現在、エンジニア採用をする多くの企業において、スカウトメール(ダイレクトリクルーティング)の返信率の低さが課題になっています。エンジニア採用市場が圧倒的に売り手市場になっていることから、これを読んでいる多くの採用担当者様も同様の課題に直面しているのではないでしょうか。そこで、今回の記事ではエンジニア採用におけるスカウトメールの意味レイヤー別 エンジニアが応募したいと思う訴求内容埋めるだけで完成するテンプレート紹介など、「どうすればターゲットのエンジニアから返信がくるのか」にフォーカスしてポイントや事例をご紹介していきます。なぜエンジニア採用にスカウトが有効なのかまずは、求人プラットフォームを展開する株式会社typeによるITエンジニアの求人数の調査結果をもとにご説明します。2019年12月と2023年9月のITエンジニア求人数を比較すると、求人数は1.3倍に増加しました。2020年は新型コロナウイルス感染症の流行により求人数が急減しましたが、その後回復し、現在では前の水準を上回る求人数が記録されています。応募数も、2019年12月と2023年9月を比較すると、全体で1.4倍に増加しています。特に20代から30代のITエンジニア経験者の応募数は1.8倍に増加し、若手から中堅層の転職市場が活発です。ただし、求人数が増加しているため、ITエンジニアの求人倍率は高い状態が続いています。特に都心部や20代後半から30代前半の層に求人が集中しており、今後も倍率は高まっていくと考えられます。このように、ITエンジニアの経験者を採用したいと考えている企業に対してエンジニアの転職希望者の数が足りていないため、採用競争が激しい状態です。そのため、スカウトメールを積極的に活用し、他社への応募前に自社への応募を促すことが採用成功の鍵です。スカウト採用 一連の流れ■募集の内容を整理するスカウト文章の作成において、まずは募集の内容を整理する必要があります。具体的には、以下の要素に焦点を当てていますスカウトの対象はどのような人材か(必要なスキル、志向、価値観など)なぜその人材が必要なのかその人材は自社のどのような部分に魅力を感じ、入社を望むのかその人材が当社で成果を出した場合、正当な待遇ができるのかこれらの要素を踏まえて、スカウトメールを受け取ったエンジニアが応募したいと思うスカウトの内容を洗い出します。このフローを挟むことで、エンジニアに対するメッセージが的確になり、心に響くメールを作成することができます。以下で4つの具体例をご紹介します。① なぜエンジニアを採用する必要があるのか?採用が必要になった背景を、現場のエンジニアとの協力を通じて明確にしましょう。新規事業の立ち上げに向けて、事業の中核を担うメンバーを採用する必要がある。プロジェクト数の増加に伴い、メンバーを増員する必要があります。② チームや技術の課題点は?チームや技術でどのような課題を解決したいのかを整理します。そして、エンジニアを採用することでどのように解決したいのかを洗い出します。③採用したいエンジニアの詳細設定どのような人材を求めているのか=「ペルソナ設計」をしましょう。ペルソナ設計は、具体的な人物像を設定し、その人物が持つ特性や背景を設定します。これによって、ペルソナ(採用ターゲット)の視点から応募者の動機や価値観を理解することができ、「魅力的なスカウトメール」を効率良く作成するのに役立ちます。IT知識があまりなかったり、ペルソナ設計が難しい場合は、既存の中途採用者や類似のポジションで働いている他社のエンジニアを参考にして、具体的なペルソナを設定することもできます。④候補者が自社に入社するメリットは?(貴社のアピールポイント)ペルソナを設計できたら、ペルソナの人物が「どのような企業に応募しようと思うのか」を考えましょう。たとえば、設計したペルソナの人物が「新卒から大手企業で働いていたものの、大企業なので提案が通るまで時間がかかることが不満。もっと自由度の高い環境でエンジニアとしてのスキルを伸ばしていきたい」といった悩みを抱えていると設定します。これを考えた上で、自社のどのような部分を訴求したら応募してもらえるのか、エンジニアに対してどんなアピールができるのかを設計すると、エンジニアに刺さりやすいメッセージを作成することができます。■文面作成アピールポイントを決めたら、次はそのポイントを軸にして、エンジニアに向けたメッセージを構築していきましょう。この過程で「ペルソナ」と「設定したアピールポイント」がズレてしまわないようにすることが重要です。この軸が揺らいでしまうと、せっかく今までの分析・構築したことが無駄になってしまいます。具体的に、メッセージに記載する内容には次のような要素がありますターゲットのエンジニアが興味を持っているような自社の魅力なぜ彼らにとって貴社が選択肢として適しているのか、メリットを明示する入社することで実現できる未来のビジョンその他の項目について以下の内容があります。