採用戦略とは?具体的な立て方と、フレームワークを紹介

深刻な人手不足が続き、多くの企業が人材確保の難しさを感じている昨今。採用手法の変更や新しい媒体の導入など、試行錯誤されている企業も多いのではないでしょうか。

しかし、企業の安定した成長のためには、部分的な改善だけでなく本質的な視点で採用戦略を見直す必要があります。

この記事では、そもそも採用戦略とは何か、採用戦略の具体的な立て方や採用戦略を立てるメリット、実際に活用できるフレームワークなどをご紹介します!

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目次

採用戦略とは?

採用戦略とは、経営方針を基に、自社にとって必要な人材を獲得するために立てる戦略のことです。具体的には、事業計画の方向性に沿った採用計画を立てて、それを達成するための手法やプロセスを決定・運用します。

「人材」はもっとも重要な経営資源の1つです。企業の安定した成長のためには、質の高い優秀な人材確保が不可欠なのです。

採用戦略が求められる背景

それでは、なぜ、今採用戦略が求められているのでしょうか?その背景を説明していきます。

労働人口の減少で、人材獲得競争が激化

帝国データバンクの調査によると、人手不足を感じる企業の割合は2023年時点で53.1%にのぼり、2020年のコロナ禍以降、最高水準となりました。

コロナ禍以降の人材不足割合の推移

また、同調査によると、人手不足を理由とする倒産が2023年で過去最多の260件を記録したそうです。深刻な人手不足は、今後も続くことが予想されます。

人材流動化の強まり

従来の日本は、新卒一括採用や年功序列、終身雇用といったいわゆる「メンバーシップ型」の雇用制度が一般的でした。しかし現在では、非正規雇用の増加や就労に対する意識の変化、転職市場の拡大などにより、人材が企業間を移動(転職)することが当たり前になりつつあります。

人材の流動化が進む中、「人を選ぶ企業」から「人に選ばれる企業」にシフトするには、採用を戦略的に行うことが必要不可欠なのです。

知名度が高い大手企業に応募が集中

マイナビの就職意識調査によると、大手企業を希望している学生は、2025年度卒で半数を

超えました。

大手と中堅・中小別の企業思考の推移

安定志向の高まりやワークライフバランスが重要視される現在、大手企業に応募が集中する傾向にあります。そのため中小企業にとっては、自社の魅力を的確に訴求し、大手企業に負けない方法で人材を確保するための戦略が必要です。

採用戦略を立てるメリット

採用戦略を立てることによって企業が得られるメリットを、4点ご紹介します。

採用活動を効率的に行える

採用戦略を立てることで、数ある採用手法の中から自社にとって最適な手法を選択できるようになります。

「とくに理由もなく知名度の高い媒体を選んでいる」、「ちょっとやってみたけど費用対効果が薄いので、別の手法を試してみる」などといった実証性の低い状況から脱することができ、結果として無駄なコストやリソースの削減につながります。

応募数の増加が期待できる

中小企業やベンチャー企業など知名度に課題がある企業にとって、応募者の確保は第一の難関となります。自然と応募が集まる大手企業と違い、自社の魅力を的確に伝える採用戦略が必須となるのです。

市場と自社を客観的に分析し、自社の強みを効果的に伝える方法を模索しましょう。的確な訴求は母集団の拡大に繋がり、それに比例して欲しい人材に出会う可能性も高まります。

採用後のミスマッチや早期離職を予防できる

単に採用数の向上を目指すだけでなく採用後のミスマッチを防げるのも、採用戦略を立てるメリットです。

採用戦略を立てる際には、「自社が本当に求める人材(ペルソナ像)」を細かく設定します。ペルソナが明確に定義されていれば、マッチング精度の向上に繋がり、長期的に活躍してくれる人材に出会いやすくなるでしょう。

会社全体で採用背景・目標を再認識できる

採用活動で生じる問題としてよく挙げられるのが、人事や現場、経営陣の間の認識のズレです。社内で採用活動の軸がぶれてしまうと、求める人物を思ったとおりに採用できなかったり、手間やコストが必要以上にかかったりしてしまいます。

