採用ペルソナとは?設計するための7ステップと職種別の具体例

採用ペルソナの作成・設計は、採用活動を戦略的かつ効率的に実施するうえで必要不可欠なものです。

しかし、採用ペルソナは人によって考え方に幅があり「そもそも採用ペルソナとは?」という認識が浅く、「単語も大体の意味も理解しているけど、詳しいことはよくわからない」という方が結構いるのではないかなと思っています。

また、採用ペルソナをしっかりと設計しようとすると、手探りでは難しい部分も多く、仮に作成できたとしても「本当にこれで大丈夫なのかな?」と不安に感じることも多いでしょう。

そこで本記事では、採用ペルソナを設計するためのフローや具体例、失敗しないためのポイントなどをご紹介します。

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目次

採用ペルソナとは?

採用ペルソナとは、企業が理想とするターゲット像をもとに作り上げた具体的な人物像を指します。例えば、「24歳で社会人2年目。前職では営業職に従事しており、やりがいはあるが評価制度が腑に落ちず、自分の成果が適切に反映される環境で働きたいと思っている」などです。

この採用ペルソナは、求人広告の作成、面接プロセスの設計、候補者とのコミュニケーション戦略など、採用活動のさまざまな場面で活用することができ、より筋の通った質の良い採用活動に繋がります。

採用ペルソナと採用ターゲットの違い

採用ペルソナと採用ターゲットは、採用活動において「理想的な候補者とは?」を決める際に用いられるもので、同じ意味として混同されがちですが、厳密には下記のような違いがあります。

採用ターゲット企業が求める候補者のカテゴリーやグループ。業界経験、職務経験の年数、技術スキル、学歴など、広い条件で絞り込んだ対象。
採用ペルソナ採用ターゲットをさらに詳細に分析し、働き方の好み、価値観、キャリアの動機、生活スタイルまで含めた、架空の理想的な候補者像。

つまり、採用ターゲットが「どのような条件の人材を探しているか」を定義するのに対し、採用ペルソナは「その条件の中で、さらにどのような人格/趣向性を持った人を理想とするか」を定義しているのです。

採用ターゲットや採用ペルソナと近い単語として「採用要件」があります。採用要件と採用ターゲット/採用ペルソナの違いは、採用ターゲット/採用ペルソナが「理想の人物像そのもの」を指すのに対して採用要件は「絞り込みの条件」を指す言葉であるということです。

採用要件については、下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

採用ペルソナを作成する重要性

採用ペルソナの作成は、媒体選定や予算の調整などに比べると「採用における重要性」や「どのくらい採用成功率に影響があるのか」がパッとわかるものではないので雑にこなしたり、そもそもこの工程をスキップしてしまうケースもあります。

しかし、採用ペルソナは数値に直結はしないもののその後の媒体選定や運用、候補者とのやりとり、選考などの全ての工程において「これは採用ターゲットにとってどちらの判断が合っているのか」を判断する軸になりますし、その判断の精度を上げることができるのです。

採用ペルソナを設計するメリット

続いては、採用ペルソナを設計するメリットを下記の3つに分けて解説します。

①採用活動全体の質を上げることができる

採用ペルソナを設計するメリットの1つ目が、採用活動全体の質を上げられることです。

採用ペルソナは、戦略設計、採用採用媒体選択、求人票の文章作成、日程調整、採用広報など採用活動のほぼ全ての場面に活用でき、採用全体の数値を底上げすることができます。

②担当者による評価基準のバラつきを減らすことができる

採用ペルソナを設計するメリットの2つ目は、担当者による評価基準のバラつきを減らせることです。

多くの企業では、書類選考から最終面接までに、複数の担当者が選考に携わることになるでしょう。その場合、どうしても面接官によって選考基準にバラつきが出てしまいます。しかし、採用ペルソナを設定して、「どのような人材を求めているのか」を社内全体で明確にすることで、このバラつきを最小限にすることができます。