事業内容の簡単な紹介送信者の役職募集されている職種と今抱えている課題受信者に期待する次のステップ(面接の日程調整など)これらの要素を通じて、効果的なスカウトメールを構築し、ターゲット人材に魅力的な提案を伝えることができます。■運用体制づくり運用を開始する前に、スカウトメールの運用計画をしっかりと策定しておくことが重要です。①運用スケジュールを設計するスカウトメールの頻度は週にどのくらい送信するかリマインダーやフォローアップ(メッセージの再送信)の間隔をどうするか効果を評価し改善点を見つけるためのデータ収集・分析スケジュールこれらの要素を事前にスケジュールとして設定しておくと、格別に運用がスムーズに進行します。計画を立てずにスカウトメールの業務を始めると、送信タイミングを逃したり、メールの通数を有効期限以内にしょうできなかったりすることがあります。スカウトメールは効果的なツールですが、求人掲載と比較して運用にはかなりのの人手と計画を必要とします。運用前にしっかりと予定をたてて、効果的に活用しましょう。②運用の役割分担スカウトメールの運用全般を一人で担当することは非常に大変で、工数の多さはもちろん「ポジションごと」に「どの候補者にアプローチすべき」か、という適切な判断を行う必要があります。例えば、スカウト対象者の抽出は「人事」が担当し、そしてアプローチのするかどうかの判断を行うのは「エンジニアの現場責任者やマネージャー」といった現場目線のスタッフに任せると、アプローチの精度が向上します。さらに、メッセージの作成についても、運用担当者だけでなく、さまざまなポジションの方々にメッセージの確認を依頼することで、より訴求性の高い文章仕上がります。エンジニアをスカウトで採用するメリット“攻め”の採用活動ができる「候補者に自社の求人を見つけてもらう」のではなく、企業が直接候補者にメッセージを送信できることで、自社の魅力を効率よく伝えることができ、個別のコミュニケーションを行うことで候補者の興味を引きやすくなります。さらに、企業は候補者のプロフィールを通じて、その候補者の志向や考え方を把握できるため、相互理解が進み採用後の適合度向上=離職率の低下につながります。潜在層にアプローチできるスカウト型の採用では、転職への意欲はあるもののまだ積極的な活動をしていない「転職潜在層」と呼ばれる人材へのアプローチが可能です。通常、転職サイトに登録する求職者は、「良い機会があれば転職を考えている」というスタンスで登録しており、求人に応募するなどの自発的な転職活動を行っていないため、求人を掲載しているだけでは出会うことができません。しかし、スカウトを利用するとそういった「転職潜在層」にも直接アプローチすることができ、接点を持つことができます。また、転職潜在層へのスカウトは、他社との競合が低いという利点もあります。採用単価を削減することができる従来の求人広告や説明会に比べて、ターゲットを限定的に選ぶため、採用活動にかかる時間とコストを削減できる可能性があります。しかし、スカウト型採用は個別の対応が必要であるため、効率が悪ければ採用担当者の工数が増え、人的コストがかさんでしまう可能性もあります。エンジニアやITに対する一定の知識をもった担当者が少ないターゲットに対してスカウトを送る場合はコストをかなり削減することができます。エンジニアをスカウトで採用するデメリット運用工数が必要スカウト採用は、個別の求職者とのコミュニケーションのため、候補者の選定(ピックアップ)やメッセージのやり取りに多くの時間と手間がかかります。一方、大量の候補者を対象にした一般的な採用活動と同様に、スカウト型採用でも量を重視することも重要です。しかしコピペの雑な文章ばかりを送って質が低下してしまうのは避けるべきです。スカウトの最大のメリットである「個別の候補者に対して自社の魅力や提供できる価値を効果的に伝える」ために、きちんと準備をした上で丁寧なスカウトを送りましょう。大量採用には向かないスカウト採用は、大量の人材を短期間で採用したい企業には向きません。企業はデータベース内の候補者に依存し、特定のポジションに合致する候補者を見つける限界があるため、エンジニアに求めるスキルや経験の幅が極端に狭い場合、該当する候補者が枯渇する可能性があります。さらに、採用戦略が整備されていない初期段階では、スカウトの返信が少なかったり、カジュアル面談から応募への以降率が低いなど、成果をが出づらいことがよくあります。そのため、PDCAサイクルを回しながら、長期的に取り組むことが重要です。エンジニア向けスカウトメールのポイントと例文ここからは、具体的な例文も交えながらエンジニア向けのスカウトメールにおける文章作成のコツや気をつけるべきポイントをご紹介します。また、送信者は「企業の代表」もしくは事業責任者以上の方が、一般的な運用担当者からのメッセージよりも特別感を持って受け取られ、返信率が高くなります。