採用選考を進める中で避けて通れないのが、不採用通知、いわゆる「お祈りメール」の作成です。
面接まで進んだ候補者に結果を伝える際は、ただ結果を知らせるだけでなく、感謝の気持ちや今後への配慮を丁寧に盛り込むことが大切です。とくに採用が初めての方にとっては、「どのように書けばよいのか」「どこまで伝えるべきか」に悩む場面もあるかもしれません。
本記事では、採用担当者が安心して使える「お祈りメール」の基本構成やポイント、コピペしてすぐに使える例文（新卒／中途、フェーズ別）を紹介します。候補者への印象を損なわないための注意点もあわせて解説していますので、ぜひご活用ください。
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お祈りメールは必要？送るべき理由と効果
採用活動において、ほかの業務よりも軽視されがちなお祈りメールですが、実は候補者との信頼関係や企業イメージにも大きく影響する重要な要素です。まずは、お祈りメールを送る理由とその効果について見ていきましょう。
8割超の企業が面接後にお祈りメールを送付
そもそも、採用活動において不合格者への「お祈りメール」を送るべきかどうかを迷う方もいると思います。「一人ひとりに連絡するのは負担が大きい」「返信が来て対応に手間がかかる」といった理由から、「合格の際のみ連絡」といった形式でお祈りメールを省略してしまうケースもあります。
しかし、ProFuture株式会社が運営するHR総研のお祈りメールに関する調査によると、書類選考や面接の結果にかかわらず、88％の企業が候補者に何らかの連絡をしていると回答しています。
こうした状況を踏まえると、連絡をしない場合、連絡をしている企業と比較され「対応が不誠実」「印象が悪い」と悪いイメージを持たれてしまうということを念頭に置く必要があるでしょう。
65％の学生が「サイレントお祈り」に不満
次に、お祈りメールを候補者側の視点から見てみましょう。
新卒採用において、株式会社キャリタス（旧社名：株式会社ディスコ）の23年卒の学生を対象にした調査によると、学生の65％が「面接後に結果連絡がないのは許せない」と感じており、「連絡がなくても仕方がない」と受け入れている人はわずか5％にとどまっています。
サイレントお祈りは、ただでさえ就活でナーバスになっている学生にとって候補者に「待たされた」「軽んじられた」といった負の印象を与えてしまいます。選考結果を知らせることは、不採用かどうか以前に、人としての礼儀や企業としての姿勢が問われるポイントだといえるでしょう。
信頼される企業はお祈りメールを送っている
お祈りメールを送ることは、単なる採用プロセスの一環ではなく、企業の姿勢そのものを表します。実際に、不合格であっても「きちんと連絡をくれた」「対応が丁寧だった」と感じた候補者の多くは、企業に対してよい印象を持っています。
一方で、何の連絡もないまま選考が終わってしまうと、「放置された」と感じる人も多く、情報社会の今、不満の声がSNSや口コミサイトで広がることもあります。そうした評判は、選考中のほかの候補者やこの先の応募検討者にまで不安を与えかねません。
また、たとえそのときは不合格であったとしても、将来的に候補者が顧客や再応募者になる可能性を考えると、関係性を丁寧に結んで終えることは非常に重要です。
新卒採用向け｜お祈りメール例文
まずは、新卒採用で使えるお祈りメールの例文を、選考フェーズに合わせてご紹介します。コピペしてそのまま使える文面になっていますので、必要に応じて調整しながらご活用ください。
① 書類選考後
書類選考後の見送り連絡ではテンプレを使用しても構いませんが、丁寧かつ簡潔な表現を意識しましょう。候補者との時間に感謝を伝える一文があると好印象です。
件名：選考結果のご連絡（◯◯株式会社）
本文：
◯◯大学 ◯◯学部 ◯◯様
このたびは、当社の新卒採用にご応募いただき誠にありがとうございました。
慎重に書類選考を進めてまいりましたが、今回はご希望に沿えない結果となりましたことをご連絡申し上げます。
※
弊社にご興味を持っていただき、お忙しい中ご応募に際してお時間を割いてくださったことに、心より感謝申し上げます。◯◯様の今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
◯◯株式会社
人事部 採用担当◯◯
② 一次面接後
面接を経たあとのお祈りメールは、具体的なエピソードを添えて印象を振り返ると、候補者への感謝の気持ちや丁寧さが伝わります。
件名：選考結果のご連絡（◯◯株式会社）
本文：
◯◯大学 ◯◯学部 ◯◯様
このたびは当社の新卒採用選考にご応募いただき、誠にありがとうございました。
