採用活動に携わる方にとって、採用目標の達成は永遠の課題ですよね。しかし、採用戦略設計から実行、応募獲得〜入社までし漠然と努力をするだけでは、なかなか成果が出ないことも多いと思います。
そのような”漠然とした努力”の成功確率を上げることができるのが「採用KPI」を設定することです。
採用KPIとは、採用活動の各段階の目標を数値で表し、最終目標までの進捗状況を見える化する指標のことです。
この記事では、採用KPIの概要やKGIとの違い、採用KPIを決めることで解決できる指標や実際の数値例についてを紹介します。運用におけるポイントも解説しますので、参考にしてください。
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採用KPIとは?
採用KPIとは、採用活動における各フローにおける細かい目標を数値化した指標のことです。採用活動における目標達成までの進捗状況を段階ごとに区切り、状況の具合を判断しやすくなります。
求人への応募者数、書類や面接の通過人数、内定承諾数、入社率など、採用プロセスの様々な指標を管理することで、採用活動の成果を定量的に測定することができます。
たとえば、企業説明会1つをとっても、申し込み人数、実際の出席者数、出席者の応募推移率などのKPIを設定できます。
KPIを決めることで、最終的な採用目標を達成するための各プロセスでの目標値や行動量・施策を考えられたり、定期的にKPIを分析することで現状の課題をすぐに特定しやすく、スムーズに解決策を考え、軌道修正することができます。
採用KPIとKGIの違い
KGI(Key Goal Indicator)は、日本語で「重要目標達成指標」と訳され、最終的な採用目標を表す指標です。例えば、新卒を5名採用するなど、達成したい最終的なゴールを指します。
一方KPI(Key Performance Indicator)は、日本語で「重要業績評価指標」と訳され、厳密には「最終目標の達成度合いを測る指標」のことです。
例えばKGIが「新規採用者数を5名採用する」であれば、KPIはざっくりと応募者数は100名、書類選考通過数は50名など、最終目標を達成するために各プロセスで必要な候補者の人数目標を定量化して決めます。
KGIを達成するためには、具体的にどのプロセスでどこまで達成するのかというKPIが必要です。そのため、採用活動でも、まずKGIを定めて、その後、採用プロセス全体と各プロセス内のフェーズごとに細かくKPIを決めていくことが重要なのです。
採用活動におけるKPIの例
採用活動におけるKPIには主に以下の項目があります。KGIを決めた後、最終目標を達成するために各フェーズで最適な成果数値を考えながらKPIを決めていきましょう。
◆採用活動全体
- 採用チャネル別の費用対効果
- 採用コスト(採用単価)
◆応募・書類選考
- 応募者数
- スカウト返信数・返信率
- 書類選考合格者数(選考通過率)
◆面接
- 面接実施数
- 選考通過人数
- 選考中離脱率
- 内定者数(内定率)
◆内定後
- 内定辞退者数(辞退率)
- 内定承諾率
- 入社配属後の人事評価
- 入社後の離職率(定着率)
採用KPIを作成するメリット
採用KPIを立てるメリットを紹介します。
採用活動の課題点がすぐに分かる
採用KPIを決めるメリットは、採用活動の課題をすぐに発見できることです。
採用KPIを分析することで、どの部分でどの程度目標数値が達成できているのかが分かり、逆に、どの部分が原因で目標ラインに達していないのかを判断しやすいので採用計画の軌道修正がしやすく、採用活動全体の生産性が高くなります。
また、KPIはほとんどの場合が週次、長くても月次には振り返りを行うので、速い段階で異変に気づくことができるというのもメリットの1つです。
各関係者の責任と権限が明確化される
採用KPIを決めるメリットは、採用に関わる人のそれぞれの役割と責任を明確にできることです。
採用KPIを決めることで、必然的にフローや作業を細分化することができます。そしてその結果、それぞれのKPIの達成に責任を持つ人を決めやすく、責任の所在も明確にしやすくなります。
それぞれの担当者がどのような役割を果たし、どのような責任を負うのかを明確にすることで、個々の業務内容を把握し、KPI達成に必要なタスクに集中することができる他、人事評価の際にも参考にしやすくなります。
採用活動の全体像を俯瞰した戦略立案ができる
採用プロセスごとにKPIを立てれば、最終的な採用目標(KGI)の達成のためにその前段階として、各採用プロセスのKPIの達成のためにどのように行動するべきか、採用活動の全体像を俯瞰して戦略を立案できます。
たとえば、各選考フローで場当たり的にそれぞれの通過者数を決めているようでは、最終的な採用目標を達成するのは難しいでしょう。