■会社説明に、設立の背景や展望を記載するウェブ上で公開されている形式的な企業情報のみではなく、以下の点も記載しましょう。●事業内容とビジョンどのような事業を展開しているのか、始めた背景とサービスの展望●成長戦略 会社(組織)全体として今後どのように発展していきたいのか■件名はメリットや送信主で特別感を出すスカウトメールの件名は、開封率を高めるために非常に重要です。エンジニアの中でも多い人だと1日に100件近くのスカウトメールを受け取るため、目を引く件名になるように工夫することが必要です。具体的に、開封率をあげるポイントは以下の通りです。●メリットを強調する 会社の魅力や働くメリットをコンパクトに表現しましょう。例: "上流案件多数!大手案件多数、プライム案件8割*月給40万円以上"●特別感を演出する 選考基準を満たす候補者には、面接確約や前給保証などを記載します。例: "【面談確定AI・IoT最先端技術に触れられる貴重ポジション!”●代表からのメッセージ 冒頭で代表や役員と名乗ることで、特別感を演出できます。例: "代表の〇〇です。ぜひ一度お話しさせていただけませんか?"上記の具体例の他に「メッセージの見え方」にも注意してください。媒体によってはPCとスマホでの表示が異なる場合があるため、通知の時点で何文字表示されるのか、どの部分が最も魅力的なワードかを考えて件名を設定する必要があります。これらのポイントを活用して、エンジニア候補者がスカウトメールを開封しやすくすることができます。■どの経歴に魅力を感じ、自社でどう活かせるかを記載するエンジニアのスカウトメールで効果を出すには、送信する求職者に合わせたカスタマイズが何よりも重要です。一斉配信(コピペ)のようなありきたりな文面では、引く手あまたなエンジニアの興味は引けません。履歴書や経歴、転職に対する想いを確認した上で、以下の情報を文面に組み込みましょう。●求職者が何に魅力を感じたのか具体的にどの経歴やスキルに引かれたのかを明示しましょう。●どのような活躍を期待しているのかどの職種やプロジェクトで、どうそのスキルを活用してほしいのかを記載する。このカスタマイズを行うことで、より貴社で働くイメージがつきやすくなります。■文面にはプロジェクトの案件例を入れるエンジニアにとって重要なのは、「どのようなプロジェクトに参加できるか」です。そのため、スカウトメールには具体的なプロジェクトの内容を掲載しましょう。●仕事の詳細を明確にプロジェクトの内容、規模、フェーズ、開発環境、使用言語、ツールなど、詳細な情報を提供しましょう。●作業場所を記載オフィスまでの距離やリモートワークなどの割合を記載することで、エンジニアが通勤時間や勤務状態を考慮しやすくなります。特に客先常駐型のプロジェクトの場合、通勤時間は重要な要素です。●プロジェクト期間を共有案件が長期的なものなのか、短期的なものなのかを明確に伝えましょう。エンジニアの中にはプロジェクトの期間を重要視する人も少なくありません。■情報に具体性な数値を入れるアピールポイントとして入社祝い金や福利厚生を強調する場合、具体的な数値を記載することがおすすめです。例えば、「資格取得のサポートがあります」と書くよりも、「資格取得のサポートがあり、最高10,000円のサポート金を提供します」と具体的に示す方が求職者にとって魅力的に見えるのです。スカウトメッセージを送る際のコツ送信対象者の絞り込み方法に気をつけるスカウトメールを送信する際の絞り込み条件には、主に2つのポイントがあります。① 「アクティブ会員」を優先しましょうスカウトメールではせっかく一生懸命送付しても開封してもらえなければ意味がありません。したがって、過去の登録時期に固執せず、現在も活発に活動中の求職者を優先的に選びましょう。具体的には、「直近●日以内に活動している会員」「特定の職種や勤務地で検索を行った会員」または「●日以内にログインした会員」など、現在アクティブな行動をとっている可能性のある会員を対象にピックアップしましょう。② 経験やスキルを絞り込みすぎないようにしましょう絞り込み条件を設定する際、年齢・居住地・経験職種・経験年数・保有スキル・言語など、ターゲット条件に基づいて絞り込むことが一般的です。しかし、経験やスキルに過度にこだわることは避けましょう。なぜなら、これには下記のようなリスクがあるからです。●隠れた優秀な候補者との接点を逃す可能性がある。求職者の多くは、初期段階で詳細な情報を提供せず、興味を持った企業に対してのみレジュメ情報を提供する傾向があります。●すでに他の企業の選考プロセスに進行中である可能性がある。多くの求職者は、応募時に詳細な情報を提供します。つまりプロフィールが埋まっているということは、既に他の企業が選考中である可能性があるのです。●他の企業もスカウトメールを送信している可能性がある。