企業が従来の採用手法ではなかなか成果を得られないと感じることは少なくありません。特にエンジニア採用では、多くの企業が応募者の不足に悩んでいます。
この記事では、エンジニア採用に関するいくつかの重要なポイントを解説しています。例えば、
- ダイレクトリクルーティングとは?今エンジニア採用で注目されている手法について
- エンジニア採用を成功させるための5つの秘訣
- エンジニア採用に特化したダイレクトリクルーティングサービスの紹介
などなど、エンジニア採用に悩む企業の方々にとって有益な情報をまとめましたので、ぜひご参考にしていただき、採用の課題に向き合う際の一助となれば幸いです。
ダイレクトリクルーティングとは?
ダイレクトリクルーティングは、企業が能動的に求職者にアプローチする採用手法です。これは従来の採用手法と異なり、「待つ」のではなく「攻める」アプローチとして知られています。
従来の手法では、企業は求人媒体や人材紹介サービスに登録し、応募者や紹介候補者の登場を待つしかありませんでした。それに対し、ダイレクトリクルーティングでは企業が自ら積極的に求職者を探索し、アプローチすることが可能です。この手法には、スカウトに重点を置いたサービスや、広告とスカウトの組み合わせ、SNSを活用するなど、多様なアプローチ方法が存在します。
エンジニア採用でダイレクトリクルーティングを使うべき理由
エンジニア採用は他の職種に比べて求人倍率が高く、伝統的な「待ち」の採用手法だけでは応募が得られないことがしばしばあります。
エンジニアの数が限られているため、企業が自らアプローチを行い、積極的に求めるターゲットを探さなければなりません。
このようなケースでは、エンジニア採用には「攻め」のアプローチであるダイレクトリクルーティングが効果的です。
エンジニア採用の現状
ITエンジニアの求人数と応募数は、2019年12月から2023年9月までの間に大きく増加しています。求人数は1.3倍に増え、応募数も全体で1.4倍に増えました。特に20代から30代の経験者の応募数は1.8倍に伸び、若手から中堅の転職市場が活況を呈しています。
しかし、増加する求人数に対してITエンジニアの求人倍率は高い状態が続いています。都心部や20代後半から30代前半の層に求人が集中しており、今後も競争は激化する見込みです。
このような状況下で、企業はITエンジニアの採用に苦戦しています。そのため、採用競争を勝ち抜くためには積極的にスカウトメールを活用し、候補者に自社への応募を促すことが重要です。
(引用元:株式会社キャリアデザインセンター)
ダイレクトリクルーティングを導入している企業の数
企業がダイレクトリクルーティングを採用する傾向は着実に増えています。BizReach(ビズリーチ)では約62,000社、Wantedly(ウォンテッドリー)では約36,000社がこの手法を採用しています。
以下では、ダイレクトリクルーティングを活用して成功を収めたエンジニア採用の事例を紹介します。
ダイレクトリクルーティングでエンジニア採用を行う際に気をつけるポイント/注意点
求人の内容に気をつける
ダイレクトリクルーティングにおいても、魅力的な求人原稿が欠かせません。
求人原稿を作成する際の重要なポイントは、給与や勤務地などの基本情報に加えて、仕事内容の詳細を具体的に伝えることです。
求職者が求人原稿を閲覧しても情報が不足していると感じると、興味を持ってもらえない可能性があります。求人原稿作成に関する具体的なポイントについては、エンジニア向けの求人原稿作成における4つの重要な要素を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
現場のエンジニアにも協力してもらう
エンジニアの採用は、その専門性ゆえに適切な候補者を見つけるのが難しいと言われています。
エンジニアのスキルは高度で、特定のプログラミング言語やプロジェクト経験など、現場での実績がないと評価が難しい部分があります。
そのため、求職者を選定するためには、自社で活躍しているエンジニアの意見を取り入れることが有益です。彼らの視点から、何を重視すべきかや求めるスキルについてアドバイスを受けることが重要です。
計画的にダイレクトリクルーティングの業務を行う
ダイレクトリクルーティングにおいて、スカウトメールの送受信には多くの工数が必要です。
日々、数十から数百通ものスカウトメールを送り、そしてその返信に迅速に対応する必要があります。この量のメールを扱うことで、候補者の進捗管理が難しくなります。
このような状況では、専任の運用担当者を配置することが有効です。他の業務と兼任するのではなく、ダイレクトリクルーティングに集中できるスタッフがいることで、効果的な運用が可能になります。
面接の前にカジュアル面談を挟む
エンジニア採用は現在、求人倍率が約8倍と非常に競争が激しくなっています。
このような状況下で、直ちに面接を行うのではなく、カジュアルな面談を行うことが一般的です。このカジュアルな面談では、会社の魅力を感じてもらい、応募意欲を高めることが目的です。
ただ、カジュアルな面談は慣れないと難しいと言われています。そのため、まずはこの面談を成功させるためのノウハウを身につけることが重要です。
エンジニア宛のスカウトメッセージ作成のコツ4つ
要件定義(ペルソナ設定)をしっかり行う
要件定義は、採用ポジションに求められる理想像を具体化するプロセスです。
たとえば、以下の点を具体的に定義します。
- 求めるスキルは何か?
