エンジニアの評価制度を策定することは、人事担当者にとって難しい課題の一つです。
エンジニアの評価は複雑で、評価基準やポイントを明確かつ公平にしないと採用に影響が出るのはもちろん、採用後の早期離職にもつながってしまいます。ただ、適切な評価基準さえ確立できれば、社内のエンジニアの満足度はかなり安定します。
そこで本記事では、多くの人事が頭を悩ませるエンジニアの評価制度に関する課題、制度を作成する方法、および注意すべきポイントについてまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
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エンジニアの評価制度の基本知識
まず、エンジニアの評価制度は「能力評価」「業績評価」「態度評価」という3つの評価基準を設けます。
【能力評価】
- プログラミングスキルや資格保有状況
- プログラミング言語の習熟度
- 技術知識の豊富さ業務遂行の迅速さや正確さ
【業績評価】
- 成果物の質や量
- 数値的な目標達成度
- 取り組んだ案件数
- 目標達成度
- 納期厳守の割合
【態度評価】
- チームとの協調性、誠実さ
- 新しいスキルの習得意欲や業務への積極性
- ビジョンの体現度合い
評価制度はエンジニアのモチベーションやエンゲージメント(組織への信頼や貢献意欲などの満足度)を向上させる上で極めて重要です。仕事の成果や態度が評価されることで、エンジニアはさらなる成果を目指す意欲を高める可能性があり、モチベーション向上につながります。
さらに、エンジニアが適切に評価されると、自身の努力が公平に認められたと感じ、企業への忠誠心が高まるでしょう。
また、評価制度があることで、不公平な扱いを受けているなどの誤解が生まれません。全員が納得するような評価制度作りは難しいですが、徐々にブラッシュアップしながら評価制度を作成しましょう。
エンジニアの評価制度に対する想い
実際、AIでエンジニアをマッチングする採用媒体「Findy」を運営するファインディ株式会社 が発表した調査によるとエンジニアが自身の評価に納得している割合は全体の約51%で、残りの約半数は「どちらでもない」または納得していないという結果になっています。
また、自身がエンジニアを評価する立場であるリーダー・マネージャーである人よりも評価を受ける”だけ”の人はさらに納得度が低下しているようです。
エンジニアの需要過多が加速している今、エンジニアは採用市場に出れば引く手あまたの状態です。評価制度に納得できずに転職を考えてしまう人も少なくないでしょう。人事としては、そんなもったいないことはありません。
まだ安定した評価制度がない企業はもちろん、すでに評価制度がある企業も、ぜひ一度見直してみてください。
エンジニア評価制度でよくある課題
エンジニアの評価制度で企業が抱える課題について解説します。事前に課題を知っておくことで、スムーズに評価制度を作成することができます。
評価のタイミングが難しい
エンジニアの業務は、短期間で結果を出せないものが多いことから、評価のタイミングがかなり難しいです。
例えば、年単位プロジェクトでは、成果をすぐに出すことが難しいので、半年や3ヶ月ごとに行われる評価面談ではそのたった数ヶ月の動きや成果どのように評価すべきか悩むことが多いと思います。
エンジニアからすると、目標のために動き続けていても数値的な成果がないという理由だけで評価がされないと、モチベーションが低下し転職意欲が出てくる可能性もあります。そこで、技術面だけではなく、仲間との協調性や資格の習得度や組織への貢献度など、多方面で評価軸を作成することで、数値的な成果が出ていない段階でも適切に評価できるようになります。
能力値やスキルが測りづらい
エンジニアを適切に評価するためには、評価者にも一定の知識が求められます。
営業などのビジネス職とは違ってエンジニアの技術やスキルはITの専門知識が必要になります。なので、元エンジニアやITプロダクトの開発に携わったような人ではないと適切に評価するのがなかなか難しいでしょう。CTOやVPoEなど、マネージャークラスのメンバーがいる場合は、ぜひ協力してもらってください。
一方で、「この言語でどんなサービスが作れるか」や「現在の開発部門の課題」などといった基礎的な部分や課題に対してどのような解決策が必要なのかなど、事業に関わる部分は人事も知っておく必要があります。
適切な評価制度を作成するには、まず基礎知識を知り、そこから応用を効かせる必要があります。一朝一夕で身につく知識ではないので、早いうちに勉強に取り掛かるといいでしょう。
客先常駐などで直接動きを確認できない
SIerやSES企業のように、クライアントの職場に常駐するタイプのエンジニアの場合、働きぶりを直接確認できないため、適切な評価が難しくなります。
同様に、外部のエンジニアを業務委託している場合も、評価が困難な場合があります。
