個人、企業問わずリスキリングに対する注目は高まっており、中でも補助金獲得に興味を持つ企業も多いでしょう。ただリスキリングでもらえる補助金とひとことで言っても「自社は対象となるのか」「どんな条件があるのか」など、気になることも多いはずです。
そこで本記事では、リスキリングによって得られる補助金や、対象講座の詳細を解説していきます。今後補助金の獲得を検討している経営者、人事の方はぜひ参考にしてください。
リスキリングとは
企業におけるリスキリングとは、大きく分けると競争力の向上や維持、従業員のキャリア育成などを表す言葉として使用されます。細かな定義や重要性は、以下の章を参考にしてください。
リスキリングとは社会や技術の変化に対応すること
まず初めにリスキリングの定義として、経済産業省(リクルートワークス研究所)は以下のように定義付けています。
リスキリングとは、新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf
つまり、スキルの向上や新たな知識の習得、異なる分野への挑戦を後押しすることそのものや、組織としてそれをサポーする枠組みと言えるでしょう。リスキリングは企業が従業員を育成をする際の取り組みとして現在注目を集めています。
また、リスキリングに力を入れることで企業が得られるメリットも多いです。
【リスキリングで得られる企業のメリット】
- 業務フローの改善
- 業務効率の向上
- DX化に対する対応
- 事業の成長スピードの加速
新たな技術が浸透すれば、チーム全体の業務効率が向上しますし適切なフローによって業務効率が上がれば、同じ人数でも生産性を高めることができます。さらに、ITスキルを身につけレベルアップできれば、データ分析や管理、マーケティングにも強くなり、事業の拡大スピードも加速させられるでしょう。
企業に対するリスキリングの重要性
現在少子高齢化に伴う労働人口の低下や、DX化やITの活用といった市場の変化も伴い、リスキリングの重要性が高まっています。
特に、多くの企業でIT分野を中心に新たなスキルを習得することが重要視されています。コロナウィルスの影響で各業務のオンライン化や効率化が進んだこともあり、近年ではよりITスキルの習得に注目が集まっているのです。
条件を満たしリスキリングに取り組めば補助金も獲得できるため、それ目当てで実施に踏み切る企業も増えてきています。
個人・個人事業主に対するリスキリングの重要性
次に個人や個人事業主におけるリスキリングの重要性として、「人材や業務の多様化」があげられます。法人のケースと同様に、市場の変化やITの発展が著しい現代において、現状維持のままでは市場価値も上がらないでしょう。
最新の市場でも活躍できるよう、リスキリングを行い自分の市場価値を高めていくことは極めて重要です。この先AIに仕事を取って代わられないよう、自分だからできることを増やしていくことが、個人のリスキリングにおいて大切になってくるでしょう。
リスキリングが注目される背景
リスキリングが注目される背景として、DX推進やリスキリング革命があげられます。
2020年に経済産業省が制定したデジタルガバナンス・コード2.0では、ITシステムとビジネスを一体的に捉え、新たな価値創造に向けた戦略を描いていくと定義されています。
従来の方法のみに依存することなく、時代の変化に合わせスキルを習得し使いこなしていくことが重要です。
また2023年のForbesJAPANの発表によると、リスキリングの内容の一つに「3Dデジタルにおける重要性」が述べられています。デジタル活用が求められている現代において、リスキリングとスキルアップは無視できないでしょう。
特に近年企業の採用難易度が高まり、優秀な人材を獲得できないといったことも少なくありません。組織の力を高めていくためにも、採用で人数を増やす以外に、既存社員のスキルアップに力を入れる企業も増えてきています。
補助金・助成金・給付金の定義
企業がリスキリングを行うことで得られる補助金には色々な種類があります。ただその前に補助金、助成金、給付金の違いをご紹介します。
企業と個人では受け取るお金の種類が異なるため、申請時には注意が必要です。
補助金
補助金とは、国や地方自治体が組んでいる予算です。リスキリングを行う企業の場合は申請を提出し、条件を満たしている場合にのみ受け取ることができます。ただし、審査が必要なため「提出すれば必ずもらえる」というわけではありません。
あくまで条件を満たしたうえで、審査を通過する必要があるため、補助金目的での事業プランを立てないよう気をつけましょう。
助成金
助成金は補助金同様に国や地方自治体が組んでいる予算です。補助金との違いとして、基本的に条件を満たしていれば受け取ることができます。リスキリングを行う企業は、助成金の獲得も視野にいれるとよいでしょう。
一般的にはは、社員のスキルアップや育成のため、補助金ではなく助成金を組み込んだ事業展開を検討している企業が多い印象です。
給付金
給付金は一般的に、企業で条件を満たす個人に向けて配られるお金です。そのためリスキリングを行い、条件を満たしている個人が対象となるため、企業が計画するのは補助金、もしくは助成金となります。
つまり給付金はリスキリングを重要視し、スキルアップを考えている個人向けの制度と言えるでしょう。
リスキリングでもらえる補助金・助成金
いよいよ本題となりますが、リスキリングに取り組んでいる企業は条件を満たすことで補助金や助成金を受け取ることが可能です。以下で、具体的な講座や「どんな企業が対象となっているか」についてご紹介します。
人材育成支援コース
人材育成支援コースでは、企業が従業員に対して、知識やスキルを習得させるためのトレーニングを実施し、厚生労働大臣が認定するOJTを受けさせることで条件を満たすことができる補助金です。「社員の成長」という観点でリスキリングとみなされ、社員が新たなスキルを習得することが目的とされています。
ジャンルを問わず広い分野での人材育成を目的とした補助金のため、多くの企業が獲得しやすい補助金です。