- これまでの経歴やキャリア志向は?
- 望ましい性格や人物像は?
これらの要件定義を行うことで、採用のニーズや課題が明確化され、適切な媒体の選定やターゲットへのアプローチに繋がります。特に、「スキル」と「性格」は求人広告の人物像欄を充実させる上で重要です。これらの要素を丁寧に設定しましょう。
良い要件定義の例として以下のような記載が挙げられます。
悪い例:
- バックエンド開発経験
- チームでのプロジェクト経験
- インフラを利用した開発経験
これでは、具体的な業務内容やスキルが分かりにくいでしょう。
一方、良い例としては以下のような具体的な記述です。
良い例:
- 仕様策定から設計、開発、テスト、リリースまでのフルサイクル経験
- Rubyを使用したMVCフレームワークを用いた開発経験
- AWSやGCPを活用したクラウドインフラの開発実務経験
良い例では、具体性があり、応募者が自分自身を想像できるような情報が記載されています。求める人物像を明確にするために、具体的な記述が必要です。
エンジニアにとって魅力的に感じるポイントを抑える
エンジニアの求人原稿を魅力的にするためには、彼らの転職理由を理解し、それに即した内容を提供することが肝心です。業務内容の魅力、魅力的な給与や待遇、そして企業や業界への不安を解消する情報を含んだ求人原稿を作成することが大切です。
1.開発環境を公開する
エンジニアは自身のスキルを活かせる環境を探します。具体的な開発環境の記載や業務内容、今後のキャリアパスを示すことが重要です。例えば、「フロントエンド」「サーバーサイド」などエンジニアの種類を明示し、使用するプログラミング言語やOS、DB、活用するツール、担当数など詳細に記載しましょう。
2.必須スキルを具体的に提示する
エンジニアは多種多様なスキルを持つため、募集要項に詳細なスキルや経験を記載しましょう。大まかなスキルだけでなく、実際の経験や開発規模などを具体的に示すことが求職者のイメージを助けます。
3.過去のプロジェクト例を提示する
自社が行ったプロジェクト事例を示すことで、応募者が業務内容やエンジニアの役割を把握しやすくなります。案件の概要や開発期間、使用した技術、実際の勤務地などを詳細に記載することで具体性を持たせましょう。
4.給与や福利厚生を詳細に公開する
エンジニアの採用市場では給与や福利厚生が重要です。具体的な年収や手当、健康管理やストレスケアなど、応募者にとって魅力的な待遇面を詳細に記載しましょう。これによって応募者の関心を引きつけます。
これらのポイントを押さえて、エンジニア向けの求人原稿を魅力的に整えましょう。
スカウトメールは特別感と読みやすさ
スカウトメールは候補者との最初の接点です。最近では多くの人がスマートフォンでスカウトメールを見るため、長文は読みにくく、すぐに離脱されることがあります。
通常のスカウトメールは1,000文字程度ですが、実際には1スクロールで収まる500〜600文字程度にすると、読みやすくなり、求人情報も見てもらいやすくなります。
特にSNSツールの一つであるLinkedInでは、カジュアルなやり取りが得意なため、短くまとめることで返信率が高まる傾向にあります。
計画的にスカウトメールを送付する
もし条件の絞り込みや件名の変更が開封率の改善につながらない場合は、送信する時間帯や曜日を調整してみるのも一つの手段です。
スカウトメールの開封時間は、使用する媒体によって異なりますが、例えば…
- 月曜日の21:00〜22:00
- 金曜日の17:00〜19:00
- 土曜日の12:00〜13:00
この時間帯は、ある媒体において「PM・Webエンジニア・フリーランスエンジニア」の返信率が高いことが報告されています。
ポジションや対象者によって、反応の良い時間帯は異なるため、採用ターゲットの生活リズムを考慮したA/Bテストを行うことがおすすめです。
カジュアル面談でエンジニアの心を惹きつける
近年、カジュアル面談という言葉をよく耳にしますが、エンジニアにとって快適なカジュアル面談を実施している企業はまだ少ないようです。
