近年、就活の開始が早まり、早い段階で学生との接触が重要視されるようになっています。採用担当者の中には、「インターンシップ期間にどのように学生と触れ合うか」が大きな課題となっている方も多いのではないでしょうか。
このような状況に直面すると、悩ましく感じるのがインターンシップのプログラム企画です。学生が興味を持ち、かつ入社に結びつくような魅力的なインターンシップをどのように開催するか、その企画を練るのは容易ではありません。
こういった理由から、先送りにされがちなインターンシッププログラム。本記事では、政府の就活ルールの見直しによりますます重要性が増すインターンシップの内容に焦点を当て、種類や近年の動向、2025年卒からのインターンシップの在り方、学生の要望、インターンシッププログラムの構築方法について詳しく解説します。
インターンシップとは?
インターンシップは、学生が実習や研修プログラムを通じて職場体験を積む制度です。
近年では、長期間の就業体験だけでなく、講義や研修、グループワークなども提供されることが一般的です。
学生にとっては、業務の実際を体験するだけでなく、企業の雰囲気やカルチャーを知る機会として有益です。一方、企業にとっては、学生の動機付けを早期に行うことができ、選考プロセスにおいて学生の適性を把握する手段として役立ちます。
全体として、インターンシップは学生と企業の双方にとって、採用ミスマッチを防止する効果が期待できます。
インターシップの種類
それぞれの形式によって、実施期間は短期から長期までさまざまです。
1. セミナー形式(短期)
2. 課題形式(短期~中期)
3. 就業形式(長期)
短期インターンは母集団形成に適していますが、期間が短いため学生と深い関わりを持つことができませんし、提供できる情報も限られます。一方、中・長期のインターンシップでは、実施人数に制限がありますが、学生との深い関わりを築くことが可能です。
企業は自身の目的や環境を考慮し、最適なインターンシップ形式を選択することが重要です。
セミナー形式(短期)
会社説明や業界研究セミナーとして、短時間のプログラムで実施される形式です。
学生のモチベーションを高め、就活準備段階の学生に対して業界や企業について理解を深める手助けをすることを目的としています。多くの学生を一度に対象にできるため、母集団形成に有効です。
ただし、インターンシップとしての実施には、指針上、2日以上の日程が必要です。従来の1dayインターンシップは、2022年より「インターンシップ」という呼称を使用できなくなったため、「1day仕事体験」と呼ばれることがあります。
課題形式(短期~中期)
新規事業や商品開発などの課題を提示し、グループディスカッションやプレゼンテーションなどを行う形式です。期間は2〜5日の短期から、2週間〜1ヵ月の中期など、企業によって異なります。
課題に取り組むことで、学生が事業理解を深めるだけでなく、選考時に学生の能力を多角的に評価することができる利点があります。
就業形式(長期)
一定の期間や業務範囲で、実際に学生が就業する形式です。3年次はもちろん、1〜2年次など、年次の若い段階から長期にわたって実施されるケースもあります。
業務範囲には制約があるものの、学生が実際に就業体験することで、採用ミスマッチのリスクを低減し、質の高い学生を採用する上で大きな効果が期待できます。長期にわたる学生へのフォローは負担が大きいかもしれませんが、採用プロセス全体の質を向上させるメリットがあります。
夏と冬のインターシップの違い
夏のインターンシップは学生の長期休暇に合わせて、中長期の期間で実施されることが一般的です。一方、秋・冬のインターンシップは短期間での実施が一般的です。
夏のインターンシップ
夏のインターンシップでは、課題形式や就業形式など、中長期を想定したプログラムが多く展開されています。
このような実践的なインターンシップには、既に志望業界や志望企業が明確な学生が多い傾向があります。そのため、参加学生を本選考に結びつけるためには、長期間にわたってモチベーションを維持することが課題です。
特に1ヵ月以上の長期インターンシップは、一部の大学では単位取得の対象となることもあるため、期間設定も慎重に検討する必要があります。
秋・冬のインターンシップ
秋・冬のインターンシップは、学生の休暇が限られているため、セミナー形式の短期プログラムが主流です。
業界や企業の研究を行ったり、場合によっては工場見学を実施する企業もあります。短期間のため、学生は幅広い業界や企業のインターンシップに参加する傾向があります。
このような取り組みは、選考につなげることを目指しており、母集団形成に有効な手段のひとつとして位置づけられています。
インターンシッププログラムの作り方
インターシッププログラムの具体的な作成の仕方について解説していきます。
STEP.1 ターゲットを明確にする
まず最初のステップとしては、どのような学生を採用したいのかターゲットを明確にします。
ターゲットを明確にすることで、学生が喜ぶようなコンテンツを制作しやすくなります。一方で、当たり障りない形でインターンシップのコンテンツを作成してしまうと、応募数は集まるものの、自社が求めているターゲットが採用できるとは限りません。
採用の目的に基づいて、採用ターゲットを考えることが重要です。そうすることで、どのような人材を採用すべきかが明確にすることができます。下記例になります。
将来の会社を担ってくれるようなコアな人材が欲しい
新卒4名採用
学生時代に、リーダーポジションの経験がある人だと好ましい。当社は年齢関係なく、成績が優秀なメンバーはどんどん昇進・昇格させため、チームをまとめてくれるようなリーダー的ポジションが欲しい。
