SaaS企業の成長モデルT2D3とは?フェーズ、取り組み方まで詳細を解説

SaaS企業の一つの指標としてよく言われるT2D3とは、経常収益を1年毎に3倍、3倍、2倍、2倍、2倍のペースで上げていき、5年で72億円の売上を上げることを意味します。

ここ最近SaaSに取り組む日本企業が増えてきたこともあり、T2D3は以前より注目を集めています。そこで本記事では、T2D3の詳細や実際の道のりを、成功した企業の例とともに解説していきます。

SaaS企業の人事や経営者で、これから売上拡大を考えている方はぜひ参考にしてください。

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目次

SaaS企業が知るべき「T2D3」とは?

前述通りT2D3とは、5年で売上72億を達成するための「SaaS企業が波に乗って成長していることを数値化した指標」で、それぞれ1年毎に目標数値を小分けにしたものです。特に投資家たちもT2D3の成長曲線に注目しており、今後資金調達を行う上でも、具体的なT2D3を描けるかどうかは大きなカギを握ります。

事業を拡大を考えているSaaS企業はまずT2D3を流れ把握し、自社でどのように取り組めるかのシミュレーションをしてみることをおすすめします。

5年で売上を72倍に成長させる指標

T2D3はTriple, Triple, Double, Double, Doubleの略で、売上3倍を2年、売上2倍を3年連続で達成し、最終的に5年後の売上が72億円になることを意味します。

SaaS企業でよく使用される指標ですが、SaaSに限らず多くのスタートアップ企業が最初の目標数値として掲げています。

1年毎に達成する予算が明確なため、予算から逆算し人員の確保やマーケティング、営業戦略、人事戦略などを、具体的な数値をもとに計画できます。

T2D3の重要性

T2D3は会社の成長を可視化するうえで、重要な一つの指標とされています。やみくもに人員を増やし、営業力を上げていけば、たしかに一時的に売上は上がるかもしれませんが、継続的な成長をしていくことは難しいでしょう

具体的に今年何をすれば計画的に成長できるのかを社員全体で共有するうえでも、企業はT2D3を自社の数値に落とし込むことが重要です。

また資金調達を考ている場合は、投資家やベンチャーキャピタルがT2D3に沿った成長を重要視しているため、明確な計画を話せるようにしておく必要があります。投資する側に「今後期待できる企業である」「投資する価値がある」と思わせるためにも、「成長企業」としての一つの指標であるT2D3についての計画は明確にしておきましょう。

特にSaaSが注目を集めている今、投資家やベンチャーキャピタルは積極的にSaaS企業へ投資をしています。市場的にも投資を受けやすい状況ですが、加えてT2D3を確立させることでより大きな金額の融資を受けられる可能性が高まります。

T2D3におけるMRRの重要性

T2D3では年間の収益である「ARR(Annual Recurring Revenue)」に注目が集まりますが、月間収益を表す「MRR(Monthly Recurring Revenue)」も同じくらい重要です。1年という長いフェーズだけで物事を見るのではなく、12カ月で考えたときに、ARRが実現可能かどうかも合わせて気にかけていきましょう。

無理のないMRRの成長が、最終的に堅実的なARRの目標の達成に繋がりT2D3を実現させます。

T2D3実現までのフェーズ

T2D3を実現するためには、大きく分けて7つのフェーズがあります。プロダクトの確立から、1年毎に目標とする売上を上げていき、最終的に大きな成長を目指すモデルなので、ぜひ以下の詳細を参考にしてください。

PMFの確立

PMFとはProduct-Market Fitの略で、ターゲットや市場に合わせたプロダクトを開発し、顧客のニーズに応えられる状況を指します。

T2D3を実現するためには、大前提としてマーケットに適したプロダクトの開発が欠かせません。やみくもにプロダクトアウトでサービスをリリースしても、マーケットのニーズにフィットしていなければ、その後の成長は期待できません。SaaSを展開する企業はまず、自社でどのようなプロダクトを開発でき、どのような市場であればフィットするのかを理解したうえでPMFを確立していきましょう。

ARRを2億円にする

まず最初の年はARRを2億円にすることが目標です。前述の通り、ARRとはAnnual Recurring Revenue(年次経常収益)を意味し、年間で得られる定期的な収益を意味します。

最初のフェーズでは、創業者や経営層が自ら営業活動を行い、今後安定的な収益を見込める新規顧客の開拓に力を入れる必要があります。通常の場合サービスイン(ローンチ)してから1~2年ほどかかることが一般的です