採用ペルソナを設定して選考基準を統一化することで、採用業務の負担が減少することはもちろん、本当に自社が求めている人材を獲得できる可能性も向上するのです。

③採用後の早期離職を防ぐ

新人・若手の離職率に関する実態調査

また、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが発表した「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の発表によると、3年以内に自己都合で退社した人の退職理由の上位は「労働環境が合わない」「希望する働き方ができない」など、入社前のすり合わせができていれば避けられたような項目が多いです。

採用ペルソナを事前に設定することで、候補者と企業の期待値を最初からすり合わせやすくなり、「思っていた仕事内容と違った」「会社の雰囲気に合わない」といった、採用後のミスマッチを大幅に減らすことができるようになります。

実際に、これまで私が見てきた企業様の中にも、採用ペルソナを設定していないことが原因で、和気藹々とした社風とは少しズレた「物静かで黙々と作業をこなすことが好きな人」を採用してしまった、というような「スキルはマッチしているものの人間性が合わない」といったケースもありました。

つまりは、採用活動を行う際に採用ペルソナをきちんと作り、その人物像をもとに採用活動を行なっていれば採用後のミスマッチを減らすことができ、早期離職も防ぐことができるのです

採用ペルソナを設計するための7ステップ

続いて、採用ペルソナを設計するためにおすすめのステップを5つに分けて解説します。

①「採用する目的」を明確にする

採用ペルソナを設計する際は「そもそもどういう背景で採用を行うのか」を明確にしなければいけません。

今後の組織拡大においての長期的な人材(正社員)を採用したいのか、もしくはナレッジ不足や一時的なリソース追加のための採用なのかなど、採用を行う背景は企業によって様々だと思います。

ずっと採用に携わっている方からすると、改めて確認するようなことではないかもしれませんがまずは一度「採用活動をする根本的な背景」を立ち返ってメモに書き起こしたりすることをおすすめします。

②自社の情報を整理する

次に、自社の情報を整理しましょう

ここで整理していただきたいのは、採用において必要となる下記5つの項目です。

  • 自社サービスの競合優位性
  • 自社の認知度
  • 年収レンジ
  • 採用ポジションの採用難易度
  • 訴求として打ち出せるポイント

それぞれの項目に一問一答で答えるのではなく、できる限り細かく洗い出して自社に対しての認識を改めて深めるようにしましょう。

このステップを踏むことで、この後のステップでより候補者に刺さる訴求を考えられたり、”より賢い採用活動”を行えるようになります。

③求める人材の特徴を定量と定性の2軸で書きだす

次に、求める人材の特徴を定量、定性両方で詳細に書き出しましょう。

定量的な情報とは、年齢、職歴の年数、保有資格、スキルなど、数値で測定可能な特徴を指します。これらの情報は、候補者の基本的な能力や経験を把握するための重要な指標となります。

一方、定性的な情報とは、価値観、仕事に対する情熱、キャリアビジョンなど、数値化できない深層的な特徴を指します。これらの情報は、候補者が企業文化にどの程度フィットするか、どのような働きが期待できるかを理解するために必要不可欠です。

④「MUST」「WANT」「NEGATIVE」条件に振り分ける

求める人材の特徴を書き出せたら、その条件を「MUST」条件と「WANT」条件に振り分けます。

「MUST」条件とは、「企業が採用するうえで絶対に必要な条件」を指します。「MUST」条件は、働くうえで不可欠なスキル、経験、資格などの具体的な要件を指し、候補者が選考を通過するための最低限の基準となります。

一方の「WANT」条件は、「あれば理想的だが必須ではない条件」を指します。「WANT」条件は、特定の専門知識、柔軟な働き方に対する適応性など、採用ペルソナとしての理想像により近い候補者の特性や能力を表します。

この振り分け作業は、「候補者が自社の基本的な要件を満たしており、さらに望ましい特性を持っているか」というのを効率的に判断するために必要なうえ、面接などで関わる自社のメンバーとの間で採用基準を揃えるという意味でも非常に重要です。