求職者側からの不満としては、「カジュアル面談と思って行ったら、いきなり面接された」とか、「面談冒頭30分が会社の紹介ばかりで、自分で既にホームページを確認してきたような感じだった」といった声がよく聞かれます。
ここでは、成功する採用のためのカジュアル面談のポイントをお伝えします。
担当者の選定をしっかり行う
カジュアル面談は、候補者との最初の接点です。この面談では、会社全体の第一印象を形成する重要な場です。そのため、このカジュアル面談を担当するのには、「現場のマネージャークラス」や「役員」など、会社を代表する存在が適任です。
社内で実際に活躍している人物に面談してもらい、候補者に「この人と一緒に働きたい」という印象を持ってもらうことが目的です。もし会社全体の情報を知りたいというニーズがあれば、人事の方が面談担当としても適しています。
参加ハードルの低いオンラインで実施する
カジュアル面談は、主にZOOMやGoogle MeetなどのWeb会議ツールを使って行われることが一般的です。しかし、対面や電話を選択することも一つの方法です。候補者のスケジュールや状況に応じて、柔軟に選択することが重要です。
会社の魅力が伝わる事前資料を共有する
カジュアル面談では会社の紹介が重要ですが、時間配分に気を配ることが必要です。特に、自己開示が苦手なエンジニアや多忙な方は、自分自身の本音を把握していないことがあります。
そのため、候補者の話にじっくり耳を傾ける時間を確保することが重要です。会社の紹介は、事前に資料を送付し、面談当日に簡潔に10分ほどで基本的な情報を伝えることが理想的です。
ただし、候補者が積極的に質問をし、興味を示している場合は、それに応じて時間を割いて情報を提供することも大切です。
候補者のニーズに合った話をする
候補者が自身のキャリアについて希望をはっきりと持っていないことはよくありますが、カジュアル面談に参加した時点で、将来的な転職の意思が少なからずあるはずです。
面談の際に、「なぜスカウトメールに返信し、面談に参加したのか?」や、「現在の仕事内容や会社での状況はどのようなものか?」などを尋ねることで、候補者の現状と理想を把握することができます。
そこで重要なのは、候補者の理想と現実を把握した後、自社が提供できる改善点や魅力を説明することです。
候補者の理想には、一般的に「会社の雰囲気や文化」「仕事内容や働き方」「チームメンバーや環境」「給与や福利厚生」の4つのパターンがあります。それぞれに対して、自社の強みや魅力を示すポイントを整理しておくことが大切です。
その場で次の先行ステップを案内する
カジュアル面談が「前向きに検討します」というまとめで終わることがよくありますが、実際にはその後の流れを決めておく方が有益です。
なぜなら、面談後に直ちに応募するケースは稀だからです。
もし即応募に至らなかった場合でも、次のステップを決めておくことが大切です。将来的な関係を築くために、面談後1〜2ヶ月後に応募するケースは珍しくありません。
そのため、応募が見送られた場合でも、長期的な関係を築くために、定期的にコンタクトを取るようにしましょう。
カジュアル面談の進め方や、採用に繋げるコツについては下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
ダイレクトリクルーティングサービスの料金相場
ダイレクトリクルーティングにかかる費用は、主にサービス利用費と運用費用に分かれます。
サービス利用費は、提供会社に支払う利用料金であり、そのサービスの利用に対するコストです。一方、運用費用は企業内の人件費や外部委託の場合の費用など、採用活動を運用するための実務や戦略の費用を指します。
料金相場/プラン
ダイレクトリクルーティングの料金形態には、大まかに初期費用・定額型と成果報酬型の2つがあります。
初期費用・定額型は、最初の契約時や定められた契約期間ごとに一定の金額を支払います。一方、成果報酬型は実際に採用が成立した場合に支払われる報酬で、採用が成功した際に決められた金額が支払われます。
また、スカウトメールの送信など、特定のアクションに応じて課金される料金形態も存在します。
各サービスの費用
ダイレクトリクルーティングサービスの成果報酬費用は一般的に30万円から100万円ほどです。これにより、採用成功時のコストを抑えることが可能です。