一方で、最終目標から逆算して各プロセスのKPIを細かく決めておくことで、各プロセスでの目標達成のための戦略を立てることができます。ある数値を達成するためには、前の段階でどのような施策が必要かを考え、全体像を俯瞰しながらより実現可能性の高い戦略を練ることができるようになるのです。
採用KPIを決めることで解決できる課題
採用KPIを決めることにより、具体的にどのような課題解決につながるのか解説します。
歩留まり率
まず採用KPIを決めることで、歩留まり率を改善することができます。
選考過程では、応募者全員が選考フローに進むのではなく、中には不合格になったり辞退してしまう人もいます。例えば書類選考を通過した人のうち、面接を辞退する人が3割いればその面接の「実施率」の歩留まりは70%ということになります。
各手法ごとのコンテンツからの反応率や選考フローの歩留まりを明確にすることで、どの部分で歩留まり率が高いまたは低いのかがすぐにわかるようになり、改善施策を打ちやすくなります。
母集団の数
採用KPIを設定することで、候補者の集客=母集団形成における課題も解決できます。
採用KPIでは「○名の人材を採用する」という最終的な採用目標を達成するために、各手法の各選考フローにおける通過者数をKPとして定めます。
目標とする採用人数から逆算してKPIを設定することによって、母集団数を効率的に確保するために、無駄のない採用施策を立案することができます。
採用施策
採用KPIを設定することで、最終目標を達成するために定めた各KPIを達成するよりよい採用施策を立案・実行することができます。
たとえば、各選考フローにおける目標のKPIを定量的に設定することで、どのような施策を取ればいいかをより具体的に考えられるようになります。
さらに、各KPIを達成するために必要な具体的なアクションを「細かいKPI」として設定することで、よりよい採用施策を立案することができます。
行動量
採用KPIを決めることで、行動量も改善できます。採用活動は結果が出るまでに時間がかかるため「どれだけ動けるか」も重要です。
たとえばスカウトの送付数、SNSの発信量、いつまでに何本の募集を掲載するかなど、量的な指標を高めることは、より多くの人材に自社を知ってもらうための第一歩です。
ただし、行動量を高めるためには質を担保することが大前提です。例えば、スカウトメールを送信する際は、単にテンプレートを送信するのではなく、求職者のプロフィールをしっかりと確認し、個別にメッセージを作成する必要があります。
採用KPIの設定手順
では実際に、採用KPIの設定手順を紹介します。
KGI(最終目標)を設定して採用活動の目的を明確にする
採用KPIを決める前に、採用活動における最終目標(KGI)を設定しましょう。
最初にKGIを決めておくことで、採用活動の最終的な目標を明確にすることができ、目標達成に向けた具体的なKPIや戦略を立てやすくなります。
採用活動のKGIを決める際は、自社の経営戦略や現場からのニーズに基づいて、「いつまでに何人、どのような人材を採用するか」という一番肝となる部分を決めましょう。
採用に関するデータを収集・分析する
KGIを設定した後、前年度やそれ以前の自社の採用実績データを収集・分析して自社の現状のKPIを認識しましょう。
たとえば、以下のようなデータを分析するのがおすすめです。
- 利用媒体別の歩留
- スカウト返信率
- イベント参加率
- 応募者数
- 選考通過率
- 内定承諾率
- 採用コスト
- 離職率
また、集めたデータを職種や採用チャネル、採用時期別などに分けてさまざまな観点で分析することでより深く分析することができます。
たとえば採用チャネルごとの応募者数、選考通過率、内定承諾率などを分析すれば、費用対効果の高いチャネルや自社の求めるターゲットが集まるチャネルが分かります。
採用チャネルごとの選考フローを設計する
次に採用チャネルごとの選考フローを設計しましょう。
まずは求人サイト、エージェント、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用など、自社が利用しているすべての採用手法を洗い出します。
次にKGIの達成に必要な採用人数を採用チャネルごとに割り振り、各々のチャネルでこれまでの採用結果平均返信率を踏まえて採用人数の目標(KGI)を設定しましょう。
次に、各採用チャネルにおけるエントリーから内定までの選考ステップを可視化します。
たとえば、KGIが「半年で中堅エンジニアを5名採用する」であり、ダイレクトリクルーティングと求人媒体を使用するのであれば、以下のように割り振れます。
採用媒体・求人広告を活用する場合
採用目標人数:1人
選考フロー:書類選考、一次面接、二次面接、内定
