行うことが大切です。

人間ならではの感覚や経験を活かし、面接時の印象や候補者の人柄、チームとの相性といった、AIが捉えきれない要素を見極めることで、より精度の高い採用が実現できます。

② スカウト文章はベースのみ活用する

AIはスカウト文章の自動生成にも活用できますが、完全にAIに頼るのは避けた方がよいでしょう。

AIが作成するスカウト文は、候補者に対して「会社の価値観」や「ポジションの魅力」といった一貫したメッセージを伝えるためのベースとして使用し、個別の候補者に合わせたパーソナライズを加えることが重要です。

その際には、人間ならではの言い回しを入れることで、候補者が「自分に向けられたメッセージだ」と感じ、興味を引き、返信率を高めるポイントとなります。

③ 適切なAIツールを選定し、自社の採用戦略に合わせる

AIツールにはさまざまな種類がありますが、自社の採用戦略やニーズに合ったものを選ぶことが重要です。

たとえば、候補者のスキル評価に特化したツールや、面接スケジュール調整に強いツールなど、導入するツールが目的に合っていなければ、効果的に活用することができません。自社の採用ターゲットや課題に対応できるツールを選ぶことで、採用活動がスムーズに進みます。

④ AIの知識を深めて最大限活用する

採用活動にAIを導入するには、AIがどのように学習し、どんなデータを基に意思決定を行うのかを理解することが大切です。たとえば、AIにプロンプトを与える際には、指示内容や立場を明確にし、具体的でわかりやすいな指示を出すことが重要です。

ダイレクトリクルーティングで活用できるプロンプト事例

ここでは、ダイレクトリクルーティングで活用できるプロンプト例を紹介します。候補者へのスカウト作成から競合分析など、さまざまな業務にAIを活用することができますが、適切な出力を得るためには「適切なプロンプトの設計」が重要です。

とくに以下の3点に注意した上で、プロンプトを入力しましょう。

• 「AIの立場」「依頼の目的」「検討の観点」をはっきりと伝える
• 箇条書きで簡潔に伝える
• 出力形式や文字数などの条件もあわせて伝える
• 避ける文言や引用の可否等も伝える

① 競合・自社分析

② スカウト文章作成

スカウト文章作成のプロンプトを、「エンジニア採用」「営業採用」「新卒採用」3つのケースに分けてご紹介します。

エンジニア採用の場合

営業採用の場合

新卒採用の場合

③ 選考中のメール文章作成

ダイレクトリクルーティングに特化したAIサービス

ここでは、ダイレクトリクルーティングに特化したAIサービスを2つご紹介します。

リクルタAI ダイレクト採用

「リクルタAI ダイレクト採用」は、株式会社Algomaticが提供するスカウト業務に特化したAIサービスで、採用候補者のピックからスカウト送付まで、AIがダイレクトリクルーティングに関わるすべての業務をサポートしてくれます。

このサービスの大きな特徴は、採用機会を逃すことなく、タイムリーに採用を実現できる点です。具体的には、人材要件とマッチした候補者を見つけておき、転職意欲が高まったタイミングでその候補者のキャリア志向に合わせたスカウトを送信してくれます。

大手企業をはじめ、スタートアップや中小企業にも幅広く導入されています。

スカウタブル

次にご紹介するのは、株式会社MAPが運営する「スカウタブル」です。求人サイトでの候補者検索やスカウト文面の作成など煩雑なダイレクトリクルーティング業務をAIがサポートしてくれます。

このサービスの特徴は、24時間365日体制で採用ポジションに最適な人材を自動で検索し、候補者の経歴を基にパーソナライズされたスカウト文面を作成する点です。

スカウタブルの全機能を2週間試せる無料トライアルもありますので、気になる方はまず試してみることをおすすめします。

まとめ

ダイレクトリクルーティングにAIを活用することで、スカウト文の作成や候補者の選定、スクリーニングなどが自動化され、採用業務の効率化やコストの削減が実現できます。一方で、AIに対する知識を深めたり、AIだけに依存せず、人間の判断を加えるといった工夫も必要になります。

「AI導入はうちにはまだ早いかな」と感じている企業も、まずは少しずつ取り入れ、徐々に活用範囲を広げていくことで、リソースが限られた状況でも十分に活用できる可能性があります。

今後ますます採用市場の激化が予想される中、時代に合わせた新しい手法を積極的に取り入れることが、採用成功のカギとなるでしょう。