先日の面接では、◯◯様がこれまでに取り組まれてきた◯◯や（例：機械工学の研究や、環境問題に関する課外活動）、また◯◯（例：大学でのプロジェクトや、インターンシップでの経験）についてお伺いでき、大変貴重な機会となりました。
慎重に検討させていただきましたが、総合的な評価の結果、今回は次のステップへのご案内が難しいという判断に至りました。
ご期待に沿えず申し訳ございませんが、何卒ご了承いただければと思います。
※
◯◯様がこれから社会人として、ますますご活躍されることを心よりお祈りしております。
このたびは誠にありがとうございました。
◯◯株式会社
人事部 採用担当◯◯
③ 最終面接後
選考最終段階では、見送りの理由をできる限り丁寧に記載しつつ、今後の可能性にも言及すると前向きな印象を与えられます。
◯◯大学 ◯◯学部 ◯◯様
このたびは当社の最終選考にご参加いただき、誠にありがとうございました。
◯◯様の真摯な姿勢や将来に対する明確なビジョンを、面接を通じて強く感じました。特に、◯◯（例：環境に配慮した製品開発への意欲、チームとの協力を重視する姿勢）には、社内でもポジティブな声が上がっておりました。
一方で、今回の選考では社内の体制やチーム構成を踏まえたうえで、ほかの学生様と比較し慎重に検討した結果、誠に残念ながらご希望に添えない結果となりました。
ただ、面接中にお話を伺いながら、◯◯様が今後どのように成長されていくのか、楽しみに感じていたことも事実です。今後何らかの形でご縁をいただける機会がございましたら、その際はどうぞよろしくお願いいたします。
※
今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
このたびはご応募いただき、誠にありがとうございました。
◯◯株式会社
人事部 採用担当◯◯
※部分は、「ご提出いただいた履歴書・職務経歴書は、選考終了後に返送いたします／弊社で責任をもって破棄します」など、提出書類や個人情報の取り扱いを明記しましょう。
中途採用向け｜お祈りメール例文
次に、中途採用で使えるお祈りメールの例文をご紹介します。
① 書類選考後
中途採用でも書類選考段階は定型文で構いませんが、新卒同様、応募にかけてくださった時間や手間に対する感謝を伝える表現があると印象が変わります。
件名：選考結果のご連絡（◯◯株式会社）
本文：
◯◯様
このたびは当社の中途採用にご応募いただき、誠にありがとうございました。
お送りいただいた応募書類を拝見し、慎重に選考を進めてまいりましたが、誠に残念ながら今回はご希望に添えない結果となりました。
※
お忙しい中ご応募に際し貴重なお時間を割いてくださったことに、心より感謝申し上げます。
今後のご活躍をお祈り申し上げます。
◯◯株式会社
人事部 採用担当◯◯
② 一次面接後
キャリアの強みに触れたうえで、選考判断の理由をやわらかく説明すると、誠実な印象を与えられます。
◯◯様
このたびは当社の面接にご参加いただき、誠にありがとうございました。
◯◯様のご経歴（◯◯領域）に関するご経験は、先日お話させていただいた(面接担当者名)一同非常に興味深い内容でございました。特に、これまでのキャリアを通じて培われたご判断力や0→1フェーズにおける馬力・実績には、大変感銘を受けました。
一方で、当社が現在注力している〇〇（例：自社ECプラットフォーム事業における0→1の構築や改善フェーズとの親和性）を慎重に検討した結果、今回のポジションにおいては即戦力としてのマッチ度に差があると判断いたしました。多数のご応募をいただく中で、総合的な観点からの判断となりましたこと、何卒ご理解いただけますと幸いです。
※
◯◯様の今後のキャリアにおいて、さらなるご活躍があることを心よりお祈り申し上げます。
今回はこのような結果になってしまいましたが、〇〇様は弊社のカルチャーへの理解度が非常に深かったので、将来的により最適なポジションなどで募集を出す際は、改めてご連絡させていただければと存じます。
改めまして、このたびはご応募いただき誠にありがとうございました。
◯◯株式会社
人事部 採用担当◯◯
③ 最終面接後
スキルや姿勢に対する評価をしっかり伝えると、丁寧で誠意のある対応として受け取られやすくなります。
◯◯様
このたびは最終面接にご参加いただき、誠にありがとうございました。
面接を通じて、◯◯様のこれまでのご経験や専門性に基づく探究心、また課題に対する取り組み方には、私たちも多くの刺激を受けました。特に、〜〜（例：新素材の開発における効率化や、環境負荷低減に向けたアプローチ）に対するお考えは、当社の方向性とも重なる部分が多くありました。
しかしながら、当社が現在取り組んでおります◯◯（例：材料開発を伴う製品試作の初期フェーズ）においては、社内の即戦力体制を優先する必要があることから、他候補者様との比較の末、今回はご希望に沿えない結果となりました。