ダイレクトリクルーティングを行う場合
採用目標人数:2人
選考フロー:カジュアル面談、一次面接、二次面接、内定
選考フローにおける歩留まり率を分析する
次に、採用チャネルごとの選考フローの歩留まり率を算出します。
歩留まり率は、以下の式で算出できます。
- 歩留まり率 = (通過数 ÷ 対象数) × 100
- 通過数:次の段階に進んだ応募者数
- 対象数:ある段階に進んだ応募者数
前年の採用データから算出して数値をあてはめましょう。
たとえばダイレクトリクルーティングダイレクトスカウトの選考フローが一次面接、二次面接、内定承諾となる場合各フェーズごとの歩留まりは以下のようになります。
◆一次面接
- 対象数:50人
- 二次面接への通過者数:26人
- 歩留まり率:(26人 ÷ 50人) × 100 = 52%
◆二次面接
- 対象数:26人
- 内定者数:15人
- 歩留まり率: (15人 ÷ 26人) × 100 = 57%
◆内定承諾
- 対象数:15人
- 内定承諾者数:8人
- 歩留まり率: (8人 ÷ 15人) × 100 = 53%
他のチャネルも同様に行い、歩留まり率を確認することで、注力すべきチャネルを決めたり、チャネルごとの採用フローの課題が分かり、選考基準や内容を変更できたりします。
KPIを決める
歩留まり率の分析結果をふまえて、採用チャネルにおける選考フローのKPIツリーを作成しましょう。
たとえば、KGIが半年以内にエンジニアを5名採用する予定であり、複数チャネルを使いながら、ダイレクトリクルーティング経由で半年以内にデザイナーを3名採用することにしたとします。
KPI1:アプローチリストを2週間以内に300名まで増加させてスカウトする
KPI2:一次面接通過率を60%まで向上させて、30名を二次面接に進める
KPI3:二次面接通過率を70%まで向上させて、21名を二次面接に進める
KPI4:内定承諾率を60%まで向上させて、12名の内定承諾を得る
さらに、それぞれのKPI達成に向けて、具体的なサブKPIと施策・todoを決めることで、関係者がそれぞれの役割とタスクを明確に理解し、目標達成に向けて効率的に取り組むことができます。
「KPI1:スカウト対象者リストを3ヶ月以内に200名まで増加させる」というKPIであれば、以下のようなサブKPIを立てることができます。
KPI:候補者リストを3ヶ月以内に200名まで増加させてスカウトする
サブKPI1:ターゲットとなるデザイナーのペルソナをMUST/BETTER/NGに分けてターゲット層を広げる
サブKPI2:現状のリスト収集方法を確認し、必要に応じて別チャネルを開拓する
施策1:現状のチャネルで検索条件を変え、ヒットする候補者を洗い出す
施策2:ターゲットが登録していそうな媒体の導入の商談を受ける
施策3:余裕を持って250名のスカウト対象リストができるようにデータを収集する
採用KPI作成後の運用のコツ
採用KPI設定後の施策運用ポイントを紹介します。
数値の変化をリアルタイムで把握する
KPIに関連する数値は、毎日決まった時間に確認して採用状況を逐一把握しながら状況に応じて必要な施策を実行しましょう。
例えば、ある採用チャネルからの応募者数が少なくなっている場合には、過去のデータと比較して応募者数の減少がいつから始まったのか、どの職種や応募層に影響が出ているのかなど、色々な角度から分析することができます。
応募フォームが使いやすいかを確認したり、求人情報のターゲット層や内容を見直して適切なものに修正したりして、チャネルの内容を改善しましょう。また、広告掲載を増やしたり、ソーシャルメディアで積極的に情報発信したりなど、応募者数の減少が起きているチャネルへの露出を強化することもできます。
KPI達成につながる重要な指標を探す
採用活動には多くの指標が存在しますが、すべてを管理するのは非効率的です。
そこで、KPI達成につながる重要な指標を定め、それを中心に管理することで、スムーズに目標達成を目指すことができます。
例えば、せっかく採用した人材が内定辞退してしまった場合、内定承諾率をKPIとして設定し、内定辞退理由を分析したり仮定することで、入社後のフォロー体制を改善することができるでしょう。
採用KPIを作成した後は、最終目標を達成するために重要な指標を探し出し、その部分の改善に注力することで最短距離でKGI達成に近づけます。
まとめ
今回は、採用活動におけるKPIについて、作成するメリットや解決できる要素、設定方法などを紹介しました。
採用KPIは設定したら、終わりではありません。実際の結果と日々照らし合わせながら運用していくことで、目標達成に向けて改善を続けましょう。
そのため、まずは自社の理想的なターゲット像を明らかにして、最終的な採用の最終目標を決めるところから始めてみてください。