勤務態度や積極性などは、常駐先に協力してもらい評価できるケースもありますが、常駐先の企業も自社の社員ではないため、評価に対して積極的に協力してもらえるとは限りませんし、その人との関係性などによって評価がブレてしまう可能性があるので必ず信用できる評価ではありません。
また、エンジニアも直接自分を見てもらっていないのに評価されてしまうと、「本当はこんなこともしているのに…」と不満を抱えてしまう可能性があります。
常駐型のエンジニアは、自社で動いている社員よりも不満を抱えやすいので色々な工夫をしながら適切に評価できるようにしましょう。
エンジニア評価基準6選
では早速、エンジニアの評価において必要な評価基準を6項目に分けてご紹介します。
①技術的な能力値や資格状況
エンジニアのスキルや知識の習得度は、評価の重要な要素のひとつです。エンジニアにおいて特に重要なのは、「何ができるか」ではなく「何を作れるか」ということです。
例えば、1つのプロジェクトにおいては「デザイン設計→コーディング→運用/保守」という一連の流れが存在し、これら全ての業務を遂行できるエンジニアは、ゼロからサービスを開発することができます。
このようなエンジニアはプロダクト開発に深い理解があり、業務遂行能力も高い傾向にあります。
さらに、スキルや知識の有無は、目標の達成やそのためのプロセスにも密接に関連しています。したがって、目標達成に向けた基準を評価する際にも、スキルや知識の習得度を考慮することが重要です。
②数値的な成果
エンジニアが関与したプロジェクトの成果を数値ベースで評価しましょう。
プロジェクトの途中であっても、初期と比べてどのくらい良くなっているのか、経過として良好な数値であるのかなど、”最終目標の数値”以外でも測ることができます。
システムの仕様上、一時的な数値の低下が避けられない場合もあるので、そうった「どうしても数値的な評価/判断ができない」という場合を除いて、基本的には何かしらの数値的な目標(KPIなど)の達成具合や成果を見ることをおすすめします。
目標の達成度
次に、事前に定めておいた目標に対しての達成度を評価します。
ひとまとめに「目標の達成」と言っても、自身の役割や業務内容を正しく理解し、適切に業務を進行していく能力が求められるため、評価基準としてはとても重要です。
ただ、先述した項目のように目標の達成度を「数値」だけで判断してはいけません。特にベンチャーやスタートアップ企業の場合はプロジェクトの進め方が変わることもあるので、目標の達成度と合わせて評価する期間における動きとその動きをした背景・理由などを加味するようにしましょう。
問題解決能力
エンジニアの問題解決能力もまた、評価の重要なポイントです。
業務にはさまざまなトラブルが生じますが、特にエンジニアがどのように問題に取り組んだか、そしてそれをどのように解決したかを評価することが重要です。また、問題が発生した際に迅速に対応できたかといった、スピード感も重要になります。
問題解決能力は、クライアントとの信頼関係にも値する重要な部分なので、しっかり評価制度に組み込ませましょう。
マネジメント/ディレクションスキル
業務を効率的に遂行させるためには、マネジメント/ディレクションスキルが重要になります。
どこの組織も規模が増えれば、マネージャーが必要になります。マネージャーはプロジェクトを円滑に回すために、メンバーや案件管理をしたり、時には教育に携わることもあります。
マネージャーではなくても、業務委託を抱えるメンバーや他部署との関わりが多い人はディレクションスキルも評価項目に入れることをお勧めします。
特にタスクマネジメントスキルは、どのエンジニアにも必要不可欠です。
プロジェクトをスムーズに進行し、膨大な量のタスクを効果的に管理できるような人は「マネジメント人材」として別軸の評価をするようにしましょう。
自己学習能力
エンジニアは常に最新の技術を習得する必要がありますので、自己学習能力が不可欠です。
上司や企業からの指導がなくても、自ら新しい技術を学び、取り入れる能力とモチベーションが重要です。この自己学習能力は、エンジニアの情意評価にも関連しており、特に新人エンジニアの評価に役立ちます。
資格取得などは、自己学習能力の評価をつけやすいので、会社の福利厚生の一つとして資格手当を支給すると、モチベーションアップにつながる可能性があります。
エンジニアの評価制度の作成方法
それでは、上記の課題を踏まえて、エンジニアの評価制度の作成方法をご紹介します。
評価制度を作成する目的を明確にする
まずは評価の目的を明確に設定します。
評価制度の導入は、エンジニアのモチベーションや仕事に対する意欲向上、離職率の低下などを理由に行われます。また、評価制度がないと、上司の匙加減で能力の判断を行なってしまうので、知らないうちにメンバーの不満が溜まってしまいます。