上記のように目的に合わせて、目標を設計していきます。求める人物像では、なるべく具体的にどのような人物が欲しいのか言語化しましょう。
初めてペルソナ設計を行う方は少々難しいため、自社で活躍している社員を参考に設計してみるといいでしょう。抽象的ではなく、なるべく具体的に記載することが重要です。
STEP.2 ターゲットが惹かれそうな自社の魅力を見つける
続いて、ターゲットの学生が自社のどのような部分に惹かれそうか洗い出してみましょう。
例えば先ほど挙げた例で言うと、リーダーの経験がある学生は「裁量権の大きさ」「成長できる環境」などを求める傾向にあります。そのほかにも自社の魅力の中で、どの部分の共感を持ってくれそうか、または惹かれそうかなどを、自社のメンバーなどにヒアリングして聞いてみるといいでしょう。
STEP.3 4つの軸をもとに、インターンのフレームを考える
インターンシップの企画は、「形式」「プログラム」「期間」「時期」などの要素を組み合わせて作成していきます。
重要なのは、「自社で実現可能かどうか」を考慮することです。
他社のインターシップの事例はたくさんあり、中には真似したいような企画もあると思います。もちろん似たような企画を立てるのもいいですが、社員のリソースや予算、スケジュール的に可能かどうか考慮しましょう。
まずは自社ができる範囲内で目標を設定し実施しましょう。
【種類別】インターンシッププログラムの組み方ポイント
インターシップのプログラムごとに組み方のポイントを解説していきます。
1day仕事体験(旧1dayインターンシップ)
1dayインターンシップ、あるいは1day仕事体験は、実施期間の制約からセミナー形式が主流となります。限られた時間の中で、いかに充実した内容にさせるかプログラムの組み方が重要になります。
- 会社説明
- 業界研究セミナー
- 仕事体験(ワークやグループワークなど)
- 職場見学
プログラムの構成は、参加する学生たちが業界や企業についてどれだけ理解しているかに応じて変える必要があります。たとえば、BtoB企業の場合は、業界の構造や自社のポジションなど、業界研究に重点を置くことが重要です。
学生の立場に立って、どのような情報を知りたいのか、プログラムを柔軟に構成しましょう。
短期インターンシップ
2日以上のプログラムがある場合、短期インターンシップと言います。2日間のインターンシップは、経団連のガイドラインで許容される最短期間であり、学生と企業の両者にとって注目すべき取り組みとなるでしょう。
2日間のインターンシップを行う企業では、通常、1日目にセミナー形式の1day仕事体験に参加し、その後に特定の試験を受けた学生のみが2日目のインターンシップに参加できる仕組みを取っていることが多いです。
したがって、2日間のインターンシップは主に課題形式で行われます。また、一部の企業では、3日から5日間のプログラムを設ける場合もあります。
2日間のインターンシップのプログラムは、一般的に次のような形式になります。
1日目の午前:チームビルディングや課題解決のためのグループワーク
1日目の午後:課題の調査や取り組み、中間発表
2日目の午前:プレゼンテーション資料の作成や発表の練習
2日目の午後:プレゼンテーションの実施やフィードバック
また、24卒以降の学生を対象に、一定の条件の下で採用につながるインターンシップが解禁されます。採用につながるインターンシップを実施する場合、政府の定めた条件を満たす必要があります。以下の条件を考慮して、プログラムを構築しましょう。
・通常のインターンシップは5日以上(専門的な場合は2週間以上)の期間で実施
・実施期間の半分以上を職場での体験に割り当てる
・学業との調整を考慮し、学部3〜4年時の長期休暇などに限定する
・インターンシップの募集時に情報を採用に活用する意向を公表する
・インターンシップ終了後、社員が学生にフィードバックを行う
長期インターンシップ
1ヶ月以上の長期間にわたるインターンシップでは、主に就業形式が採用されます。
長期間のインターンシップを継続的に実施するためには、現場の協力が不可欠です。インターンシップは採用に直結する要素がある一方で、現場の理解が不十分なところでは学生が企業に対する不満が溜まってしまいます。
長期インターンシップを実施する際には、以下のような取り組みが重要です。
・社員とのコミュニケーション機会の提供
・インターン生へのフォローアップと相談の機会
・インターンシップの振り返り
・プログラムの改善と学習内容のフィードバック
また、社会人経験がないインターン生の場合、初日のランチや仕事後の食事など、コミュニケーションの場を設けることが重要です。また、定期的な1on1面談や、ランチ会など相談や交流の場を設けることが重要です。
長期インターンシップの参加者には、獲得したスキルや能力のフィードバックを行うことで、満足度を高めることができます。
また、インターンに対して給与を支給するかしないかは企業によって異なりますが、文部科学省からは「有給」が推奨されています。給与を支給することで、学生もプロ意識を持って行うでしょう。
まとめ
本記事では、政府による就活ルールの見直しに伴い、ますます注目を集めるインターンシップの内容に焦点を当て、種類や最近のトレンド、2025年卒からのインターンシップのあり方について解説しました。さらに、学生のニーズやインターンシッププログラムの作成方法についても詳しく触れています。
現実には、企業が提供するインターンシップの内容と学生が求める内容には差異があり、学生が本来の目的を果たせていないケースも見受けられます。
この記事を参考に、学生のニーズを把握し、自社に適したインターンシッププログラムを立案し、採用活動を成功に導きましょう。
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