教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースは、自主的にスキル向上といったリスキリングに取り組むため、有給休暇を取得した際に受け取ることができる助成金です。この場合、従業員が受けたトレーニングや講習の費用が、一部助成金として補填されます。
リスキリングはもちろん、会社の有給休暇取得率も改善できるので、多方面で効果的な補助金です。
人への投資促進コース
人への投資促進コースは、企業がデジタル人材や高度人材を育成するためのトレーニングを実施した際に受け取れる助成金です。近年IT企業の成長やWebサービスの進化が著しく、多くの企業がIT人材を必要としています。その結果ITスキルやDXに対するリスキリングは注目を集めるようになり、多くの企業が取り組みを始めています。
IT企業に限らず、他の業種でDX化を推進する際にも人への投資促進コースはおすすめです。
建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースでは、建設分野の特定職業訓練、指導員訓練を行うことが条件とされています。訓練の際に企業が従業員に給与を支払いますが、その一部が補助金として支給されるコースです。最近だと建設分野に関わる人材の高齢化も進み、今後の市場でも注目を集めるリスキリングの一つです。
特に経験者の採用が難しい地方の建設関連の企業にとって、補助金を獲得しながら人材の育成ができることは大きなメリットとなります。
事業展開などリスキリング支援コース
事業展開などリスキリング支援コースは、企業が新規事業の立ち上げの際に、リスキリングとして社員に新たな知識、スキルの習得のための訓練を実施することが条件とされています。
企業は新たなスキルや知識の習得の際に、訓練やトレーニングに発生する費用の一部を補助金として受け取ることが可能です。
スタートアップ企業やベンチャー企業など、成長スピードが早く新たな事業が生まれやすい企業におすすめの補助金です。
建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースは、企業が建設労働者のスキル向上を目的とした実習を有給で受講させることを条件とし、一部の実習費用が助成されるコースです。
基本的なスキルの習得はもちろん、専門性の高いスキルを身につけリスキリングを実施することが推奨されています。メンバークラスの人材育成に加えて、将来的に専門的な知識を持つリーダーも育成できるなど、幅広い計画ができる補助金です。
障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースでは、企業が障害者のスキルアップ、能力向上を目的として、継続的に教育訓練を実施することが条件とされています。
訓練の際に必要な施設の運営を行っている場合、企業は費用の一部を補助金として得ることができます。
最近では企業においてもダイバーシティが推進されており、積極的に障害者を雇用する企業も少なくありません。障害者を雇用した後、育成を考えているのであれば補助金の獲得も視野にいれるとよいでしょう。
DXリスキリング助成金
DXリスキリング助成金は、補助金ではなく助成金の一種で、公益財団法人 東京しごと財団が実施しています。東京都内の中小企業が、リスキリングのため従業員に向けDX化に対する職業訓練を実施することが条件です。
他にも条件として、助成金の上限金額が費用の3分の2まで、かつ年間最大64万円と規定があります。
個人・個人事業主向けの補助金
リスキリングで得られる補助金は、企業以外に個人や個人事業主に向けられたものもあります。
【個人・個人事業主向けの補助金】
- 一般教育訓練
- 特定一般教育訓練
- 専門実践教育訓練
主に注目されているのが、上記3つの補助金です。いずれも、個人や個人事業主がさらなる知識、スキルを身につけることを前提に設定されている補助金がほとんどです。
このように、リスキリングに関する補助金は、企業のみならず個人向けにも展開されています。
大阪には優秀な人材が多い?
実は大阪では、個人や個人事業主に向けたリスキリングに関する予算が他の都道府県と比べて多くなっています。つまり、人材育成に積極的な大阪であれば、優秀な人材が多く自社が求める人材がいる可能性も高いかもしれません。
大阪のリスキリングに対する見解
具体的に、大阪ではリスキリングの促進に関して年間226,788千円の予算を設定しています。
内訳 | 予算 |
リスキリングサポート事業 | 12,729千円 |
スキルアップ(資格取得)支援事業 | 191,201千円 |
DX人材活躍推進事業 | 5,479千円 |
特設サイト運営事業 | 17,379千円 |
大阪は東京についで労働人口が多く、IT分野のみならず様々な業種においてマーケットが広いです。
そのため多くの企業で人材が必要となっており、個人のレベルアップを重要視した自治体がリスキリングに取り組んでいます。予算の詳細を見てわかるように大阪はリスキリングに積極的です。
つまり、大阪府民は他の都道府県に比べて自治体から給付金を受けながらスキルアップに向き合っているという特徴があります。
大阪は人材育成に積極的
前述通り大阪は人材育成に大きく予算を割いており、リスキリングにも積極的に取り組んでいます。そのため採用活動に積極的な企業は、ピンポイントで大阪からのU・Iターンを狙っていくことも一つの手段となるでしょう。
引越しサポートや面接移動費の支給など、居住エリアがデメリットとならないような制度を設けることで、より多くの求職者に訴求することができます。優秀層を狙っている企業は、一度大阪の人材もターゲットに入れてみてはどうでしょうか。
企業の成長に向けてリスキリングによる補助金も要チェック
より優秀な人材とともに事業を拡大させていくためには、中途採用のみならず社員のリスキリングに踏み切り、チーム全体の組織力を上げていくことも大切です。条件を満たした企業であれば、助成金を獲得しながら社員の育成ができるため、自社と条件が合う補助金があるかどうかはきちんと確認しておきましょう。
また個人や個人事業主も積極的に給付金を受けスキルアップができるので、今後もリスキリングについての情報に注目することをおすすめします。