創業時の顧客のリピート率は今後のT2D3にも関わってくるため、このフェーズでどれだけ多くの「継続が望める顧客」を獲得できるかが成長に大きく関わってきます。

ARRを6億円(3倍にする)

次の年はARRを3倍の6億円にすることがKPI(目標数値)です。

このフェーズでも、創業者や経営陣自らが商談のクロージングを行い、より営業の精度を高めていくのがT2D3の実現に効果的です。メンバーが増えるにつれて、商談の回数も多くなるこのフェーズでは、より受注確率を上げるための工夫を行い「取り逃がし」を減らすことが重要です。

別の方法として挙げられるのは、セールスリーダーを選任し、5~10名のセールスチームを確立する方法です。全員がメンバークラスでセールスをするのではなく、マネジメントを任せられる人材を立てることで、チームとしてより確度の高いセールスを行うことができます。

ただし、権限を別の社員に譲渡する際は、引き継ぎを慎重に行い経営層と現場で意見がずれないよう気をつけなければなりません。

ARRを18億円にする(3倍にする)

T2D3の次のフェーズは、ARRを18億円まで拡大していきます。すでに新規開拓である程度の顧客数は確保できている前提で、ここからは契約更新と紹介による顧客開拓が重要視されます。

ARR18億円を目指すフェーズでは、すでに企業は10名~20名規模のセールスチームができていると予想されます。加えてカスタマーサクセスにも力を入れ、解約率の抑止にも努める必要があります。SaaSサービスは多くの企業、業種にも横展開ができるため、顧客の紹介からリファラル営業を推進してもよいでしょう。

新規開拓の方法をテレアポやDMなどから紹介に切り替えることで、より確度の高い商談が増え、さらなる成長へと繋がります。ただ既存顧客のフォローをしながら、さらなる顧客の開拓が始まるこのフェーズは、T2D3においても重要な局面の一つでもあります。

ARRを36倍にする(2倍にする)

ここからはT2D3の「D3」、つまり3年かけて売上を2倍にしていく必要があります。

すでに18億円のARRがあれば、セールスチームが3~4チーム、マネージャーも数名の規模になっているでしょう。海外展開を目指しているSaaSの場合、このフェーズでグローバル販売にも注力し始めるケースが多いです。

国内企業への導入実績が増えてくると、次は海外市場に挑戦できるフェーズです。いきなり全世界に発信するのではなく、アジアや北米など、まずはエリアを絞ってプロダクトを展開してくことが効果的です。

まずは一つのエリアでの拡販ができれば、海外展開の一つのモデルが出来上がります。あとはそのモデルを応用し、各エリアに適した手法でプロダクトを拡販していくとよいでしょう。

ARRを72億円にする(2倍にする)

ARRを72億円にするためには、社内外のオペレーションにまつわる課題の解決が必要です。マネージャーが複数名、チームも複数と組織が大きくなると、社内でのオペレーションにズレや不都合が発生してきます。企業によっては自社のセールスチームだけではなく、代理店との契約が増えてくるなど、営業チャネルが増えていくケースも多いです。

T2D3ではこのフェーズで、いかに出来上がったチームを維持し、さらなる生産性の向上を実現できるかが大きな鍵を握ります。代理店などのパートナーを探す際は、販売インセンティブを設定するなど、パートナーに「自社のプロダクトを売りたい」と思ってもらえるような関係構築や仕組みづくりも重要です。

ARRを144億円にする(2倍にする)

T2D3最後のフェーズは、ARR144億円です。最後のフェーズではユニコーン企業になる、もしくはIPO(上場)の可能性もでてきます。

このフェーズはSaaSで重要視されている「40%ルール(売上成長率+FCFマージンが40%を超えること)」を新たな指標に設定することがおすすめです。

T2D3を成功させるための道のり

T2D3を理解した次に必要なことは、自社で実際にどのような取り組みができるかを考えることです。SaaS企業の場合、独自性の高いプロダクトを作りやすいものの、その後の運用や取り組みが今後T2D3を実現できるかどうかに直結します。

カスタマーサクセスの確立

まず最初にT2D3を成功させるために必要なことは、カスタマーサクセスの確立です。

特にARRを18億円にするフェーズでは、やみくもに新規開拓に没頭するだけではなく、既存顧客からのリピート率も注視する必要があります。

営業メンバーだけを集めるのではなく、クライアントのサポートを行うカスタマーサクセスを採用することが重要です。既存顧客の満足度はプロダクトの価値向上にも繋がったり、経営者同士のつながりから紹介案件に繋がる可能性もあります。

クライアントの満足度がゆくゆく営業の受注率やプロダクトの魅力にも繋がってくるため、SaaS企業はひたすら顧客を開拓するのではなくリピート率向上にも力を入れなければなりません。