一方で、正確な評価設けると、各エンジニアの能力を公平に判断し、さらなるモチベーションアップに繋げることができます。また、成果が出にくいエンジニアに対しては、適切な教育プログラムを提供することで、組織全体の成長を促進することも目的の一つと考えられます。
評価目的を設計する際には、経営層や人事とエンジニアの間で期待する点が異なることがあるため、双方が納得いくまで何度も意見を擦り合わせていくことが重要です。
評価基準の作成
評価基準は、「能力評価」「業績評価」「情意評価」の3つから構築されます。
先述の通り、能力評価には、プログラミングスキルや保有資格、扱えるプログラミング言語などが該当しますが、例えば、プログラミングに関する基礎能力と応用能力の2つに分けて評価基準を設定することもできるでしょう。
評価基準を策定する際は、自社の企業規模と似ている他社の評価制度なども参考にすると、スムーズに作成まで持っていくことができます。
エンジニアの評価制度で注意するポイントを解説します。
現場の意見をヒアリングして作成する
エンジニアの評価制度は、現場の声を取り入れて作成することが効果的です。
先述のように、専門職であるエンジニアの評価は、エンジニア経験のない人事担当者が行うのは難しい場合があります。
エンジニアの評価制度で注意するポイント
エンジニア同士であれば、お互いの技術や能力を正しく評価できると考えられます。そのため、対象エンジニアの上司や部下、後輩、同僚などから、360度評価を行うことで、評価の公平性を確保できるでしょう。
最初から完璧な評価制度を目指さない
エンジニアの評価制度を設計する際には、あまり厳密に固定しないように注意しましょう。
エンジニアの場合、他の職種と比べてクリエイティビティが求められる傾向があります。優れたエンジニアは、問題解決においてさまざまなアプローチを試みます。時には設計を見直すこともあり、コーディング中に試行錯誤を繰り返すことで、優れたプロダクトが生まれることもあります。
しかし、評価制度をあまり硬直化させてしまうと、エンジニアは制度に縛られ、創造性のある問題解決が阻害される恐れがあります。
エンジニアの能力を最大限に引き出せる柔軟な評価制度を構築することが重要です。
スキルや技術の積極的な共有も評価する
エンジニアが自らのスキルや知識を積極的に共有することは、評価の対象とすべきです。
特に、自社のエンジニア全体の技術力向上を目指す場合、エンジニアが自身のスキルや知識を共有することで、他のメンバーの成長を促し、組織全体の力を高めることが期待されます。
エンジニアのスキル共有を評価の一環とする場合、例えば「定期的な勉強会の開催」などを明確に基準として設けることで、客観的な評価が可能となります。
「エンジニア」とひとくくりにしない
各職種に合わせて、評価項目や達成目標を設定します。
たとえば、アプリを開発するエンジニアならば、開発能力やユーザーの満足度、集客性などを評価の対象とします。社内システムの担当者ならば、システムの使いやすさや適切な運用などが重視されるでしょう。一方、マネージャークラスでは、マネジメント能力やコミュニケーション能力が主要な評価項目となります。
それぞれの職種に必要な評価項目を明確にし、エンジニア自身が行動を通じて達成できる目標を設定することが重要です。
定期的に評価制度を見直す
エンジニアの評価制度や個々の社員の評価基準は、定期的な見直しが重要です。
事業の成長段階や案件の性質などに応じて、どのような要素を重視すべきかが変化するからです。
さらに、個々のエンジニアの成長に応じて、評価すべき項目や基準も変わってきます。定期的な見直しと柔軟な修正を通じて、評価制度をより正確に精度高く運用できるでしょう。
エンジニアの評価シートの例
評価はS・A・B・C・Dなどの段階を設け、例えばSは10点など、それぞれに配点すると評価を数値で出しやすくなります。
【能力値・スキル】
・トラブルが生じた際に速やかに上司に報告できたか
・担当分野に関する知識を持っているか
・プロジェクト達成に向けた情報分析や対応をしたか
【業務の進行状況や達成度合い】
・ミスなくプロジェクトを完遂できたか
・目標を達成できたか
・取引先との契約事項を守って取り組んだか
【組織への貢献度】
・チームメンバーと連携して業務進行できたか
・責任感を持って仕事に取り組んでいたか
・上司の指示に従って業務を行なっていたか
上記は例に過ぎないので、自社が大切にしている価値観なども評価基準に含めるといいでしょう。
まとめ
現代の経済活動では、ITが進化し、エンジニアの存在がますます重要視されています。
エンジニアを適切に評価するには、ITに関する専門知識を最低限持っていることが求めらたり、彼らの立場に立って評価制度を作ることが重要です。
もし、適切な評価制度を作成していないと、離職を促してしまう可能性があるので、組織が大きくなる前にエンジニア評価制度は完成させましょう。
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