◯◯様の研究姿勢や技術的な視点からのアプローチには非常に可能性を感じており、今後さらにご活躍される方だと確信しております。今回のご連絡は大変心苦しいものではございますが、何卒ご理解賜れますと幸いです。
将来的に新たな形でお力添えをお願いできる機会が訪れましたら、その際はぜひご連絡させていただければと存じます。
※
このたびは貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
◯◯様の今後のさらなるご発展を心よりお祈り申し上げます。
◯◯株式会社
人事部 採用担当◯◯
※部分は、「ご提出いただいた履歴書・職務経歴書は、選考終了後に返送いたします／弊社で責任をもって破棄します」など、提出書類や個人情報の取り扱いを明記しましょう。
エージェント経由の場合｜お祈りメール の例文
エージェント経由で選考結果をお伝えする際、業務の中で簡単に「お見送り」と伝えてしまうことが多いかもしれませんが、丁寧なフィードバックを行うことは非常に重要です。
具体的にフィードバックすることで、候補者は自身の強みや改善点を理解し、今後のキャリアに役立てることができます。また、エージェント側も企業が求める人材の評価基準を具体的に理解でき、今後紹介される候補者の質を高めることができます。そのため、選考後に提供するフィードバックは、企業にとっても候補者にとっても価値のあるものとなります。
以下は、エージェントに候補者のお見送りを伝える際のメール例文です。候補者へのフィードバック内容や、今後ご紹介いただきたい人物像を具体的に共有する際の参考としてご活用いただけますので、状況に合わせてご活用ください。
① 書類選考後
件名：◯◯様／書類選考の結果について（フィードバック）
本文：
エージェントご担当者様
大変お世話になっております。
◯◯様の書類選考につきまして、社内で慎重に検討させていただきましたが、今回は見送りの判断となりました。
職務経歴書を拝見し、◯◯（例：ご経歴や志向）には一定の関心を持って拝見しておりましたが、現時点の募集ポジションにおける求めるスキルセットとのマッチ度という観点から、他候補者を優先する判断に至りました。
候補者様には、ご応募に対する御礼とともに、上記の理由を踏まえつつ前向きなお気持ちで次の機会に臨んでいただけるようお伝えいただけますと幸いです。
② 一次面接後
件名：◯◯様／一次面接結果について（フィードバック）
本文：
エージェントご担当者様
お世話になっております。
先日は、◯◯様の一次面接におかれましてご対応いただきありがとうございました。
面接を通じて、これまでの◯◯（例：ご経験領域）に対するご知見や取り組み方についてはポジティブな評価がございました。一方で、今回のポジションでは、既に稼働中のプロジェクトにスムーズに参画いただける方を求めており、特に◯◯（例：Reactでのフロントエンド実装経験、または複数名体制でのチーム開発経験）を有する方を前提に選考を進めております。
◯◯様のご経験も一定の評価をしておりましたが、現フェーズとのマッチという点で慎重に検討を重ねた結果、今回は見送りの判断となりました。
候補者様には、ポジティブな評価点も含めて率直にお伝えいただき、今後のキャリア形成の参考にしていただければと思います。また、当社としても引き続き他ポジションでの可能性を含めてご相談させていただければと考えております。
③ 最終面接後
件名：◯◯様／最終面接結果について（フィードバック）
本文：
エージェントご担当者様
お世話になっております。
◯◯様におかれましては、最終面接までお進みいただき、誠にありがとうございました。
最終選考においても、技術面でのご経験やお人柄については好意的な評価が多数ございました。特に◯◯（例：技術理解、チームでの関わり方）については面接官からも高評価の声が上がっておりました。
しかしながら、現在当社では、既存プロダクトの機能強化とスピード感ある開発体制の強化を急務としており、即戦力として自走可能なエンジニアを優先的に採用している状況です。今回のポジションにおいては、◯◯（例：特定の技術スタックでの実装経験やプロダクトリード経験など）の即戦力性を重視しており、そうした観点から、より要件に近い別の候補者を選考させていただく運びとなりました。
候補者様には、選考を通じて評価していた点（◯◯など）を率直にお伝えいただくとともに、当社としても将来的なご活躍に期待している旨をぜひお伝えいただけますと幸いです。
引き続き、候補者様のご志向に合致する機会がございましたら、ぜひご相談させていただければと考えております。
お祈りメールを作成する際の6つの注意点
ここでは、心のこもったお祈りメールを作成するための6つのポイントを解説します。
① 感謝の気持ちを伝える