効果的・継続的なマーケティング

次にT2D3を成功させるために重要なことは、効果的・継続的なマーケティングです。

はじめのうちは数をこなし、テレアポやDM、飛び込みなどである程度の顧客を開拓できるかもしれません。しかし、売上を2倍、3倍と上げていくためには、効率の良さも求められてきます。

顧客のニーズや他のSaaS企業の動向や市場の動きを把握することもT2D3を実現するために必要な要素と言えるでしょう。

まずは自社プロダクトがどのように市場にフィットしているのか、潜在顧客は何を求めているのかなど、マーケティングの土台を完成させましょう。その後改良を続け、マーケティングを継続的に行うことがT2D3の実現へと繋がります。

日本でT2D3を成功せたSaaS企業3選

日本でT2D3を達成しているSaaS企業を、3つ紹介していきます。具体的な取り組みや成長までの軌跡を詳しく記載しているので、今後T2D3を目指している企業の方は参考にしてみてください。

株式会社SmartHR

企業名株式会社SmartHR
設立2013年1月23日
資本金9990万円

人事労務ソフト「SmartHR」の開発、販売を行っており、SaaS企業の代表とも言える株式会社SmartHRは、順調にARRを伸ばしていき、現在100億円を突破しています。ARR1億円からスタートし、順調に社員数も拡大しました。50名から100名まで成長した段階で、社内の動きが見えづらいとの意見も出たようです。

そこで同社はオフサイトミーティングを行い、チームごとの共有に力を入れ、できる限り社内で何が起きているのかを見えるようにしたとのことです。その後トップダウンにならないよう、組織計画を立てメンバーが納得する環境をつくることで、右肩上がりで成長を継続していきました。

株式会社Sales Marker

企業名株式会社Sales Marker
設立2021年7月29日
資本金1億円

顧客の潜在ニーズを明らかにし、営業効率を格段に上げるSaaS、「Sales Marker」の開発を行う株式会社Sales Markerも、T2D3を成功させている企業の一つです。Sales Markerマーケットインから2年弱でARR12億円を達成し、急成長を遂げています。代表の小笠原氏は経営のみならず、各種SNSやYouTubeを活用した認知度拡大にも力を入れ、独自のチャネルを開拓していることも特徴です。

また、日本ではまだ馴染みがないインテントセールスですが、海外ではすでに主流となりつつあるモデルです。このモデルにいち早く着目し、国内でマーケットを切り開いて行くことで、急成長を遂げていることはSales Markerの特徴と言えるでしょう。

Sansan株式会社

企業名Sansan株式会社
設立2007年6月11日
資本金67億48百万円

ansan株式会社は名刺管理を行うSaaS「sansan」の開発を行っているIT企業です。sansanは2023年5月時点でARR37億9800万円を突破しています。sansanのnoteには、過去のARRの推移が掲載されています。

【sansanのARR推移】

  • 2021年2月:ARR1.05億円
  • 2021年8月:ARR3.91億円
  • 2022年2月:ARR10.86億円
  • 2022年11月:ARR21.24億円
  • 2023年5月:ARR37.98億円

上記はsansanが展開する、請求書をオンラインで管理できるサービス「Bill one」のARRです。時系列でみていくと、順調にARRを伸ばしていることがわかります。

本来のT2D3であれば、36億円到達までに4年かかるとされていますが、sansanではこの指標をわずか2年強で達成しています。働き方の多様化が進む現代において、フリーランスや業務委託契約を行う企業も増えているため、請求書管理のSaaSはマーケットにも適していると言えるでしょう。

SaaS企業の成長モデルとなるT2D3

順調な成長を実現したSaaS企業が国内にも多いことから、成長の指標としても注目を集めるT2D3は、今後企業を拡大する際には無視できない存在です。特にスタートアップ企業が今後のビジョンを決めていくうえで、売上など経営面を考える際は一度T2D3を参考に計画を立てていくとよいでしょう。

今後事業の拡大を考えている経営者の方は、ぜひこの記事を参考に大きく事業を成長させていってください。

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この記事の監修者

井上愛海のアバター 井上愛海 株式会社ミギナナメウエ 執行役員

2022年9月東京大学大学院在籍中に株式会社ミギナナメウエの執行役員に就任。
即戦力RPO事業の事業部長を担い、これまでに150社以上の採用支援に携わる。
【以下実績】
・シリーズBのスタートアップ企業の20名のエンジニア組織を40名まで拡大
・CTO、PM、メンバークラスを採用しゼロからのエンジニア組織を立ち上げに成功

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