細かい要件でもヒットするということは、他社も送っている可能性が高いため、競争倍率が高くなり、採用成功率が低下する可能性があります。したがって、スカウトメールを送信する際は、最低限の絞り込み条件のみを使用し、年齢や居住地、経験職種に焦点を当て、保有スキルや言語などの追加条件を設定しないことがおすすめです。セグメンテーションは、文面でアピールすべきポイントに基づいて行えば、希望条件に合致する求職者を絞り出すのに役立ちます。まずは応募者を集め、面接などで詳細を確認するアプローチが成功の鍵です。メッセージを送るタイミングを考える条件の絞り込みや件名を変更しても、開封率が改善しない場合は、送る時間帯や曜日を変えて送ってみましょう。スカウトメールの閲覧時間については、媒体によって差がありますが…月曜 21:00~22:00金曜 17:00~19:00土曜 12:00~13:00上記は、ある媒体での「PM・webエンジニア・フリーランスエンジニア」の返信率が高い時間です。このように、ポジションなどのによっても反応率のいい時間が変わるので採用ターゲットのライフスタイルをイメージしてA/Bテストを行うことをおすすめします。開封率・応募率などを分析する候補者がスカウト経由で応募する場合、一般的に以下の2つの段階から成り立っています。興味深いスカウトメールを開封してもらい次にメールの内容に惹かれて応募に至るこのため、スカウトメールの効果を判断する上で、2つの主要な指標である「開封率」と「応募率」を把握することが非常に重要です。スカウトメールの運用において、開封率と応募率を分析し、改善を行っていくことは間違いなく成功の鍵になります。こうした分析と改善によって、スカウトメールのパフォーマンスを向上させ、効果的なリクルーティング活動を展開していくことができます。分析結果をもとに改善を繰り返す分析の結果、課題が浮かび上がった場合、それに対処する改善策の実施が肝要です。たとえば、開封率に問題があると判明した場合、異なるタイプの件名を検討し、送信のタイミングや頻度を変えてみたり、文面やフォーマットの改良を試みることができます。分析と改善を繰り返すことによって、スカウトメールのパフォーマンスが向上します。このPDCAサイクルを継続的に回すことは手間がかかりますが、成功パターンを見つけ出すことで、採用プロセスにおける貴重なノウハウが蓄積されていきます。また、反応の良いアプローチやコンテンツを見つけた場合、それを他の採用活動にも活用できるでしょう。送信は一度だけでなく、最大4回まで送るエンジニアに限らず、スカウトメッセージを送る際は1人に対して、1回ではなく「複数回再送するアプローチ」が効果的です。特に、一斉送信の機能がある媒体では件名より送付のタイミングが重要なことがあります。具体的なアプローチは以下の通りです。■1通目最初のメールでは、興味を引く内容を盛り込みつつ、自社の簡単な紹介を行います。この際、現在の事業内容と将来のビジョンを伝え、エンジニアが自社で働くメリットや活躍イメージを簡潔に伝えます。■2通目2通目では、1通目とは異なる訴求ポイントを提供します。特に件名に「どうしてもお会いしたくて…」や「【再送】」などの文言を入れることも効果的です。「自分(候補者)への興味度」が伝わる件名にし、開封率をあげるようにしましょう。■3通目最後のメールは、代表者や高いポジションの人物から直接会いたい旨を伝えます。このメッセージは「どうしても会いたい」「諦めきれなくて連絡した」という特別感を醸し出すことで、応募効果を高めることができます。再送メールを継続的に送ることで、訴求文言のA/Bテストができる他、送信タイミングによってたまたま開封してもらえる場合もあります。そのうちに、会社名すら知らなかった企業でも興味が湧いてくるのです。まとめエンジニアをスカウトで採用する際は、求人を掲載する時よりさらにITヘの知識が必要になりますし、送信対象者のピックアップから実際に数回送信するまで、かなりの工数がかかります。スカウト採用において開封率や返信率が低い場合は色々な要因が考えられます。今回お話ししたポイントを踏まえ、ぜひスカウト採用を成功させてくださいまた、スカウト採用はノウハウも工数も必要とする業務なので、初めての段階ではプロのスカウト代行サービスを利用することもおすすめです。3ヶ月ほど利用し、ある程度ノウハウが溜まった時点で自社に移行し内製化するのも、とても効率的でおすすめです。ご購読いただき、ありがとうございました。スカウト採用なら「即戦力RPO」弊社が運営している「即戦力RPO」は採用支援サービスですが、「新卒〜CTO」や「特殊領域のエンジニア」などのスカウト採用においても幅広い実績と独自のノウハウを保有しています。スカウト採用を始めたいけどリソースがないスカウト採用の戦略を考えて欲しいスカウトの返信率が悪いが、原因がわからないなどのお悩みをお持ちのご担当者様は、是非ご相談ください。