通常の中途人材紹介では成果報酬費用が年収の35%とされており、例えば年収700万円のエンジニアを採用した場合、245万円の費用がかかります。そのため、ダイレクトリクルーティングサービスを利用することで、100万円のサービスでも145万円のコストカットが実現します。
おすすめダイレクトリクルーティングサービス5選
Wantedly(ウォンテッドリー)
Wantedly(ウォンテッドリー)は、主に採用に焦点を当てたビジネスSNSです。採用を主な目的としていますが、ビジネス情報の収集や人脈の拡大にも役立つプラットフォームとして利用可能です。
このプラットフォームでは会社のメンバーアカウントを作成でき、普段採用活動に関わっていない社員でも簡単に参加できます。長期的な視点で取り組むことが重要ですが、運用が効果的に行われれば、大量採用ができても成果報酬が発生しないため、コストを大幅に削減できる可能性があります。
BizReach(ビズリーチ)
BizReach(ビズリーチ)は、企業が登録された人材データベースに対してスカウトメールを送れるサービスです。特筆すべきは、高レベルな登録者が多いことです。
かつては年収1,000万円以上のハイクラスな人材に特化していましたが、近年では幅広い年収層を対象に展開しています。登録者を年収750万未満の「タレント会員」と、それ以上の「ハイクラス会員」に分類し、企業側は経験年数などの条件を絞って採用活動を進めることができます。
doda Recruiters(デューダ リクルーターズ)
doda Recruitersは国内最大級の登録者数を誇り、約226万人もの人材データベースを抱えています。このプラットフォームは総合的な転職媒体であり、エンジニア採用だけでなく、Biz職や総合職の採用など、多岐にわたるポジションの採用にも利用されています。
このサービスではスカウト流通量が多いため、量を確保しながらアプローチを行うことが重要です。しかし、幅広い候補者のデータベースを有しているため、アプローチの対象となる範囲が広がります。
Green(グリーン)
Green(グリーン)はIT人材にフォーカスした運用型求人メディアです。特にスカウト機能が充実しており、ダイレクトリクルーティングサービスに近い性格を持っています。
このサービスの特徴は、初期登録後に永年利用できる点と費用が抑えられる点です。通常の求人メディアやダイレクトリクルーティングでは契約期間が設定され、更新ごとに追加のコストがかかることがありますが、Green(グリーン)では1度掲載した企業ページや求人広告がずっと利用可能です。これにより、コスト面でのメリットが大きく、地域ごとに一律の成果報酬費用が設定されており、採用コストを抑えられます。
Linkdin(リンクトイン)
LinkedIn(リンクトイン)はビジネス向けのSNSで、通常は転職を意識していない登録者が大半を占めています。
このプラットフォームの特徴は、通常の転職市場には現れない転職志向のある人々に出会える点と、多くのバイリンガル人材が存在することです。
LinkedIn(リンクトイン)を採用活動に活用するには、専用のリクルーターライセンスを契約する必要があります。このライセンスを取得することで、世界中で6億人以上(日本だけでも約280万人)のLinkedIn(リンクトイン)ユーザーに直接スカウトメールを送ることができます。
ただし、このプラットフォームを有効活用するには時間がかかることがあります。統計によると、平均して7か月かかって採用が成功しているというデータもあります。そのため、LinkedIn(リンクトイン)を使った採用活動には長期的な視野が求められます。
エンジニア採用に活用できる採用媒体をもっと知りたい方は、ぜひ下の記事もご覧ください。
まとめ
エンジニアの採用は競争が激しく、今後ますます難しくなると言われています。採用担当者の皆さまには、新たな手法を取り入れることや採用のノウハウを向上させることが求められています。
弊社では、そのような課題を解決し、採用担当者の負担を軽減するために努力しています。何かお困りのことがあれば、ぜひなんでもご相談ください。