経営陣や関係各所を含め組織全体で採用背景や目標を再認識することで、皆が同じ方向を向いて採用活動を行えるでしょう。

採用戦略の具体的な立て方と活用できるフレームワーク

「具体的にどうやって採用戦略を立てればいいの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。この章では、採用戦略の立て方を6つのステップで紹介します。

ステップ①:採用を行う目的を整理する

まずは、そもそもなぜ採用活動を行うのか、背景や目的を整理しましょう。それがはっきりしていなければ、的確な採用戦略を立てることは困難です。

このステップがしっかりとできていれば、「人をもっと増やしてほしい」などといった社内からのアバウトなオーダーにも、冷静に対処することができます。

ステップ②:採用目標を立てる

次は、採用目標を立てましょう。採用目標の立て方においてカギとなるのは、目先の人員補充ではなく、経営目標や事業計画から逆算することです。

また、目標人数だけでなく、「いつまでに」「どこの部署に」「業務委託や副業人材でも良いのか」などといった観点についても、具体的に言語化しましょう。

ステップ③:採用したいターゲット・ペルソナを設計する

次は、求める人物像を設計しましょう。

まずは、年齢や性別などの属性でターゲットを絞り込んでいきます。ある程度ターゲットが絞り込めたら、その中からさらに具体的な人物像(ペルソナ)を作り上げていきます。

「ペルソナ」とは一般的にマーケティング領域で活用される概念ですが、採用活動に置き換えることで、面接官同士の認識のずれや、内定者と企業のミスマッチを予防してくれる効果があります。

また、ペルソナをできるだけ的確なものにするためには、担当者間だけでなく現場との擦り合わせも効果的ですよ。

ペルソナ分析

ペルソナ分析とは、どのような人材を採用したいかを明確にするためのフレームワークです。以下の項目を参考に、実際に存在するような人物として、ペルソナを作りましょう。

属性年齢、性別、家族構成、居住地、出身地、学歴、経歴、収入 など
価値観趣味、嗜好、娯楽の傾向、人生観、仕事観、抱えている悩み、転職理由、など
そのほか情報収集ツール、普段使用するSNS、保有スキル など

ペルソナ分析の際は、仕事に関することだけでなく、ライフスタイルや休日の過ごし方、生い立ちなど、人物像を隅々まで作りこむことが重要なポイントです。完成したペルソナは、社内で共有して認識を一致させましょう。

ステップ④:自社の訴求ポイントを明確にする

選ばれる企業になるためには、競合他社と差別化できるような自社のアピールポイントを明確にする必要があります。その際に大切なのは、自社だけでなく、市場ニーズや競合他社を含めた客観的な分析です。下記で紹介する3C分析やSWOT分析で、自社の訴求ポイントを整理しましょう。

なお、訴求ポイントを整理する際には、できるだけ具体的に言語化するとよいです。とくに「社内の人間関係」や「ライフワークバランス」、「働きやすさ」などといった定性的な項目に関しては、社内での具体的なエピソードなども添えてアピールするようにしましょう。

3C分析

3C分析とは、市場を【Customer(人材)】・【Competition(競合他社)】・【Company(自社)】の3つに分類し、自社がどのような立ち位置にいるかを客観的に分析する方法です。

Customer(人材)例:人気企業の傾向、企業選びの軸、理想の働き方など
Competition(競合他社)例:強み、弱み、採用サイトの口コミ、併願企業、企業文化、使用媒体、採用手法など
Company(自社)例:強み、弱み、採用サイトの口コミ、併願企業、企業文化、使用媒体、採用手法など

自社ありきの人材・競合分析になってしまう可能性を防ぐため、自社分析はできる限り最後に行いましょう。

SWOT分析

SWOT分析は、以図のとおり【Strength(自社の強み)】・【Weakness(自社の弱み)】・【Opportunity(採用機会)】・【Threat(採用活動における脅威)】の4つの要素から、自社の状況を客観的に分析する手法です。