「MUST」「WANT」条件に振り分けた後は、「NEGATIVE」条件の洗い出しを行います。

「NEGATIVE」条件とは、企業文化に合わない行動特性、価値観の不一致、仕事へのアプローチ方法など、「MUST」「WANT」条件を満たしていても採用すべきではない、自社にとって望ましくない候補者の特徴を指します。

この「NEGATIVE」条件は、採用後のミスマッチを未然に防ぎ、長期的に企業と従業員双方の満足度を高めるためにも重要です。

⑤条件を整理してペルソナを設計する

諸々の条件を設定できたら、いよいよペルソナを作成します

ペルソナの設計では、候補者の職歴だけでなく、その人が仕事に求めるもの、休みの日の過ごし方など、幅広い側面を想定します。初めて採用ペルソナを設定する方にとっては、「こんなことまで想定するの?」と思うほど、詳細に特徴を想定します。

ペルソナを設計するとはいっても物理的に何かを作り上げるわけではありませんので、今までに洗い出した情報を整理し直して「この条件が当てはまるのはどんな人物か」を整理できれば大丈夫です。

社内で確認し、すり合わせを行う

ある程度のペルソナ像が出来上がったら、社内の他のメンバーや経営陣に確認し、フィードバックをもらいましょう

一人、もしくは人事部だけで決めたペルソナ像では現場が本当に欲しいと思う人材と乖離があったり、経営陣の考えとイメージのズレが発生する可能性があります。

「確実にこのペルソナは理想のターゲット像だ!」という自信があっても、念のため確認するようにしましょう。ここで確認を怠ってしまうと、実際に採用活動に活かそうと思った時にイマイチ機能しなくなってこれまでの工数が無駄になってしまいます。

⑦定期的に見直しながら採用活動を進める

ペルソナを設定して採用活動を開始した後も、定期的にペルソナの見直しは必要です。なぜなら、市場の動向、技術の進化、世代の変化など、外部環境は常に変動しており、それに伴い候補者のニーズや価値観も変化するからです。

実際に、過去に設計したペルソナを何年も使いまわしてしまい、結果的に採用効率が悪化し、入社してくる人材の質も不安定になっていった企業様もいらっしゃいました。

そのため、採用結果の分析や入社した社員のフィードバック、業界内のトレンドや競合他社の動向などを積極的に収集し、定期的に採用ペルソナを見直すことは不可欠なのです。

採用ペルソナをより明確にするためのポイント

続いて、採用ペルソナをより明確にするためのポイントを2つ解説します。

ポイント①:自社の特徴を客観的に把握する

採用ペルソナをより明確にするためのポイントの1つ目は、自社の特徴を客観的に把握することです。

自社の強みや文化、どんなところに働きがいがあるのか、職場の雰囲気などを正確に把握することで、「自社に合う人材」のイメージが鮮明になります。

例えば、「役職関係なく、社員同士で意見を出し合うことで成長を続けてきた企業」であれば、「黙々と作業をこなす職人気質な人材」よりも、「積極的にコミュニケーションを取って、たくさんの人を巻き込んで仕事ができる人材」の方が適しています。

そのためには、従業員や退職者のフィードバック、業界内での自社の立ち位置など、客観的かつ多角的に情報を収集する必要があります。

ポイント②:自社で活躍している社員の特徴を言語化する

採用ペルソナをより明確にするためのポイントの2つ目は、自社で活躍している社員の特徴を言語化することです。

ほとんどの場合、「自社で活躍している人材」と「自社が求める人材」はイコールです。そのため、自社で活躍している人材がどのような価値を生み出しているか、チームや組織全体にどのように貢献しているかを言語化することは、適切な採用ペルソナの設定に役立ちます。