お祈りメールを送る際、まず最初に伝えるべきなのは、候補者への感謝の気持ちです。企業に応募するためには、情報収集や書類作成、面接の準備など、多くの時間とエネルギーが必要です。こうした努力に対して敬意を払い、誠意を持って感謝を伝えることで、候補者に対する企業の姿勢が伝わります。
売り手市場が続く現在では、企業は「候補者を選ぶ立場」であると同時に、「求職者から選ばれる立場」です。だからこそ、不採用通知であっても一方的な結果連絡にせず、「応募してくださったこと」そのものにきちんと感謝を述べましょう。
丁寧に感謝の意を伝えることで、たとえ不採用という結果であっても、候補者の中にポジティブな印象が残り、企業への好感度向上にもつながるでしょう。
② できるだけ候補者に合わせてカスタマイズする
テンプレートをそのまま流用すると、機械的で冷たい印象を与えてしまいがちです。そのため、単なるテンプレートの使い回しではなく、できる限り候補者ごとに内容を調整することが大切です。たとえ不採用であっても、「自分の努力をきちんと見てくれていた」と感じられるような一言があると、候補者は前向きに結果を受け止めやすくなります。
実際に株式会社RECCOOが実施した調査でも、印象のよい選考結果通知として最も多く挙がったのが「面接に対するフィードバック」でした。
たとえば「これまでのご経験を丁寧にお話しいただき、業界理解の深さが伝わってきました」「志望動機に企業研究の成果が表れており、熱意を感じました」などの具体的なコメントを添えることで、候補者は今後の就職活動に活かすヒントを得ることができるでしょう。
もちろん、不採用通知である以上トラブルにならないよう表現のさじ加減に配慮が必要ですが、こうした一言は企業の誠実さや人に対する姿勢を伝えるうえでも大切な要素です。
③ 2営業日以内に連絡する
お祈りメールを送るタイミングも、候補者への印象を左右する大きな要素です。面接後はできるだけ早く、理想としては2営業日以内、遅くとも1週間以内には結果を伝えるのがおすすめです。
候補者の多くは複数の企業に並行して応募しており、選考結果の連絡が遅れることで次の行動に移れず、就職・転職活動全体のスケジュールに影響が出ることもあります。もし選考に時間がかかる見込みがある場合は、事前に「〇日以内にご連絡いたします」と伝えておくと、候補者の不安を和らげることができます。
また、郵送で結果を送る場合は、到着を待たせないよう、先にメールで通知しておくとスムーズです。
④ 送信前に宛名や宛先をダブルチェックする
お祈りメールを送る際には、宛名や宛先の確認を徹底することが基本です。候補者の名前を間違えれば、本人に対して失礼になるだけでなく、企業への不信感にもつながります。また、誤ったアドレスに送ってしまうと、選考結果や個人情報の漏洩といった深刻なトラブルを引き起こす可能性もあります。
送信前には必ず、名前の表記（漢字の間違いや敬称の有無など）とメールアドレスをダブルチェック、可能であればトリプルチェックするのがおすすめです。
⑤ 提出書類や個人情報の取り扱いを明記する
お祈りメールには、提出書類や個人情報の取り扱いについて明確に記載しましょう。自分の情報がどう扱われるのかを気にする候補者は多く、「ご提出いただいた履歴書・職務経歴書は、選考終了後に返送いたします」など、具体的な文言を添えることが大切です。
本来は返却するのが理想ですが、難しい場合は、社内で破棄しても問題ありません。その際には、「弊社で責任をもって破棄します」など取り扱いをしっかりと明示することで、候補者の不安を軽減できます。
⑥ 心からのエールを伝える
お祈りメールの最後には、候補者への前向きな気持ちが伝わるひと言を添えましょう。「今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます」といった定型文ではなく、応募内容や取り組みに少しでも触れた言葉にすることで、気持ちが伝わりやすくなります。
たとえば「ポートフォリオにあった〇〇の企画は非常に興味深く、実行力のある方だと感じました。これからもその強みを発揮されることを願っております。」といったように、候補者の工夫や姿勢に具体的に触れる表現がおすすめです。
不採用という結果であっても、最後に温かいひと言があるだけで、受け取る印象は大きく変わります。
まとめ
この記事では、お祈りメールの基本マナーや、面接後に送る際の例文や注意点についてご紹介いたしました。
採用辞退や不採用の連絡は候補者にとって重要な節目となるため、丁寧かつ配慮ある文面が求められます。単なるテンプレートで済ませるのではなく、企業としての誠意が伝わるよう一文ひとことに心を配ることが、今後の企業の印象にもつながります。
ここでご紹介した例文も参考にしながら、自社に合った文面を整えていきましょう。