プラス要素マイナス要素
内部環境Strength(自社の強み)例:高い技術力
Weakness(自社の弱み)例:ラインナップの少なさ
外部環境Opportunity(採用機会)例:テクノロジーの進化
Threat(採用活動における脅威)例:競合他社の増加

SWOT分析を行うことで、自社ならではのアピールポイントが自然と可視化できます。

ステップ⑤:採用スケジュールを立てる

事業計画から逆算し、採用スケジュールを決めます。採用活動は最短でも2~3か月は必要なことを念頭に置きましょう。

たとえば以下の項目をいつまでに行うか、明確にしていきましょう。

  • 全体設計(手法や媒体、面接担当者の決定など)
  • 求人掲載
  • 応募
  • 説明会
  • 書類選考、面接
  • 内定者フォロー
  • 入社後研修

また、採用スケジュールを立てるときには、以下の点にも注意しましょう。

・日程公開から実施まで、十分な余裕を持つ

・競合他社のイベント日時をチェックし、日時が重ならないようにする

ステップ⑥:採用チャネルを決める

ここ数年、求人サイトやリファラル採用に加え、SNS採用やダイレクトリクルーティング、マッチングイベントなど、採用チャネルが多様化しています。

これまで出会えなかった人材と接触できる機会が増えるというメリットがある一方、自社に合ったチャネルを的確に選ばないと、期待どおりの結果が出ない可能性も。次に紹介するキャンディデートジャーニーマップを活用し、できるだけ精度高く施策を選びましょう。

キャンディデートジャーニーマップ

採用チャネルを決めるときに役立つのが、キャンディデートジャーニーマップです。キャンディデートジャーニーマップとは、下図のように候補者の心理や行動をフェーズごとに予測するためのフレームワークです。

候補者の行動や心理は、フェーズによって大きく異なります。できるだけ正確にストーリーを組み立て、訴求効果を最大化しましょう。

採用戦略を立てるときの注意点

この章では、効果的に採用戦略を進めるために押さえるべきポイントを3つご紹介します。

会社全体で取り組む

採用戦略を組織全体で共有することで、採用活動の効率化が期待できます。担当者だけでなく関係各所で採用戦略を擦り合わせることは、採用活動全体のブラッシュアップにもつながるでしょう。

また、組織が同じ方向を向き一貫した採用メッセージを伝えることは、候補者が会社を選ぶ際の安心材料にもなります。

PDCAを回しながら実践する

採用戦略は、定期的に振り返りを行う必要があります。目標に対してどのくらい達成できているか、フェーズごとに結果を数値化して分析し、PDCAを回しましょう。

安定した採用活動を継続するためには、改善と実践を繰り返し、自社の勝ち筋を蓄積していくことがとても大事です。

エンジニアなど専門職採用には、専門チームを作る

IT系人材など専門職を採用したいときは、配属予定の現場責任者やCTOを巻き込んだ専門チームを作ることも有効です。

専門的な視点を取り入れることでより確度の高い訴求を行えるので、マッチ度が高い候補者に出会う可能性が広がるでしょう。

まとめ

採用戦略は、採用活動成功のための土台となり、企業の安定した成長のために非常に重要なステップとなります。また、PDCAを回しながらノウハウを蓄積していくことで、年を追うごとに、さらに磨きのかかった採用戦略を立てることが可能になります。

採用戦略を立てる際には、今回ご紹介したフレームワークもぜひ活用してみてくださいね。

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この記事の監修者

井上愛海のアバター 井上愛海 株式会社ミギナナメウエ 執行役員

2022年9月東京大学大学院在籍中に株式会社ミギナナメウエの執行役員に就任。
即戦力RPO事業の事業部長を担い、これまでに150社以上の採用支援に携わる。
【以下実績】
・シリーズBのスタートアップ企業の20名のエンジニア組織を40名まで拡大
・CTO、PM、メンバークラスを採用しゼロからのエンジニア組織を立ち上げに成功

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