採用ペルソナの具体的な設計例

では、実際に採用ペルソナの具体例をご紹介します。

性別男性
家族構成独身・一人暮らし
職歴新卒入社した会社で営業職を3年経験
年齢25歳
学歴明治大学卒
居住地東京都 目黒区
現在の収入400万円
性格・志向性・価値観物事に積極的に取り組むことができ、周囲の人々とコミュニケーションを取りながら仕事を進めることを好む。ただし、プライベートと仕事の線引きはしっかりしたいタイプ。
長所・短所長所:コミュニケーション能力が高い、短所:合理的に物事を考えすぎる
趣味スポーツ観戦、サウナ
志望する業界・職種人材業界・営業職
現在の仕事で抱えている悩み自分の出した成果に見合った報酬を受け取れていない
企業選びで重視するポイントさまざまなことにチャレンジできる環境、周囲の人間とコミュニケーションを取りながら仕事を進められる環境

このように、項目に対して詳細に内容を書き出していくことで、自社の求めるペルソナ像が明確になっていくのです。

採用ペルソナの設計でよくある失敗例

続いては、採用ペルソナの設計でよくある失敗例について解説します。

例①:ペルソナを細かく設定しすぎている

理想の候補者像を追求するあまり、詳細な特性や条件を多数盛り込んでしまうことはよくあることです。しかし、詳細な特性や条件を多数盛り込むことで、現実に存在しない、あるいは非常に稀有なペルソナができあがってしまうことがあります。

ペルソナを過度に細分化しすぎると、求人広告や採用メッセージが非常に狭いターゲットにしか響かなくなり、本来マッチするはずだった候補者が「この求人は、自分とは関連がない」と感じ、応募を見送る可能性があります。

このような状況は、採用活動の効率を低下させ、結果的に優秀な人材を獲得するチャンスを逃すこととなるのです。

例②:ペルソナが採用プロジェクトのメンバーに共有されていなかった

ペルソナが採用活動に携わる社員全員に共有されていないと、正直採用活動においてあまり意味がありません。

社員間でのペルソナ像にズレがあると、求人広告のメッセージ、面接時の評価基準、候補者とのコミュニケーションなど、採用プロセスの各段階でターゲットとは異なる候補者が選考を通過する可能性があります。

それは結果的に採用活動の効果を低下させ、理想の候補者とのミスマッチが発生しやすくなるだけでなく、候補者に対しても「一貫性のない企業」というイメージを持たれてしまう恐れがあります。

例③:現状の採用市場にマッチしていない過去のペルソナを使い続けてしまった

労働市場は絶えず変化しており、新しい世代の労働者が持つ価値観、求める職場環境、キャリアに対する期待などは時代と共に進化します。加えて、技術の進歩や社会経済的な変化も、候補者の傾向やニーズに影響を及ぼします。

そのため、過去に作成されたペルソナを更新せずに使用し続けることは、採用活動の根本が現在の市場と乖離することとなり、理想的な候補者の獲得機会を逃す原因となります。

このような状況では、仮に求人広告にお金を出したとしても、期待した成果を得られない可能性が高まります。

まとめ:採用ペルソナを設定して採用活動を成功させよう

今回は、採用ペルソナについて解説しました。

採用ペルソナの設計と活用は、企業が理想的な候補者を採用するための重要な戦略です

採用ペルソナの設計に課題を抱えている企業の担当者様は、本記事を参考にして、ぜひ貴社に合った適切な採用ペルソナを設計してみてください。

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この記事の監修者

井上愛海のアバター 井上愛海 株式会社ミギナナメウエ 執行役員

2022年9月東京大学大学院在籍中に株式会社ミギナナメウエの執行役員に就任。
即戦力RPO事業の事業部長を担い、これまでに150社以上の採用支援に携わる。
【以下実績】
・シリーズBのスタートアップ企業の20名のエンジニア組織を40名まで拡大
・CTO、PM、メンバークラスを採用しゼロからのエンジニア組織を立ち上げに成功

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